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2.記憶の違和感。

そぉい!

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「例の盗賊……ですか?」

「あぁ、そうだ。ギルド長は、今回の件についてお前の意見を参考にしたいと言ってるんだ。――曲がりなりにも、お前は現時点でギルドで最高ランクだからな」



 ティオルの巻き込まれた一件から、しばらくが経過して。

 そんなある日に、ギルドの受付担当のドンガさんがボクに意見を求めてきた。どうやら先日、少し話に上がっていた盗賊について、貴族側から正式に協力要請があったらしい。

 そして、いつの間にやらギルド最上位になっていた自分に相談がきた、とのこと。



「それはもう、早急に対応した方が良いと思いますけど……?」

「……ふむ」



 だからボクは素直に考えを述べたが、ドンガさんは難しい表情を浮かべた。

 いったいどうしたのだろう。彼には彼なりの考えがあるのだろうけど、どうして悩むような素振りを見せるのか。

 そう思って首を傾げていると、こちらの気持ちが伝わったらしい。

 ドンガさんは少し声を潜めるようにして、こう口にした。



「ここだけの話だがな、どうやらギルド長はこの一件について思うところがあるらしい。なんでも、相手の首領の名前が気になる……だとか、な」

「首領の名前、ですか」

「あぁ、そうだ」



 訊き返すと、彼はこう続ける。



「首領の名前は、オド・ディオハリス……というらしい」

「ディオハリス……?」



 その名前に、今度はボクが眉をひそめることになった。

 しかし判然とはしない。思わず繰り返しはしたが、ハッキリとした確信があるわけではなかった。どこか頭の中に靄がかかっているような、不思議な感覚。

 思い出そうとすると、扉に鍵がかかる、といえば良いだろうか。



「どうした? そんな険しい顔、初めて見たぞ」

「え、あ……そうですか?」



 すると、どうやら余程すごい表情をしていたらしい。

 ドンガさんが唖然としたような、驚いたような顔になっていた。ボクは慌てて笑顔を作り、誤魔化すようにして頭を掻く。

 それで話は終わったのだが、しかし自分の中には違和感が残った。



「いったい、何なんだ……?」



 ドンガさんの後ろ姿を見送りながら。

 ボクはしばし、自身の記憶に対して疑心を抱かざるを得なかった。



 


https://book1.adouzi.eu.org/n9965ih/

新作です。まさかのミステリーです。頑張ります。

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