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1.盗賊首領、オド・ディオハリス。

ここから第5章です(*'▽')

コンプティーク連載のコミカライズもよろしく!!







「首領、やはりあのガキは普通のそれじゃないみたいです」

「ほう……?」




 王都の外れ、その山奥にある古ぼけた屋敷の中。

 おそらくは過去、貴族が使用していたものであろう名残りに住み着いた男たちが、一人の大柄な男性に膝をついて何かを報告していた。そのうちの一人は、どうやら先日の一件でティオルと戦闘を行った盗賊らしい。

 すなわちここは、王都の騎士団も手を焼くとされる盗賊団のアジト。

 そして、酒を煽りながら話を聞くはその首領格だった。



「間抜けな冒険者から聞き出した情報ですが、どうにもドラゴンと人間の子供のようでして。いまはギルドで小間使いをしているようです」

「ドラゴンと、人間の……?」



 先頭の配下がそう進言すると、首領は少し眉を動かして考え込む。

 その様子は、なにやら記憶を辿っているようでもあった。配下の盗賊たちが何事かと、少々怯えた表情を浮かべ始めるが、今度はそれを吹き飛ばすように豪快に大男が笑う。そして再び注がれた酒を一口で飲み干してから、こう言った。



「かっはっはっは! 最高じゃねぇか! あの老い耄れギルド長にとっては、愛娘の忘れ形見といったところか!!」



 その言葉の真意は、他の盗賊たちには分からない。

 しかし、首領格の男だけは愉快そうに大笑いを続けるのだった。





「いいぜ、面白れぇ!! だったらそれを奪い取って、今度は俺様があのジジイに復讐を果たしてやろうじゃねぇか!!」





 その声は朽ちた屋敷の中に響き渡る。

 嵐の予感をさせるそれに、配下たちはただただ慄くしかできなかった。









「ふむ……オド・ディオハリス、か」

「えぇ、そうです。その男が、件の盗賊を束ねる首領です」



 身なりの整ったとある客人を迎え、ギルド長コルティスは難しい表情を浮かべていた。それというのも昨今、この王都を悩ませている盗賊についての話だったから。噂によれば、その盗賊たちは異様なまでに統率が取れており、騎士団でさえ手を焼く始末だという。

 以前トンガがヘリオスに語った通り、今日はそのことについて騎士団からの協力要請と、情報の提供がなされているのだった。



「いかがでしょう。ギルドが手を貸して下さるなら、相応の報酬は支払いますが」

「難しい、でしょうな。我がギルドは世界各地、いずれの中でも有数の戦力を誇る。だがさすがに、騎士団でさえ攻略困難となると手を上げる者はおりますまい」

「それはつまり、拒否と受け取ってもよろしいのでしょうか?」

「なに、少しばかり疑問があるだけですよ」

「……疑問、ですか?」



 コルティスはしばしの沈黙の後、こう答える。



「ギルドとして、依頼は受理いたしましょう。ただ引き受けるかどうかは、冒険者たちに選択の権利がある。それでも構わないのなら、いかがですかな?」

「ふむ……」



 すると次は貴族の男が考え込んで、ゆっくりと口を開いた。



「良いでしょう。……では、具体的な報酬額について――」

「いや、もう一つ良いですかな?」

「何でしょうか」



 だがそれを遮るように、コルティスが言う。

 そして、こう訊ねるのだった。



「念のため一つだけ、確認させていただきたい。その盗賊の首領、オド・ディオハリスについてですが――」



 静かに貴族を見据えて。



「貴方たちは、それ以上に何かを知っているのではありませぬか?」――と。




 その言葉に、相手の眉が微かに動いた。

 だが、それほどの沈黙も作らずに貴族はこう答える。




「いえ、とんでもない。我々と、あの低俗な男は無関係ですよ」

「……そうです、か」




 その反応に、何かを感じながらもコルティスは頷いた。

 そして、静かにこう続ける。




「分かりました。では、改めて話を進めましょう」





 


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