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11.一つの事件が終わって。

今月号のコンプティークにて、コミカライズ連載開始です。








「ヘリオス……?」

「遅くなってごめん、ティオル。いま助けるからね」




 逃げ惑う男たちの走ってきた方へ向かい、発見した地下通路。

 そこに降りると、魔法陣の中心で力なく倒れている少年を認めた。どうやら意識が混濁しているらしく、全身から力が抜けてしまっている。この状態では、遠くへ避難するのは不可能だろう。そう考えて自分は、ゆっくりと息を吐き出しながら集中力を高めた。

 強力な攻撃魔法に耐え得るだけの防御魔法。

 間に合うかどうかは、少しばかり賭けに近かったが――。



「……えへへ、ごめんね。ヘリオスには、迷惑ばかりだ」

「謝るのは助かってからにしてね、ティオル……!」



 曖昧な口調で語る少年を見てしまっては、成功させねば無意味に思えた。

 だからボクは、全身の魔力を注ぎ込んで防御壁を作動する。

 そして、ボクらの周囲には眩い光が沸き起こって――。







 ――そんな出来事から、数日が経過した。

 今日も今日とてギルドは平穏無事に、何事もなくいつものように活気であふれている。ボクはそんな人の往来を見つめながら、大きく息をついた。

 すると隣に陣取っている精霊の少女が、小首を傾げながら言う。



「今日も、変わらず平和だねぇ」――と。



 そんな彼女の言葉に、ボクは先日のティオルたちの騒動を思い出して苦笑した。あの一件は結局、大きな事件に繋がりはしなかったものの、ギルドから厳重注意を受けることになったのだ。その対象はティオルと、そしてもう一人――。




「こら、ティオル! こっちの計算間違えてるわよ!?」

「わ、わぁ!? ごめんマナリー!!」




 ――魔法使いの少女、マナリー。

 彼女の不用意な行動が事の発端だとして、ギルドへの奉仕活動が義務付けられていた。その裁定も微妙なものだが、当の本人たちが受け入れているので良いのだろう。

 そう思いながらボクは、少女に詰問される少年を見て微笑んだ。



「まったく、本当にアンタにはわたしがいないと……!」

「え、えへへ……?」



 雨降って地固まる、とはいうけれど。

 あの二人の仲は不思議なことに、良好なものになっていると思われた。そう考えることにして、ボクはちらりと窓の方へと視線を投げて――。




「どうしたの? ……ヘリオス」

「ううん。気のせいだと、良いんだけどね」

「え……?」




 何やら邪な気配。

 それを感じ取って、眉をひそめた。




 一つの事件が終わりを迎え、次の事件へ。

 ボクには、そんな気がしてならなかった……。



 


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