8.勝機があるとすれば。
そおい( ゜Д゜)ノ
「ここは、地下水道……?」
マナリーはティオルに手を引かれ、そこへと足を踏み入れる。
どうやら彼らが身を隠した先にあったのは、地下から水を汲み上げるために作られた通路のようだった。薄暗く、そして長く続いているその場所に不快感を隠せずに少女は思わず訴える。
「なんでこんな場所に隠れたの!?」
おそらくはまだパニック状態のマナリー。
しかしティオルは気にした様子もなく、彼女の口元に人差し指を宛がった。静かに話を聞いてほしい、という意図なのだろう。綺麗な少年の顔に少女は不意打ちを喰らって、押し黙った。そのことを確認してから、ティオルは男たちの気配が近付いていることを察しつつ話し始める。
「ぼくたちが勝つには、ここで戦うしかない」
「ここで、戦う……?」
だがマナリーは彼の言葉に、ついつい眉をひそめた。
そして、考えもなく否定を口にする。
「そんな、戦っても勝てるわけないわよ! 相手は大人なのよ!?」
しかしながら、マナリーの意見にも一理あった。
このような場所で戦ったからといって、大人と子供の身体能力の差を埋められるはずがない。それどころか、完全に追い込まれている、と考えた方が自然だった。
そんな少女の真っ当とも思える指摘に、それでもティオルは首を左右に振る。
「ううん、勝てるよ。ぼくたちなら……!」
「…………え?」
そして、仄暗い空間でも分かるほど明るい笑顔を浮かべるのだ。
少年の爽やかな態度にマナリーは呆けてしまう。だがすぐに我に返って、ティオルに詰め寄って言うのだった。
「どういうこと! 説明しなさいよ!!」
具体的な作戦を聞かなければ、話は前に進まない。
どうやらマナリーも、怒ってはいるものの覚悟を決めたようだ。そもそもとして、ここまで追い込まれた以上は『一か八か』というやつに賭けるしかない。
そんな彼女の態度に、ティオルは少しだけ笑みを浮かべた。
しかし、スッと真剣な表情になって続けるのだ。
「この勝負の結果は、たぶんキミにかかってるよ」――と。
◆
「あのガキ共、こっちに逃げたはずだよな?」
「……あぁ。行き止まりだったし、残る可能性はここしかない」
少年少女を追っていた男二人は、そんな確認を取り合いながら地下水道へと降りていく。行き止まりのように見えた場所で、唯一逃げ込めるとすればここだけ。
だとすれば、あとは見つけ出して締め上げればいい話だった。
そう考えながら、先んじて片方の男性が通路に足を踏み入れる。すると――。
「うわっ!?」
「どうした!!」
何かに足を取られたのか、短い悲鳴を上げた。
もう一人の男は何事かと思い、急いで相方の後を追いかける。
「気を付けろ。あのガキたちが、何か企んでやがる」
「あぁ……?」
そして二人揃うと、そう意見を交わすのだ。
後からきた男は周囲を見回して、眉をひそめる。その上で、こう言った。
「この魔力の流れは、なんだ……?」――と。
それというのも、不自然なまでの魔力の高まりについて。
例えるなら――そう、ダンジョンの中にいるかのような違和感だった。たしかに、この地下水道はダンジョンと程近い場所から水を引いているという。
しかし、仮にそうだとしても異常なまでの空気感だった。
そして、そう考えていると――。
「おにいさんたち、勝負だよ」
「あ……?」
「てめぇ、さっきの……!」
暗がりの中から、ティオルが姿を現した。
得物はない。手ぶらのまま、少年はスッと目を細めるのだった。
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