5.根本の問題。
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「あ? 冒険者カードの落とし物、だぁ?」
「名前は分かっているんですけど、ドンガさんに預けておいた方がいいかな、って思ったので。彼女が取りにきたら、渡して上げてくれますか?」
「誰かと思えば、マナリーのかよ。それはいいが……」
「……え、どうかしたんですか?」
ギルドの受付で雑務に追われるドンガさんに申し出ると、彼は頭をポリポリと掻きながら言いよどむ。どうしたのかと思い訊ねると、こんな返答があった。
「いや、ティオルの件で人一倍に異を唱えてたのがアイツだからな」――と。
ティオルの件というのは、彼がギルドの手伝いをすること、だろう。
たしかに一定数の反対意見があったのは知っていた。それでも少年が無害だと知れていくうち、そういった声は小さくなっていったように思う。
ただ、ドンガさんの表情と先ほどの少女の視線から察するに……。
「マナリーは、どういう子なんですか?」
相当な事情がありそうだった。
ボクが少し遠慮がちに訊ねると、ドンガさんは一つ息をついて言う。
「……そう、だな。ティオルの監督役のお前には、伝えておくか」
◆
そして、掻い摘んで彼女の身に起きた話をしてくれた。
あまりに悲惨な内容に、ボクは眉をひそめる。あれ程までに幼い少女が、目の前で両親を失う場面に遭遇したのだ。その原因となった魔物という存在に、怒りを覚えるのも当然だろう。しかしティオルは魔物の子であるが、彼女の村を襲った魔物とは関係ない。
いいや、そのような話はきっと詭弁にしかならないと思った。
「まったく別物だ、って切り離せるほど人間は簡単じゃないからな」
「それは、そうですね……」
ボクはマナリーの心中を察して、ドンガさんの言葉に声を詰まらせる。
どうにか答えを絞り出しつつ考えてみるが、しかし根本の問題が問題なだけに、これといった解決策が思いつかない。それは相手も同じらしく、難しい表情を浮かべたドンガさんは大きなため息をついて言うのだ。
「……まぁ、ひとまずコレは預かっておく――って、あ?」
「あれ、どうしたんですか?」
「マナリーの冒険者カード、どこいきやがった……?」
「え……?」
だが、その時だ。
ボクたちが彼女のカード紛失に気付いたのは。
慌てて周囲を見回して、近くにいた女性職員に訊ねると――。
「それならさっき、ティオルが『届けてきます!』って持っていきましたよ?」
――想定し得る中で、最悪の事態が発生していた。
ボクとドンガさんは互いに顔を見合わせ、思わず同じように口角を引きつらせる。
思わぬ角度から発生したドタバタ劇。
ボクたちは、大急ぎで少年の捜索に飛び出すのだった……。
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