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2.コルティスの発案。

_(:3 」∠)_ ← 頑張っても仕事が減らない男の図。






「ティオルに、ギルドの手伝いを……?」

「そうじゃ。周囲の者から理解を得るには、これが手っ取り早かろう」

「んー……たしかに、そうかもしれないですけど……」



 ギルド長の提案を聞いたボクは、少し考える。

 仔細までは知らないが、どうやら昨夜何かしらの会話があったらしい。ティオルは他の冒険者との交流を求め、ギルド長は先ほどのような結論に至った。

 たしかに互いに対する理解のなさは、要らぬ偏見を生みやすい。

 その点から考えれば、少年がギルドの手伝いとして冒険者と対話するのは良案であるようにも思われた。それでも、やはり不安はあるわけで……。



「ちなみに、指導役は誰なんですか?」

「あぁ、ドンガじゃよ」

「…………」



 ――あぁ、またドンガさんの負担が増えたのか。

 問いかけに対してシレっと答えたギルド長に苦笑しながら、ボクはギルドの雑務のほぼすべてを管轄している男性の苦悩を思った。元々は冒険者だったらしい彼だが、ギルド長に拾ってもらった恩があって頭が上がらないとか。

 そんな噂話を思い出しつつ、とりあえずティオルの姿を視線で探す。

 するとすぐに、少年は見つかった。



「おう、ティオル! 次はこの資料を二階の――」

「保管室、だよね? 分かった!!」



 ドンガさんに山のような紙の束を渡され、笑顔を浮かべる少年。

 パタパタと走っていく後姿には、いつも以上に活気が満ちているように思われた。



「意外に、問題ない感じですか……?」

「ん? おう、ヘリオスか」



 ドンガさんに声をかけると、彼はどこか満足げな表情で応答する。



「ティオルはずいぶんと賢いぜ? それこそ、普通の新人が一ヶ月かけて覚える内容を数時間で把握しやがる」

「へぇ……それは凄い!」

「こちらとしては、このまま就職してもらいたいくらいだ」



 上機嫌なドンガさんは、いつになく気持ちの良い笑みを浮かべていた。

 どうやらボクの抱いているものは、いわゆる杞憂というもの、なのだろう。ティオルの底抜けな人懐っこさも相まって、他の職員や冒険者の評判も上々だった。

 だから、大丈夫だと思っていたが――。




「気に入らない。どうして、あんな魔物の子供が――」




 なにか、幼い女の子の声が聞こえた気がした。

 ボクが声のした方を見ると、そこにはティオルと年齢差もほとんど感じない、栗色の髪をした少女の姿。身の丈に合わないローブを見にまとった彼女は、少年の駆けて行った先を睨みつけるようにしながら、こう口にするのだった。




「わたしは、絶対に認めないもん……!」――と。




 そして、ティオルとは反対の方向へ歩き出す。

 何故かは分からないが、この時の光景がやけに胸に残ったのだった。




 


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