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7.老ギルド長の隠し事。

募:気力、体力、時間。

出:作品の更新。









「ギルド長、結局のところ何が目的なんですか?」

「ほっほっほ。それを訊くのは野暮、というやつじゃよ」

「いやいや、この際もう野暮でも良いですから。オレは貴方が半竜坊主の身元保証人になる理由ってのに、皆目見当がつかないんですよ」

「プライバシー保護の観点からも、教えられないのぉ」

「貴方はまた、そうやってはぐらかす……」




 ある日、窓の外を眺めるギルド長にドンガが訊ねる。

 しかしながら長はいつものように、のらりくらりと彼の問いかけを躱し続けるのだった。この老人の飄々とした態度はいまに始まったことではないが、ドンガにとってはいつも頭痛の種でしかない。今回のエンシェントドラゴン討伐の件も、ほとんど詳細を知らされていないのだ。

 受付の他にも冒険者の安否確認、管理を行っている彼は大きなため息をついた。



「……あぁ、しかし良かった」

「あ……?」



 すると、そんな頃合いに。

 ギルド長は外を眺めたまま、なにかを呟いた。

 偶然にそれを聞いたドンガは首を傾げ、改めて訊ねる。



「なにが、良かったんですか……?」



 彼の言葉に、ギルド長はやはり答えなかった。

 無言のまま少しの時間が流れて、仕方なしにドンガはもう一つため息をつく。そんな拍子のこと、ぽつりと長はこう声を漏らした。




「あの子の生きた証が、ティオルなのじゃよ」――と。




 意図は分からない。

 しかし彼のその言葉には、いつになく哀愁が漂っていたように思われた。それを察して、ドンガもそれより先を訊ねることはしない。

 いくつかの書類をまとめて、静かに部屋を出るのだった。









 そして、部下が去った後。

 ギルド長――コルティスは、部屋の片隅にある棚から一つのペンダントを取り出した。綺麗な銀細工の施されているそれは、彼の愛娘が残した宝物だ。

 コルティスの娘は、彼のもとを去る際にこう言い残していた。




『これを私だと思ってね、お父さん』――と。




 しかし、そのように伝えられても。

 コルティスにとっての娘は、何物にも代えられない。果たして彼に残されたのは、このペンダントと虚無感、その二つだけだった。

 怒号の鳴る中、ギルドの長であった自分は彼女を引き留めることはできない。今となっては、そのような立場をかなぐり捨てて手を伸ばすべきだった、とも思う。


 それでも、失われた時間は戻ってこない。

 あの時の決断の正否は、いまだに分からないままだった。




「だが、きっとこれからの役目は分かる。そうだろう……ミラ?」




 コルティスは、一つ息をついてから愛娘の名を口にする。

 そして、こう続けるのだった。





「お前さんの守った宝物は、儂が守ろう」――と。





 


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