7.老ギルド長の隠し事。
募:気力、体力、時間。
出:作品の更新。
「ギルド長、結局のところ何が目的なんですか?」
「ほっほっほ。それを訊くのは野暮、というやつじゃよ」
「いやいや、この際もう野暮でも良いですから。オレは貴方が半竜坊主の身元保証人になる理由ってのに、皆目見当がつかないんですよ」
「プライバシー保護の観点からも、教えられないのぉ」
「貴方はまた、そうやってはぐらかす……」
ある日、窓の外を眺めるギルド長にドンガが訊ねる。
しかしながら長はいつものように、のらりくらりと彼の問いかけを躱し続けるのだった。この老人の飄々とした態度はいまに始まったことではないが、ドンガにとってはいつも頭痛の種でしかない。今回のエンシェントドラゴン討伐の件も、ほとんど詳細を知らされていないのだ。
受付の他にも冒険者の安否確認、管理を行っている彼は大きなため息をついた。
「……あぁ、しかし良かった」
「あ……?」
すると、そんな頃合いに。
ギルド長は外を眺めたまま、なにかを呟いた。
偶然にそれを聞いたドンガは首を傾げ、改めて訊ねる。
「なにが、良かったんですか……?」
彼の言葉に、ギルド長はやはり答えなかった。
無言のまま少しの時間が流れて、仕方なしにドンガはもう一つため息をつく。そんな拍子のこと、ぽつりと長はこう声を漏らした。
「あの子の生きた証が、ティオルなのじゃよ」――と。
意図は分からない。
しかし彼のその言葉には、いつになく哀愁が漂っていたように思われた。それを察して、ドンガもそれより先を訊ねることはしない。
いくつかの書類をまとめて、静かに部屋を出るのだった。
◆
そして、部下が去った後。
ギルド長――コルティスは、部屋の片隅にある棚から一つのペンダントを取り出した。綺麗な銀細工の施されているそれは、彼の愛娘が残した宝物だ。
コルティスの娘は、彼のもとを去る際にこう言い残していた。
『これを私だと思ってね、お父さん』――と。
しかし、そのように伝えられても。
コルティスにとっての娘は、何物にも代えられない。果たして彼に残されたのは、このペンダントと虚無感、その二つだけだった。
怒号の鳴る中、ギルドの長であった自分は彼女を引き留めることはできない。今となっては、そのような立場をかなぐり捨てて手を伸ばすべきだった、とも思う。
それでも、失われた時間は戻ってこない。
あの時の決断の正否は、いまだに分からないままだった。
「だが、きっとこれからの役目は分かる。そうだろう……ミラ?」
コルティスは、一つ息をついてから愛娘の名を口にする。
そして、こう続けるのだった。
「お前さんの守った宝物は、儂が守ろう」――と。
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