6.これはきっと、誰かの――夢。
_(:3 」∠)_(タスクに潰されて倒れている作家の図)
――あの日から、幾らか時が経過して。
ボクは改めてギルド長室に通されていた。大きなテーブルに置かれているのは、特殊な色合いをしたドラゴンの鱗。大小様々なそれを観察しながら、ギルド長は小さく笑った。
「……まさか、本当にエンシェントドラゴンに出会うとはな」
「あ、あはは……」
どこかしら含みのあるような声に、ボクは思わず苦笑いする。
しかしその鱗は本物。正真正銘、エンシェントドラゴンから預かったものだった。だけど本来は討伐を指示されていたのだから、満点の答えではないだろう。
だから、ボクはどこか誤魔化すように笑って乗り切るしかないのだった。
そうしていると、ギルド長は鱗の一つをテーブルに置きつつ言う。
「倒すように言ったはずだが、あるいはそれ以上の成果かもしれんな」
「え……?」
その言葉は、どこか嬉しそうで。
ボクは思わず首を傾げ、相手の顔をうかがうのだ。
しかしギルド長はそれ以上、表情を変えることなく何度か頷いて続ける。
「ヘリオス。お前さんの連れてきた少年――ティオルの引き取り先だが、どこかしら当てはあるのか?」
「ティオルの引き取り先、ですか……?」
「あぁ、そうだ」
ボクが訊き返すと、ギルド長はこう言った。
「眉唾な話ではあるが、人間とドラゴンのハーフとなれば奇異の目は避けられまい。それならば、ひとまずこちらでティオルの保護をしようと思うのだが?」――と。
その申し出は少し意外なもの。
いったいどのような意図があるのだろうか、と思っていると……。
「……なに、取って食おうなどとは考えておらん。これはただ――」
ギルド長は、ゆっくりと伏せていた目を開いて口にするのだった。
「少しばかりの罪滅ぼし、それだけだ」――と。
◆
エンシェントドラゴン――オルリアは、ボクに言った。
『ティオルたちに、外の世界を見せてあげてほしい』
彼の真意までは分からない。
それでも、ボクは彼がこちらを認めてくれたのだと思った。ミクリアも隣で穏やかに微笑み、静かに身を預けていたが、あえて何も口にしないまま。
リュカさんと顔を見合せて少し考えたが、申し出を断る理由はなかった。
そして――。
「おはよ、ヘリオスっ!」
元気な声が、ギルドの中に響き渡った。
それの聞こえた方向に視線をやると、そこにあったのは無邪気な笑みを浮かべる少年――ティオルの姿。彼はボクを認めると、一直線に駆け寄って抱きついてきた。
その勢いに驚きつつも受け止めると、文句を口にしたのは隣のミクリアだ。
「あー! ティオル、そこはアタシの指定席だよ!?」
「していせき、ってなに……?」
「……ティオルにそれを言っても、きっと伝わらないと思うが」
「リュカは黙ってて!」
「朝から元気だなぁ、みんな」
彼女の言葉の意味が分からずに、首を傾げる少年。
そこにリュカさんも合流し、だんだんと会話が賑やかになっていった。ボクは楽しげに言葉を交わす彼らを見て、自然と笑みを浮かべてしまうのだ。
種族など関係なく、ただ『仲間』という絆で繋がる光景に。
そして思う。
これはきっと、誰かが夢に思い描いた景色の一つに違いない、と。
「ねぇ、ヘリオス……?」
「どうしたの、ミクリア」
「えっと……」
そう考えていると、ティオルをリュカさんに任せて。
ミクリアがボクにそう声をかけてきた。
彼女は小さく息を吸うと、花束のような笑顔を浮かべて言うのだ。
「今日はどんなクエストを受けるのかな!」――と。
いつものように、これからも続く日々を願うように。
夢を大切に守るようにして……。
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