5.託された夢。
ひぃ……ひぃ……(更新で息切れする作家の図
「おにいさん、大丈夫……?」
「あ、はは……さすがに、これは痛いね」
こちらの勝利宣言を受け入れたのだろう。
ティオルは不安げな表情で、ボクのことを見上げていた。その大きな瞳を涙に潤ませて、申し訳なさそうな声色でそう言うのだ。あまりにも無垢なその表情に、思わず笑ってしまう。
だが、そんなこちらに声を荒らげたのは――。
「笑ってる場合じゃないよ!?」
「あ、ミクリア……」
「ほら早く、治癒魔法!!」
――精霊の少女、ミクリアだった。
彼女はボクのもとに駆け寄ると、大声で怒るのか泣いているのか、分からない声色でそう騒ぐ。そしてこちらを寝かせて、一つ大きく息をつくのだった。
「もう! アタシがもう少し遅かったら今ごろ……」
「そっか。ミクリアが、魔素をコントロールしてくれたんだね」
彼女の言葉に、ボクはそう答える。
というのも、ティオルが最後に突っ込んでくる直前のこと。本当にギリギリのタイミングで、周囲の魔素の量に変化が起きた。結果的に少年の攻撃は弱まり、ボクの身体は消し飛ばずに済んだのだ。あまりに瞬間的なことで考える暇もなかったけど、いまになって思えば、そのような芸当ができるのは彼女に他ならないだろう。
「そうだよ! そうだけど! もう、もう……!!」
「あははは、痛いって。ミクリア」
「心配したんだからね!?」
ボクは自身に治癒魔法をかけながら、感情表現のままならない少女に笑ってしまった。どうやら心の底から、こちらを心配してくれたらしい。
そのことはありがたいけど、いま叩かれると怪我に響く。
しかし、ひとまずは回復もできたようだ。ボクは身を起こしてリュカさんのもとへと向かいつつ、ミクリアに訊ねる。
「それで、話し合いは済んだの?」
すると、彼女はハッとした表情になってから。
「たぶん、いまなら受け入れてくれると思う」
静かにそう答えるのだった。
◆
「あぁ、キミが……ヘリオスか」
――ミクリアの案内を受けて、たどり着いたダンジョンの最奥。
そこには大きな空洞が広がっており、山のような大きさのドラゴンが鎮座していた。オルリアというその竜は静かにボクの名を呼ぶと、ちらりとティオルを見る。
そして、少し厳しい声色でこう告げた。
「自分がなにをしたか、分かっているのか。……ティオル?」
「……うん。ごめんなさい」
対して少年は、しおらしい態度でそう答えるのだ。
どうやら深く反省をしているらしい。その気持ちはボクにもよく分かった。エンシェントドラゴンも同じくのようで、小さく息をついてからこう語る。
「私の孫が迷惑をかけたな。この子は知っての通り、事情が特殊なのだ」
「はい。分かっています」
「助かる」
こちらが頷くと短く、オルリアは謝意を述べた。
そして、しばしこちらを観察してから、
「なるほど。素晴らしい才能、いや――努力だ」
「……え?」
感心したように、そう口にする。
ボクが驚いていると、彼は次にミクリアを見て静かに訊ねた。
「ミクリア様は、彼に『夢』を託すおつもりなのですね?」――と。
その言葉に、少女は決意を固めたように答えるのだ。
「うん。アタシはヘリオスに、託すよ」
「……なるほど、分かりました」
するとオルリアは納得したように言って。
ボクに視線を戻し、真剣な声色でこう告げるのだった。
「ヘリオス。……キミに、頼みがある」
ティオルと、その肩に乗った小さな竜を見て。
「彼らに、外の世界を見せてやってほしいのだ」――と。
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