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5.託された夢。

ひぃ……ひぃ……(更新で息切れする作家の図








「おにいさん、大丈夫……?」

「あ、はは……さすがに、これは痛いね」




 こちらの勝利宣言を受け入れたのだろう。

 ティオルは不安げな表情で、ボクのことを見上げていた。その大きな瞳を涙に潤ませて、申し訳なさそうな声色でそう言うのだ。あまりにも無垢なその表情に、思わず笑ってしまう。

 だが、そんなこちらに声を荒らげたのは――。




「笑ってる場合じゃないよ!?」

「あ、ミクリア……」

「ほら早く、治癒魔法!!」




 ――精霊の少女、ミクリアだった。

 彼女はボクのもとに駆け寄ると、大声で怒るのか泣いているのか、分からない声色でそう騒ぐ。そしてこちらを寝かせて、一つ大きく息をつくのだった。



「もう! アタシがもう少し遅かったら今ごろ……」

「そっか。ミクリアが、魔素をコントロールしてくれたんだね」



 彼女の言葉に、ボクはそう答える。

 というのも、ティオルが最後に突っ込んでくる直前のこと。本当にギリギリのタイミングで、周囲の魔素の量に変化が起きた。結果的に少年の攻撃は弱まり、ボクの身体は消し飛ばずに済んだのだ。あまりに瞬間的なことで考える暇もなかったけど、いまになって思えば、そのような芸当ができるのは彼女に他ならないだろう。



「そうだよ! そうだけど! もう、もう……!!」

「あははは、痛いって。ミクリア」

「心配したんだからね!?」



 ボクは自身に治癒魔法をかけながら、感情表現のままならない少女に笑ってしまった。どうやら心の底から、こちらを心配してくれたらしい。

 そのことはありがたいけど、いま叩かれると怪我に響く。

 しかし、ひとまずは回復もできたようだ。ボクは身を起こしてリュカさんのもとへと向かいつつ、ミクリアに訊ねる。



「それで、話し合いは済んだの?」



 すると、彼女はハッとした表情になってから。



「たぶん、いまなら受け入れてくれると思う」





 静かにそう答えるのだった。









「あぁ、キミが……ヘリオスか」





 ――ミクリアの案内を受けて、たどり着いたダンジョンの最奥。

 そこには大きな空洞が広がっており、山のような大きさのドラゴンが鎮座していた。オルリアというその竜は静かにボクの名を呼ぶと、ちらりとティオルを見る。

 そして、少し厳しい声色でこう告げた。



「自分がなにをしたか、分かっているのか。……ティオル?」

「……うん。ごめんなさい」



 対して少年は、しおらしい態度でそう答えるのだ。

 どうやら深く反省をしているらしい。その気持ちはボクにもよく分かった。エンシェントドラゴンも同じくのようで、小さく息をついてからこう語る。



「私の孫が迷惑をかけたな。この子は知っての通り、事情が特殊なのだ」

「はい。分かっています」

「助かる」



 こちらが頷くと短く、オルリアは謝意を述べた。

 そして、しばしこちらを観察してから、




「なるほど。素晴らしい才能、いや――努力だ」

「……え?」




 感心したように、そう口にする。

 ボクが驚いていると、彼は次にミクリアを見て静かに訊ねた。




「ミクリア様は、彼に『夢』を託すおつもりなのですね?」――と。




 その言葉に、少女は決意を固めたように答えるのだ。




「うん。アタシはヘリオスに、託すよ」

「……なるほど、分かりました」




 するとオルリアは納得したように言って。

 ボクに視線を戻し、真剣な声色でこう告げるのだった。





「ヘリオス。……キミに、頼みがある」





 ティオルと、その肩に乗った小さな竜を見て。







「彼らに、外の世界を見せてやってほしいのだ」――と。






 


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