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7.エンシェントドラゴン――オルリア。

亀更新申し訳ないです_(:3 」∠)_










 ――いまから遥か昔のこと。



 まだ生まれたばかりのミクリアは、先代である母の庇護下において暮らしていた。精霊の世界にあるのは、とにかく清らかな魔力。しかしそれ以外には何もなく、おてんばな少女にとっては退屈な日々が続いていた。

 なにか面白いことはないか、と。

 そう考えて、少女が足を運んだのは古い文献を扱う書斎だった。



「へぇ……!」



 そこで、彼女は知ったのだ。

 自分たち精霊はその昔、人々と共に暮らしていたことを。互いに協力し合い、種族の垣根を越えて、尊重し合いながら生きていた。時に衝突することもあったが、その文献に描かれた内容は、ミクリアの胸を震わせる。そして、いつか彼らに会いたいと願った。





 だが、母はそれを許さず。

 ミクリアはついに、彼女と和解することはなかった。









「最後に会ったのが、何百年もまえだったよね。……オルリア」

「……えぇ。その頃はたしか、人と魔物の対立が激しくなっていた頃合いでしょうか。私もまだ若く、考えも浅はかで向こう見ずでした」

「そうだったかも、しれないね」




 疲れ果てたと語るドラゴンのことを撫でながら。

 ミクリアは、静かにそう口にした。




「人間と我らは違う種族。それでも、話し合うことさえできれば、何かが変わるかもしれない。あるいは、そうに違いないと考えたかったのでしょう」




 ミクリアに対して、オルリアはどこか悲しげに語る。

 かつて、このドラゴンと少女は同じ方向――理想を見ていたのだ。種族の壁は乗り越えられる、と。きっと、分かり合えるはずに違いないのだ、と。

 しかし争いは激化し、それに伴って仲間の血が多く流れた。




「だが、現実を目の当たりにするたびに、私の心は摩耗していった。死していく仲間の最期の声が、叫びが、耳に張り付いて離れてくれないのです」

「それでも、キミは――」




 苦しみを語るオルリア。

 だが、そんな彼にミクリアは言った。




「まだ、夢を見ているんだね……?」――と。




 自分たちが、初めて出会った日を思い出しながら。




「あの書斎で、偶然に出会って。一緒に読んだあの日の夢を」

「………………」




 それは、幼き日の記憶。

 彼らは同じ日、同じ時を過ごして理想を語り合った。それがとても困難な道程であるとしても、それこそがあるべき姿なのだと、そう信じて。

 だから、ミクリアには分かるのだ。

 このドラゴン――オルリアが、まだ夢を抱いていることが。




「だって、もし諦めたのだとしたら。こうやって、ここにいる必要もない」

「えぇ、そうですね。たしかに私には、このダンジョンに籠る理由がない」




 彼が仮に人間を見限っていたなら。

 このダンジョンを出て、別の地へ向かうこともできたはずだった。それでもそうしないのは、何かまだ、微かでも希望を抱いているから。ミクリアは、その理由が知りたかった。

 だから、意を決して訊ねる。




「……オルリア。いったい、何があったの?」

「………………」




 すると彼はしばし黙り、そして――。




「我が子が、人間の娘との間に子を授かったのです」




 静かに、そう語り始めた。




面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




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