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6.信じた果てに。

亀更新で申し訳ない。

他作品のコミカライズ発売諸々あったので、許して(´;ω;`)

……ごめんなさい。書きます。









「……師匠、前方に!」

「うん、わかってる。この数は普通じゃないね」




 リュカさんの言葉に応えつつ、ボクは息を殺した。

 彼女の言う通り、前方からは普通ではあり得ない数の気配――それもとてつもない魔力量を秘めたものが、陣形を組みながら迫ってきている。近くにあった岩場の陰に身を隠してから数分、地鳴りのような足音と声から相手がドラゴンの群れだ、ということが判った。



「やっぱり、ミクリアの言った通り、か」



 それについて、ボクはこの場にいない少女の名前を口にする。大精霊である少女はいま、こちらとは別行動を取っていた。その理由というのもミクリア自身からの希望であり、彼女曰く『自分が行かなければならない』場所がある、とのこと。

 その間にボクたちには試練が与えられるはずだ、と。



「師匠、本当に大丈夫ですか……?」

「大丈夫ですよ。だって、ミクリアがそう言っていたんだから」

「ですが――」



 そして、いよいよその『試練』が迫った時。

 どこか不安げな声で、リュカさんはボクにそう訊いてきた。

 彼女の言わんとしていることは、理解ができる。この状況下においてパーティーを離脱したということは、すなわちミクリアだけが敗走した、と考えることもできた。さらに訝しんだ見方をすれば、こうなることを予見した上での行動だとすれば、それは――。



「もしかしたら、彼女の罠である、という可能性は拭いきれない」



 リュカさんは、一つの可能性を口にした。

 いくらパーティーを組んで、仲間だと語っていたとしても。その心の内のすべてを推し量れるものでは、決してない。命懸けの場面だからこそ、彼女の口にした可能性は嫌でも脳裏をよぎっていくのだ。それが人というものであり、当然の思考だった。



「そう、ですね……」

「それでも師匠は、ミクリアを信じるんですか?」



 そのことを確かめた上で、リュカさんはボクに問う。

 ミクリアは信用するに値する相手なのか、と。自身のことを大精霊だと語り、素性の一切を明確にしていない少女に、命を預けることができるのか、と。

 あるいは、退却するのが普通なのかもしれなかった。

 だけどボクは、一つ息をついて。




「信じるよ」――と。




 そう、答えるのだ。

 ミクリアという少女のすべてを知るわけではない。

 そうだとしても、彼女は間違いなくボクたちにとって――。




「――ミクリアは、大切な仲間だからね」




 出会いのキッカケは、ほんの些細なことだったかもしれない。

 一緒になって過ごした日々も、決して多いわけではない。そうだったとしても、ミクリアは間違いなく大切な仲間であることに違いなかった。仮に罠だったとしても、なにかやむを得ない事情があるに違いない。

 今となってはそう考える他ない、というのもあるけど。

 ボクたちを見るミクリアの眼差しは、とても真剣なものだったから。




「本当に、師匠は筋金入りのお人好しですね」

「えー……? そうかな」

「ええ、そうですよ」




 そんな考えを感じ取ったのか、リュカさんは小さく笑みを浮かべながら言った。

 こちらが少しだけ不服を申し立てると、しかしすぐにこう続ける。





「でも、そんな師匠だからこそ。きっと、リーダーに相応しいのです」





 その言葉の直後、ひときわ大きな咆哮が響き渡った。

 どうやら、いよいよ時間がやってきたらしい。




「それじゃ、頑張ろうか。……リュカさん!」

「ええ、分かりました!!」





 ボクは一つ気合を入れ直し、そう声をかける。

 岩場の陰から出ると、そこには尋常でない数のドラゴンの群れ。





 ボクとリュカさんは剣を構える。

 そして、大きな『試練』へと立ち向かうのだった。










 ――一方、ダンジョン最奥。





「やっぱり、キミだったんだね」

「あぁ、その声は懐かしい。……ミクリアさま」





 ミクリアは清らかな魔力を辿り、一つの空洞の中へとたどり着いていた。

 そして、そこで再会を果たすのだ。




「お久しぶりにございます。相も変わらず、見目麗しくおられる」

「そう言うキミは、ずいぶんと疲れちゃったみたいだね。……オルリア」






 少女の見上げた先にいたのは、山一つほどの大きさはあろうドラゴン。

 オルリアと呼ばれた彼の竜は静かに息をついてから、こう答えるのだった。








「えぇ……心身ともに、枯れ果てましたから」――と。







 ダンジョンの最奥に棲むとされるエンシェントドラゴン。

 ミクリアはおもむろに歩み寄り、そんな相手のことを優しく撫でるのだった。




 


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