7.リュカ・リーデンクロス。
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――リーデンクロスは、騎士家系の名門だ。
爵位も与えられ、この国の守りの要として重宝されている。そんな家系の中でリュカさんは、生まれながらにして剣を学ぶ運命を定められていた。
しかし彼女には、いくつもの不運が重なったのである。
「私の兄たちはとかく優秀だった。それこそ、歴代最強、歴代最高と謳われるほどの天賦の才に恵まれていた二人だ。それに比べて、私はあまりに平凡がすぎた……」
本来なら比較されるのもおかしい。
そう思えるほどの相手が身内、しかも兄妹の中にいた。たしかに、リーデンクロス家の長男と次男の話は、貴族だった当時にボクも耳にしたことがある。
しかし、その家に女子がいたことなど、今の今まで知らなかった。
「そんな中で、私は政略結婚の道具にされそうになった。心の底では、それも仕方ないと割り切っていたのだがね。当時に私は、素直になれなかった」
そして、リュカさんは決断したのだ。
自らリーデンクロス家を離れて、冒険者として腕を磨くことを。そうして彼女は冒険者として、しっかりと結果を残した。
しかし、本人はそれでもまったく満足していないらしい。
「今でもまだ、納得はしていない。兄たちの強さは、私なんかの比ではないのだから」
「リュカさん……」
拳を握り締めるリュカさんに、ボクはどう声をかければ良いのか分からない。
そんなこちらの様子に気付いたのか、彼女は小さく笑った。
「それでも、諦めてはいないんだよ。そして、ついに私はキミに出会えた」
「え……?」
リュカさんは、まるで少女のような表情を浮かべる。
ボクが首を傾げると彼女は、貴族時代を思わせる恭しさで頭を垂れた。そして、強い決意を感じさせる声色で、こう申し出るのだ。
「ヘリオスくん。私を、キミのパーティーに加えてほしい」――と。
正直にいえば、驚いた。
だけど、こちらとしては断る理由は一つもない。だから、
「はい! よろしくお願いします!!」
ボクは、しっかりとリュカさんの手を握ったのだった。
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