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6.戦いを終えて。

一つの戦いを終えて、リュカの素性が明らかに?


応援よろしく!









「すごいな、キミは……」




 声をかけると、リュカさんは苦笑しながらそう答える。

 どうやら無事だったようだ。そう思って、ゆっくり歩み寄ると――。




「さっすが、アタシのヘリオスー!!」

「ごふっ!?」




 右方向から、ミクリアの突撃を喰らった!

 不意打ちということもあったが、思い切り脇腹に突っ込んだ少女の一撃に、ヒュドラの攻撃以上のダメージを負う。下手をしたら、肋骨が数本持っていかれそうな勢いだった。

 というか、折れないにしても思い切り咳き込んでしまう。



「んー! ホントに最高! アタシの想像なんて、簡単に超えちゃうんだから!」

「ちょ、ちょっとミクリア……? く、苦しいよ……」

「え? あぁ、ごめんね!」



 それでも、かなり興奮しているらしい。

 少女はボクの腕にしがみ付いて、離れようとしなかった。そんなボクたちを見て、笑うのはリュカさんだ。彼女はどこか気の抜けたような、柔らかい雰囲気になっていた。

 いまの戦いで、緊張の糸が切れたのだろうか。

 だけどここはダンジョンの内部、あまり気を抜かない方がいい。



「あの、リュカさん――」



 そう、思った矢先だった。



「ぐ、かは……!?」

「え……?」

「ちょっと、大丈夫!?」



 リュカさんが血の塊を吐き出したのは。

 ボクとミクリアは、慌てて彼女の元へと向かって駆けだした。

 そして苦しげなリュカさんをその場に寝かせ、身体に傷がないかを確認する。しかし、傷らしい傷はなかった。だったら、もしかして――。




「これは、もしかしてヒュドラの毒……?」




 考えられる可能性は、それしかない。

 いまの戦いでヒュドラたちは、各々に大量のブレスを吐いていた。それは少量でも猛毒だ。もし仮に吸い込んでいたとしたら、内臓が侵されているかもしれない。



「気にしないでくれ。私はもう、助からないだろう?」

「そんな、諦めないでください!!」



 リュカさんは静かに笑うと、そう口にした。

 しかし、それでも諦めきれない。だから必死に訴えた。すると、



「いいんだ。私は、器ではなかったんだ」

「器……?」



 彼女は苦しげに、そう口にする。

 何かしらの意味はありそうに思えたが、いまはそれどころではない。

 しかし、ヒュドラの毒は特殊なものでもある。ボクだってある程度の治癒術をこなせるが、必要なのはより純度の高い魔力だった。

 それは天性の素質というもので、努力でどうにかできるものではない。




「でも、諦めきれない。どうしたら――」




 そう考えていると、ふいにミクリアがこう口にした。




「どうしても、助けたいの?」――と。




 驚いて見ると、そこには真剣な表情の少女がいた。

 いつものように茶化すような口調ではない。何かを見定めるような、とにかく大きな覚悟があるように思えた。だから、



「当たり前だろ。だから、ミクリアも力を貸してくれ!」

「……うん、分かった。さすが、ヘリオスだね!」




 ボクがそう頼むと、笑顔になって嬉しそうにそう答える。

 そして、リュカさんの傍らに膝をついて、祈りを捧げるように手を組んだ。




「これは、なんて綺麗な魔力だ。……これなら!」




 考えるより、行動が先。

 ボクは意識を集中させて、リュカさんの治癒魔法を施すのだった。











 ――数日後。



「キミたちには、本当に助けられたね」

「いえ、こちらこそですから」



 リュカさんの容態は快方に向かい、ギルドの医務室で言葉が交わせるほどになっていた。彼女はボクたちの顔を見ると、柔らかく微笑む。

 そんな彼女に、ボクは一つ訊ねるのだった。



「ところで、リュカさんに訊きたいことがあったんです」

「え……? なに、かな」



 首を傾げるリュカさん。

 そんな彼女に、ボクはリュカさんの得物を手に取って言った。







「この紋章は、このゲルダ王国最大の騎士家系、リーデンクロスのもの、ですね?」――と。







 すると、リュカさんは少し驚いたように応えた。





「あはは……。どうやら、キミはなんでもお見通しのようだね」



 そしてどこか、困ったように笑いながら。





「私のフルネームは、リュカ・リーデンクロス。かつては騎士の名門家系、リーデンクロス家の末席に身を置いていた者だよ」





 そう、語り始めたのだった。




 


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