5.『規格外』の少年。
主人公無双。
『リュカよ、貴様は本当に出来損ないだな』
彼女の記憶にあるものの中で、最もつらい言葉。
それは、実の父から吐き捨てるように言われたものだ。たしかに当時のリュカの剣術は、お世辞にも褒められたものではなかった。
しかし、だからといって父の侮蔑の眼差しはあんまりだろう。
彼女はそう思ったが、味方をしてくれる者は一人もいなかった。
『リュカよ、お前は女だ。であれば、剣の道に進まずとも使いようはある』
そして、さらに日が経つと言葉はより強くなっていく。
いよいよリュカのことを道具として見始めた。しかし状況や家柄を考えれば、父の判断も間違いではない。娘を政略結婚の駒にするのは、どこでも行われていることだった。
だけど、リュカはそのような扱いなど御免だったのだ。
『私は、この家を出ます。そして――』
そう、だから年端の行かぬ少女だったリュカは父に告げる。
『必ず強くなって、貴方のことを見返してみせましょう』――と。
――そう言って家を出て、すでに五年の月日が流れていた。
基本以外の剣は、何もかも自己流。
頼る人もいなかったため、死に物狂いで冒険者稼業にしがみついた。それでも、ついに下手を打って追い込まれて。いまは自分より年下の少年に助けられていた。
そんな彼の動きを見て、リュカは思うのだ。
「…………あぁ、私はまだまだ弱いのだな」
この世界には探せばいるものだ、と。
そう――――『規格外』の強者が。
◆
「はあああああああああああああああああああああああああああ!!」
ボクは全身のバネを使って、ヒュドラの頭上へと跳躍する。
そして詠唱破棄による魔法で牽制しつつ、急接近していく中で全体重を剣に込めて振り下ろした。最初は硬い鱗が邪魔をするが、炎剣はすぐに柔らかい肉へと至り、切り裂いていく。ヒュドラは断末魔の叫びを上げ、まず一体が絶命した。
「まだ、行ける……!」
着地と同時に、次の個体へ。
そして胴体を思い切り、横に薙いだ。
途端に苦しむヒュドラの首は乱れ、しかしボクの目はその動きを捉える。――幾度となく剣を振り、相手の首を切り刻んだ。
そして、ついに最後の一体になった。
「最後だああああああああああああああああああああ!!」
ボクは、渾身の力を込めてヒュドラそのものを一刀両断にした。
けたたましい声が響き渡り、魔素結晶の山が出来上がる。
「はぁ、これはさすがに疲れた、かな……?」
ボクは額の汗を拭ってから、ふと思い出して。
「あ、大丈夫でしたか? ――リュカさん」
どこか気の抜けたような表情をした彼女に、そう声をかけたのだった。
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