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ダンジョン「地球」の管理者は、人生二度目の天使さま。  作者: 伊里諏倫
小鬼たちの哀歌

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プロローグ

【連続投稿 1/2】

 果てしなく続く星海に今、一隻の船がぽつんと浮かんでいた。

 堅牢な装甲に包まれた護衛艦。しかしその船体はよく見れば傷だらけで、満身創痍だった。したがって艦橋に居並ぶ小鬼種(ゴブリン)族の士官たちも、意気消沈として重たい空気を纏っている。


 さて、何から語れば良いものか。

 初めに沈黙を切り裂いたのは、艦長である初老の小鬼だった。


「……被害状況の確認を」


 出来得るなら聞きたくない。だが、誰かが聞かなくてはならないのだ。そんな思いから零された、絞り出すような声音。


 やがて各区画から上げられた報告が少しずつ纏められていく。

 結果、即座に大破する心配はないものの、このままでは航行に支障をきたすのも時間の問題であることがわかった。


「ふん。随分と手酷くやられたものだ。……やむを得ん。しばらくこの宙域に留まるしかあるまい」

「……今頃あちらは無事でいるでしょうか」

「そうあって欲しいと願うばかりだ。でなければ、我々の献身が何だったのかという話になる。それに……人の心配よりもまず、自分たちだろう」


 艦長の小鬼が、目深に被っていた帽子のつばを持ち上げ、茫洋と広がる星の海へ視線を転じる。



「――ここは一体どこなのか」



 銀河連邦の観測機関、巨大天文所を1丁目1番地とした宇宙の座標。

 その座標を指し示す羅針盤は先ほど、予期せぬアクシデントで壊れてしまった。

 もはや彼らは大海の上で天体(しるべ)を失くした航海士に等しい。ただ波間に揺蕩うだけの非力な存在だ。


 宇宙航行において、こうしたトラブルは枚挙に暇がない。

 ゆえに日々の訓練と慣例に従い、一つの命令が下された。


「救難信号を出せ」


 遭難者に出来るのはひたすら『待つ』ことだけだ。


「は! しかし……このような場所に人がいるでしょうか……?」

「さて、な。跳躍(ワープ)距離から概算するに、ここはまだ深界ではなく未踏領域のはずだ。運が良ければ暇な冒険家にでも届くだろう。最悪なのは――いや、止そう。ともかく信じて待つだけだ」


 思わず艦長が飲み込んだ言葉を、しかし船員たちは機敏に察知していた。


 計器が壊れ遭難してしまった宇宙船。その信号に寄ってくるのは必ずしも善意の第三者と限らない。こちらの窮地を察し()()()()()()()ような商人ならまだ良い方で、海賊や『害獣』だった場合は目も当てられない。

 もっとも、ここが未踏領域――銀河連邦圏の外であることを鑑みれば、救難信号は空振りに終わってしまう可能性の方が高かった。


「お前たち、顔を上げろ! この程度、剣神様に与えられた苦難と比べれば何十倍も容易かろう。今頃本隊だって私たちの行方を追っているに違いない。だから絶対に諦めるんじゃない!」


 疲れから、俯いていた士官たちの瞳に光が宿る。

 根拠のない鼓舞であっても、全てを投げ出すにはまだ早い。それにかれらは、己が戴く上官に全幅の信頼を置いていた。


「たとえここが……どんな『辺境』であったとしても」


 やがて、小鬼たちの船に火が灯る。

 それが蝋燭の見せる最期の輝きなのか、あるいは途上のそれなのか。


 少なくとも――吹けば消えてしまうような頼りないものであることだけは確かだった。


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まじか、続編が来た
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