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84.鯉の病に傷薬?

いきなり飛んできた際どい質問に、俺はなるべく素っ気無く返すことにした。


「俺が知るわけないだろ」


「まあ、当然よね。レオ君が魔法薬学に詳しかったら、半分の確率で100%副作用が出る、あたしの新作魔法薬を飲む必要なんて無いんだし」


そういう危なっかしいものは、絶対に俺以外の人間に飲ませるんじゃないぞ!


急にエミリアが呟いた。


「あ、あのマーガレット先生。良かったらわたしも、英雄の秘薬について調べてみましょうか? お茶とお菓子のお礼もしたいですし」


エミリアの手を握ったままマーガレットが笑顔になる。


「あら、本当に!? エミリア先生に手伝ってもらえるなんて、あたしってば幸せ者だわ」


ちゃっかりしてるぜ。マーガレットは人に頼み事をするのが上手い。


ただ、素直で嫌味が無いものだから、頼られた方も悪い気はしないのだ。


エミリアは恥ずかしそうにうつむいた。


「もう、すでに先生ご自身でお調べになったことばかりになってしまうかもしれませんが」


「そんなことないわよ。あたしの知識は偏っているもの。エミリア先生の観点で英雄の秘薬について、調べてもらえるとすごく助かるわ!」


手を離すとマーガレットは両腕を翼のように広げた。


俺はすかさず止める。


「こらこら、マーガレット……抱きつこうとするな。そのハグ癖は直した方がいいと思うぞ」


「あらいいじゃない! 友情の証よ? ねえエミリア先生?」


聞かれてエミリアは焦りながら顔を赤らめた。


「す、すみません。不慣れで、あ、あの嫌とかじゃないんですけど、女性同士でもそういうのは恥ずかしいです」


「あらしょうがないわね。エミリア先生ってシャイなんだから。でも、そういう所も可愛いと思うわ。レオ君は大事にしてあげなきゃだめよ?」


「わかってるって」


軽く返した瞬間、エミリアが素っ頓狂な声を上げた。


「わ、わたしを大事にするなんてもったいないです!」


「そうか? 大事に思ってるぞ。この先、教員になったらエミリア先生は先輩だしな」


「あっ……そ、そうですよね! そういう意味ですよね! あ、あははは……」


さっきからエミリアの様子がおかしいな。


とはいえ、あまりこちらが気にしすぎると、エミリアは落ちこんでしまうこともあるし……。


ここはそっとしておきつつ、話題を変えよう。


「ところで二人は教員同士なのに、初対面なのか?」


マーガレットが小さく頷いた。


「こうしてお話するのは初めてね。といっても、あたしの方は前々からエミリア先生に注目してたけど。大型新人ですもの」


ピンクの長い髪を指で耳元から掻き上げるようにして、マーガレットの視線はエミリアの胸に向かった。


山が高いほど谷も深くなる。そこにあるのは、はちきれ、こぼれんばかりの水蜜桃だ。


「あたしに無いものを持っているんだから、妬けちゃうわ」


エミリアは慌てて両腕で抱えるように胸を隠した。


「は、恥ずかしいです! 同性同士といっても、困りますマーガレット先生!」


「あら、ごめんなさいね。けど本当にエミリア先生ってお綺麗よ。肌も白くて染み一つないし」


「本の虫で外に出なかったから白いんです。あんまり健康的じゃありませんから」


「そうかしら? あっ! そうだわ! 良い物があるから取ってくるわね」


また何か思いついたようで、マーガレットは研究棟の建物の中に引っ込んでしまった。


代わりに俺がエミリアに謝る。


「ごめんな。マーガレットは良い奴なんだが、ちょっとその……困ったところもあるんだ」


フルフルとエミリアは顔を左右に振った。


「ぜ、全然気にしてません。それに綺麗だなんて言われたの初めてで……不思議です。マーガレット先生に見つめられたら、変にドキドキしてきて……」


「大丈夫か? 薬もらってこようか? 新薬じゃなくて、臨床試験をパスしたちゃんとしたやつ」


「あ、あの! こ、こ」


エミリアは声を震えさせていた。


「こ……なんだ?」


「こここここいのやまいにきぐぐずりがほじいでず!」


無茶苦茶噛んでるな。


「鯉の病に傷薬? そんな薬あったかな。とりあえずマーガレットに聞いてみるか」


エミリアはブンブンと首を左右に振った。


「ひゃ! な、なんでもありません」


そこに「お待たせー!」と、陽気な声を上げてマーガレットが戻ってくる。


「はいこれ。あっ! レオ君はちょっと耳を塞いで目を閉じて、できれば地中50メートルくらいのところに埋まっててくれる?」


「なんだよそのヒドイ隔離っぷりは」


「いいからちょっと、あっちに行っててちょうだい」


「だったら先においとまさせてもらうぜ。今日中に半分は終わらせておきたいからな。それじゃあな! エミリア先生。お茶ごちそうさまマーガレット」


俺はグラスに残っていたハーブティーを飲み干して立ち上がった。


「え、あ、はい! お疲れさまですレオさん!」


「あたしのことを思って、しっかり働くのよレオ君」


二人の視線に見送られて、俺は薬草園に戻る。


エミリアも芯に強いものは持ってるんだけど、普段は結構内気で引っ込みじあんな性格さからな。


マーガレットにかかるとたじたじになるのはしょうがない。



さて、畑作りの第二ラウンドといきますか!

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