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80.学園長からの依頼

※こちらのお話は、スキップしていただいても本編に影響ございません。

お気軽に、さらっと読んでいただければ幸いです。


前作「勇者攻略」とのクロスオーバーエピソードとなっております。(全二話)↓

http://book1.adouzi.eu.org/n1776cr/


学園内の森にある祭祀場は、召喚魔法言語学の実践訓練用に作られた施設である。


先日、獅子王の召喚で破損した結界用の尖塔は、修理が終わったばかりなのだが……新しく張られた結界の強度試験がまだ済んでいなかった。


学園長室に呼ばれた俺は、椅子に深く腰掛けて半分眠ったままのような老人に聞く。


「で、耐久試験の話なんて、どうして俺にするんですか学園長?」


細めていた目をぱちっと開いて、学園長は頷いた。


「あれの修理費がけっこうかさんでしまってのぅ。残念ながら我が校にはランクAの召喚獣を呼び出せる教員がおらんのじゃが、専門家を呼ぶ予算もなくてのぅ。ああ、困った困った。一体全体、だれじゃランクA以上の化け物を呼びだして暴れさせたのは。いや、それをやらせた人間にこそ責任があると思うのじゃがのぉ」


く・そ・じ・じ・い!


俺だよ! わかってるよ俺がプリシラに無理を言ってやらせたんだって!


知らないとは言わせないとばかりに、リングウッドは俺をじーっと見つめてきた。


「俺に言われても困ります」


「お主、知り合いにおらぬか? 無料でランクA以上の召喚獣を出してくれるような輩を? もしおるようなら、ちょっと耐久試験をお願いしてほしいのじゃ。ああ、お主以外に他に立ち会いの人間なんぞいらんよ。理論魔法使いのお主が耐久性の保証さえしてくれれば、それでええから」


「そう言われても」


リングウッドは小さく首を傾げさせた。


「クビ?」


「あッ! 心当たりがあるんで声をかけてみます」


「よろしい。では下がって良いぞ」


俺はいそいそと学園長室を後にした。


身から出たさびとはいえ、完全に弱味を握られてるな。


これも教員になるまでの我慢だ……我慢!



――午前十時三十分。


さっそく俺は、修復されたばかりの祭祀場にやってきた。


まだ学園は午前の授業の真っ最中だ。


クリスたちがいないのを少し寂しく思う反面、危険な目に巻き込まなくて済むという安堵感もあった。


石を切り出して敷き詰めた祭祀場のステージは、綺麗に新調されて獅子王との戦いの爪痕など微塵も残っていない。


そっと尖塔の外面に触れてみる。


ひやりとした感触だ。


解析したところ、結界の物理的強度がかなり引き上げられていた。


これなら獅子王でも簡単には破れないだろう。


ただし、魔法的な防御は引き換えにやや下がってしまっている。


それでも総合的にみればランクAの召喚獣くらいなら、きっちり封じることができる性能だった。


A+となると、どうだろうな。相性によっては押さえ込めないかもしれない。


俺はステージの中に入り、結界を起動させた。


四方の尖塔が障壁を展開し、ステージ場と外界が断絶される。


起動にも問題無し……と。


さて、何を呼ぼうか。


実際に何か呼んでみて、性能をチェックするのが手っ取り早い。


まあ、呼ぶ相手は適当でいいか。


俺はパスも何も考えず、ランクA相当の召喚を行った。


ステージの上に魔法陣が浮かび上がる。


そこからゆっくりと姿を現したのは……人間(?)だった。


「んだよてめぇ! ここどこだよ! コルアアアアアアアアアアアアアァッ!!」


声のトーンは少年のそれだ。ずいぶん口が悪い。


現れた姿は異形というか、異様だった。


全身をぴっちりとした布地で覆い、仮面をつけている。


仮面は目元を覆うタイプのものだった。


その全てが白黒――モノトーンでまとめられていた。


トランプのジョーカーのような格好だ。


いくら適当に召喚したとはいえ、こんな変質者が出てくるとは思わなかった。


俺は言葉に感情魔法を込める。


「とりあえず名前を名乗れ。そして、貴様の条件を教えろ」


「はあ? 人に名前を聞く前に自己紹介しろや!」


チンピラめいた威圧的な口調で少年は凄んで見せた。


魔族にしては、雰囲気がずいぶんと人間よりに感じられる。


だが、確実に人間ではない。


元人間――そう、人間が不死者に転じたような、一種独特の“臭い”を感じた。


腐臭ではなく、あくまで空気感の話だ。


「つーかじろじろ見てんじゃねぇよ! 気持ち悪ッ! 男に見つめられるとかマジありえないから!」


「女ならいいのか?」


「そ、そういうつもりで言ったんじゃねーよ! はいはい、それでおっさんの名前をとっとと言えって」


「俺は学園の管理人をしている、レオ・グランデだ」


「はい! ありがとうございました! んじゃあ、俺は帰るんで」


帰られるのはまずい。まだ結界の耐久試験が済んでいないからな。


「待て。こちらが名乗ったんだから、そちらも名乗るのが筋ってものだろう」


「いきなり呼びだしておいて筋とか、何言ってくれちゃってるわけ?」


「呼び出された方が悪いんだ」


「つーかおっさん、さっきからずいぶんと気やすいなぁ? 俺ら初対面なわけよ? わかるかおっさん?」


「お前もおっさんおっさん言うな。俺はまだ二十代だ」


「十分おっさんだろうが! あぁん? こちとらぴっちぴちの十代半ばだぜ?」


仮面の少年はため息混じりだ。やけに挑発的なやつだな。


「ここまで受け答えができるということは、幻体に中身が入っているということだよな?」


「おっさんが何言ってるかわからんが、久しぶりにこの姿になる夢をみてるみたいだし、ちょっと昔を思い出して俺復活って感じだぜ!」


俺と同じく、眠ることで幻体をコントロールしているのか。


もう一度名前を聞いた。


「俺はおっさんでもかわまないが、お前をお前呼ばわりするのは、確かに気やすいからな。名前を教えてくれ」


「それが人に物を頼む態度かぁ?」


「教えて……ください」


「もっと心の底から懇願するように!」


「お、教えてくださいお願いします」


俺が頭を下げると、道化風の少年は口元を緩ませた。


「そこまで言うなら仕方ない! 俺はアーク……大魔王シルファーの参謀にして魔王軍の大幹部――世界の破壊者! 道化魔人アーク様だ!」


なるほど、かなり高位の魔人らしい。


しかも世界の破壊者か。こいつはやっかいな化け物を呼びだしてしまったようだ。


俺の中でスイッチがカチッと入る音がした。


精神が臨戦態勢に切り替わる。


「そうか。じゃあさっそく始めようか道化魔人アーク?」


「始めるってなんだよおっさん?」


「お前の望みは世界の破壊なんだろ? この世界に呼び込んだ非礼はわびるが、世界を壊すというなら……俺はお前を倒さなくちゃならない」


とはいえ、まいったな。


こんな時に限って手元に魔法武器が無い。


徒手空拳は得意じゃないんだが、この際、仕方ないか。


道化魔人アークはじっと俺を見据えた。


「もしかしておっさん……強いのか?」


「さあな。そちらの世界の基準じゃどうかはわからないが、なんの抵抗もせずに世界を壊させるわけにはいかない」



俺は拳を握って身構えた。

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