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76.だれか嘘だと言ってくれ!

チケットを使って入場すると、受付で魔法使い向けの制御リングを渡された。


この施設は平民が魔法使いのような、超人的な力を体験できる娯楽施設なのだという。


魔法使いが利用する際は、この制御リングの装着が義務づけられていた。


制御リングは、魔法使いが無意識のうちに魔法を使ってしまわないよう、一時的に魔法力を封印する、ある種の拘束具だ。


構造を解析してみたところ、リングはこの施設そのものに張られた結界と連動しているらしい。


建物内にいる限りランクCまでの各種魔法の発動をリングが阻害するよう、魔法式が仕込まれていた。


まあランクCでも安全マージンを取りすぎだと思うけどな。


四人全員がリングをつけたのを確認して、女性の係員の誘導に従い通路を進む。


俺たちが通されたのは十メートル四方ほどの小部屋だった。


前後左右も天地も真っ白に塗られている。


中に入ったところで、係員の女性が説明を始めた。


「こちらは四人から八人までのお客様向けとなっております。装備の設定のあと、本編は五十分ほどとなっております。魔法武器はすべて幻影と斥力場で形成されます。また、ダメージ表現として軽度な揺れや衝撃を感じることがありますので、ご注意ください。それでは勇者の戦い――巨大なモンスターとの死闘をお楽しみください」


うやうやしく一礼をして、係員の女性は部屋の外に出た。


フランベルが鼻息を荒くさせた。


「むっはー! レオ師匠! 勇者の戦いだって! すごそうだね!」


プリシラが不安げにうつむいた。


「だ、だいじょぶかなぁ……なんか、すごそうなんだけど」


クリスが壁際で、そっと壁に手を触れて興味深そうに頷く。


「この壁にも魔法式が走らせてあるわね。さすがに専門家じゃないから、詳しいところまではわからないけど……」


フランベルが困り顔になった。


「クリスはこんな時でも優等生だね。こういうのは、頭を空っぽにして楽しんだらいいんだよ!」


俺もフランベルの意見に同意見だ。


「そうだな。まあ遊びなんだし気楽に行こうぜ」


室内の照明が落ちて、一瞬だけ真っ暗になった。


「きゃっ! なによいきなり?」


「うわー! 始まるよ始まるよ! ドキドキとワクワクがとまらないね!」


「ちょっとレオっち。暗いからってそんなとこ触らないでよ」


「触ってないから! プリシラお前、冤罪を積極的にかぶせにいくのは本当にやめてくれよ」


そういうのが一番俺に効くから。


いや、効くとわかっているから、やってくるのかもしれないが……。


室内の壁面すべてに、幻影系の魔法式が描き込まれた。


白い壁が消え去り景色が一変する。


床が岩のごつりとした感触に変わった。


どうやら舞台は火山のようだが、先日行った火山と違い冠雪はしておらず、足下に溶岩の川が流れていた。


見渡す限り、火山岩の黒い岩場が広がる。


そこかしこから水蒸気も吹き出していた。


熱気も水分も本物の質感だ。


どうやら精霊魔法で風の感触や、水蒸気の熱気、地面の岩場の硬質感が再現されているらしい。


周囲の風景は幻影だ。歩いてみると前に進んでいるはずなのに、壁には突き当たらなかった。


プリシラが声をあげる。


「ちょ、ちょっと! レオっちこれって本当に幻影魔法なの?」


「ああ。ただ、俺たちが触れられる範囲は精霊魔法で質感を表現してるっぽいぜ」


「うー、レオっちが何言ってるかわかんないし」


「わからなくても楽しめばいいんだぞ」


周囲をきょろきょろ見回していたクリスが、大きな宝箱を見つけて駆け寄ると箱の中身を確認した。


「ねえみんな、この中に武器があったわ」


棺桶のように巨大な箱の中には、魔法武器が収められている。


「わーい! じゃあぼくはこれにするね!」


いの一番にフランベルが片刃の曲刀を手に取った。


異様に刀身が長い。フランベルの身長の1.5倍ほどはある。


「うわ! 不思議だね。持ってる感触はあるのに、全然重さを感じないよ!」


クリスはスタンダードな長剣を手にした。


が、これも大きさが普通じゃない。


まるで巨人が使うために作られたような、規格外な刃の大きさだ。


曲刀よりも幅広い刃で、クリスが持つとまるで剣の方が本体で、クリスがおまけのように見えた。


「本当だわ。こんなに大きいのに全然重さがないなんて。これだと現実じゃないって、はっきりとわかるわね」


プリシラが巨大ハンマーを手に取った。


「あたしはコレかなぁ。うわ! マジで軽ッ!?」


ひょいっと彼女がハンマーを持ち上げる。


さてと、じゃあ俺は……っと。


「おい。武器が入ってないんだが」


箱の中身はがらんとしていた。


クリスが俺と一緒に箱の中をのぞき込む。


「あら、ちゃんとあるわよ?」


彼女が箱の隅っこを指さした。


そこにあったのは――スプーンだった。


「うおおおおおおおおい! なんでスプーン!? なんでスプーン!?」


いやおかしいだろこれ! スプーンって! 百歩譲ってもナイフかフォークだろうに。


せめて先割れスプーンにしてくれよ!!


ん? 待てよ! さては、手に取った瞬間にクリスたちの武器みたいに大きくなるんじゃないか?


恐る恐るスプーンを手にすると、突然、角笛のような音が周囲に響き渡った。


目の前から箱が消えて、景色が火口のクレーター内に移り変わる。


地面がグラグラと振動し、熱風が吹き荒れた。


さらに、俺たちそれぞれの頭上に緑色のバーのようなものが表示される。


「なんだこりゃ?」


ガツン! とした振動が来たかと思うやいなや、地面を割って巨大なずんぐりとした黒い塊が姿を現した。


こんな火竜はみたことがない。


「出たなドラゴン! ぼくが成敗してやる!」


「うわ、デカッ! ちょっとマジですごいんだけど」


「レオ! なにか違うわ! 見たことがないやつよ!」


三者三様に少女たちが声を上げる中、俺が手にしたスプーンは……巨大化することもなく、シリアルを食べるのにちょうど良いサイズのままだった。



誰か嘘だと言ってくれ!

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