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71.戦闘管制

俺は通話魔法をクリス、プリシラ、フランベルの三人に掛けてパスを通す。


「これより戦闘管制に入る。プリシラはクロちゃんを召喚。フランベルは召喚完了までプリシラのバックアップ。クリスは二人に斥力場の防御を展開。そののち防壁魔法を俺を対象に設置。敵の破壊魔法の第一波終了後、プリシラとクロちゃんでシアンを挟撃。タイミングをみてフランベルは近接攻撃を展開。クリスは状況に応じてそのバックアップ」


俺の言葉に最初はとまどったプリシラだが、すぐに召喚魔法言語を奏で始めた。


「ならば私のための供物となれ!」


シアンがプリシラの召喚魔法を阻もうと、精霊魔法の風の刃を放つ。


すかさずフランベルが蒼月を抜き払い、風の刃を剣圧で切り裂いた。


「こしゃくな……」


すぐさま、風の刃が十数発、フランベルとプリシラめがけて降り注いだ。


「させないわよ!」


クリスの斥力場がそれを防ぎ切る。


シアンは風の刃をカモフラージュにして、俺に対して破壊魔法を放ってきた。


自分で防ぐのは簡単だが、きっちりクリスが防壁魔法でシアンの破壊魔法を中和する。


「――ッ!? な、なんだというのだ……」


先日は見てすぐに再現したため、不完全だったクリスの防壁だが、シアンの破壊魔法をうち消すだけの、ちょうどぴったりの防壁を展開させていた。


「召喚クロちゃん!」


「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」


ステージ上に巨大な黒獅子の成獣が現れる。


『え、ええと……試合の方は……し、審判も気絶しており……その……あのッ!? どうしましょうリチャードソン先生!?』


『みなさん落ち着いて行動してください。どうやら、我々は強力な理論魔法の障壁によって、外部から隔離されてしまったようです。ですが、生徒も一般の方もご安心ください。我ら教員、一丸となってみなさんの安全を守ります』


最初から期待はしていないが、教員たちの中で動けそうな連中が、シアンの斥力場に干渉して脱出路の確保を始めた。


「見てないでお前も手伝ったらどうだ? ギリアム!」


すでにギリアムクラス代表の残り二名は、ステージのそばを離れて客席に逃げ込んだあとだった。


「わ、わわ、私には最後までし、試合を見届けるぎ、義務がある!」


もう、試合でもなんでもないんだが……放っておくか。


その間にも、プリシラとクロちゃんがシアンを左右から挟み込むように攻撃した。


「チッ! 貴様の相手などしていられるか!? 私とレオの戦いの邪魔をするな!」


シアンは斥力場で挟撃を弾くと、後ろに跳んだ。


ちょうどフランベルが飛び込んで、たった今シアンが立っていた場所に斬り込む。


「避けられたか!?」


後方に跳ぶと同時にシアンが風の刃を放ち、フランベルを襲う。


瞬間――クリスが真空魔法で、フランベルの目前に迫る風の刃をうち消した。


斥力場に弾かれたプリシラとクロちゃんも、着地すると身構える。


シアンが召喚魔法言語を口ずさんだ。


「させるかあああッ!」


独自の判断でフランベルが斬り込む。


シアンは召喚魔法を行いながら、フランベルの剣檄を可変槍を短槍にして弾いた。


召喚魔法を完成させると、フランベルと激しく打ち合いをしながらシアンが笑う。


「無駄だ。その剣、また折られに来たか?」


「折られたりなんてするもんか。この刀はぼくの魂だ」


ガキン! ガキン! ガキン! 


と、途切れることなくフランベルとシアンの魔法武器同士による打ち合いが続いた。


シアンの足下に魔法陣が数え切れないほど生まれ、召喚獣が次々に姿を現す。


それは全身甲冑の軍団だった。


顔は黒く塗りつぶされ、鎧だけが動き続ける死霊かリビングデッドの類いだ。


数はステージの半分を埋めるほどに膨らんだ。


甲冑は操り人形のように、剣を振り回しながらプリシラに殺到する。


「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


クロちゃんが次々と甲冑を打ち倒し、引きちぎり、プリシラに近づかせない。


それでも多勢に無勢だ。


死を恐れず、死の概念すらない甲冑兵は突撃を繰り返す。


その剣が、クロちゃんの身体を切り裂いた。


「クロちゃんがんばって!」


プリシラはクロちゃんに触れると、回復魔法で傷を塞ぐ。


幻体に痛みは無い。だからプリシラ自身、痛みを共有する必要もなく、クロちゃんの傷も閉じていく。


「クリっち! こっちは大丈夫だから! フラっちのカバーに入って!」


「わかったわ。それでいいわよねレオ?」


シアンが召喚獣を呼びだしたため、俺は戦術に修正を加えた。


「プリシラとクロちゃんは甲冑兵の処理を継続。クリスはフランベルとシアンを直接攻撃。防御系の理論魔法は俺が受け持つ。攻めまくれ!!」


「了解ッ! 援護するわフランベル!」


クリスが前に出て、フランベルと打ち合いになっているシアンの足下に、重力の枷を発生させた。


即座に理論魔法式にシアンが介入してくる。


先ほど、クリスの魔法式を上書きして無効化した技だ。


似たようなことは俺も得意だぞ。


そもそも、クリスとのタイマンの時に、式への介入は何度も見せてもらっているからな。


クリスの魔法式への介入に対して、俺はさらに介入を行った。


ややこしいが、キャンセル技がキャンセルされたことで、クリスの魔法が正常に実行される。


「ば、馬鹿な!?」


シアンの足捌きが重く鈍った。


フランベルの手にした蒼月の刃が閃く。


「ハアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


気合いとともにフランベルはシアンに一撃を打ち込んだ。


避けきれないとふんで、シアンは可変槍で正面からフランベルの攻撃を受ける。


ガキイイイイイイイイイイイイイン!


と、激しい金属同士のぶつかり合う音とともに、可変槍の柄からアダマンタイトコーティングされた刃の部分が千切れ飛ぶ。


シアンの可変槍も、フランベルの蒼月もリミッターの効いた状態だ。


武器の格は、ほぼ同格。


純粋に、フランベルの剣技のキレが、シアンのそれを凌駕した瞬間だった。


「あり得ない……」


シアンはのけぞるようになりながら、柄だけになった槍を投げ捨てた。


「フランベルは後退。プリシラと協力して、三十秒で甲冑兵を殲滅しろ。今のお前たちならできる。クリス……出番だ。決着をつけてこい」


「わかったよレオ師匠!」


プリシラとクロちゃんを取り囲む甲冑兵の群。


それを切り裂くように蒼い稲妻が走る。


フランベルが突撃したあとには、バラバラになった甲冑しか残らない。


客席から……声援が届いた。


「行けーッ! がんばれー! レオさん! クリスさん! プリシラさん! フランベルさん!」


こんな状態で……いや、こんな状態だからかもしれない。


吹っ切れたようにエミリアが、客席から俺たちに声を上げた。


それに呼応するように、プリシラとクロちゃん。そしてフランベルが次々に甲冑兵を倒していく。


しだいに客席からも、応援の声が届き始めた。


悔しげにシアンが呟く。


「……仕方ない。まずは貴様らに集中しよう」


闘技場を包んでいた斥力場の檻が解かれた。


どうやらシアンは、結界を維持する余裕も無くしたようだ。


だが、誰一人、観覧席から逃げようとしない。


声援が次第に一体となり、ステージ場で戦うクリスに、プリシラに、フランベルに注がれる。


クリスが改めて、計算尺を手にシアンに立ち向かった。


「レオに挑戦したいなら、まずは私たちを倒さないといけないわね?」


「うるさい。黙れ!」


クリスめがけて風の刃が飛ぶ。


「クリス。理論魔法で防御せず避けろ」


咄嗟にクリスは横に飛び退いた。


が、逃げ切れず彼女の身代わりになるように制服は切り裂かれ、スカートもボロボロにされてしまった。


クリス自身に致命傷はなく、傷は浅い。


「痛ッ……くない!」


すぐにクリスは体勢を整えた。


風の精霊魔法は囮で、シアンはクリスに対して理論魔法を展開する。


隠蔽しているため、クリスには見えていなかった。


まあ、集中している俺には丸見えなんだけどな。


種類まではわからないが、どのみち即死系だろう。


魔族としては若いながら、精霊魔法、理論魔法、隠蔽した理論魔法をたくみに使い分けるあたり、シアンの力はなかなかのものだ。


今こそ管制の出番である。


「クリス。シアンはなんらかの即死系理論魔法を撃ってくる。隠蔽したもので詳細は不明だ。そこで俺が支援するから、お前の一番攻撃力の高い魔法を、自身の足下方向に放て」


「えっ!? ……ええと、わかったわ」


耳元から聞こえる俺の声に、クリスは素直に従った。


シアンの魔法が完成する。


それは……虚数空間の理論魔法だ。


クリスの足下に別の世界へと通じるゲートが開いた。


落ちたら100%死ぬ落とし穴のようなものだ。


ゲートが開くより一瞬早く――俺はクリスの身体を短距離瞬間移動させた。


虚数空間が口を開くが、すでにクリスの身体はシアンの頭上に転送された後だった。


「いっけええええええ!」


クリスが足下めがけて放ったのは、彼女が得意とする消滅魔法ではなく、シアンを始め魔族が使う破壊魔法だった。


「人間風情があああああ!」


シアンが右腕を天に向け、クリスの破壊魔法を防壁魔法で中和する。


浅い……か。


クリスが慣れないこともあったが、やはり彼女といえども破壊魔法は使うに重たい。


軽々と使えない。そうそう出来ることではない。


シアンの展開した防壁魔法によって、破壊魔法が受けきられた……その時。


「もういっぱああああつ!」


クリスが破壊魔法を重ねがけした。


防壁で中和しきれず、シアンの右腕に破壊魔法が到達する。


「ぐああああああああああああああああああああああああああ!」


獣のような叫び声をあげて、シアンの右腕はズタズタに崩壊した。


しかも、その崩壊は上腕から肩へと広がろうとしている。


「人間が……人間の分際でええええ!」


シアンは左手を手刀にすると、二の腕から先を切り落とした。


そして、即座に再生魔法で腕を元に戻す。


実に魔族らしい治療法だ。


一方、力を出し切ったクリスはシアンの前に膝を屈していた。


「ハァ……ハァ……」


呼吸も荒く、無茶をしたのは明白だ。


まさか破壊魔法の多重起動とは、俺も予想していなかった。


「クリっち逃げて!」


甲冑兵を倒しきったプリシラたちが、クリスの元に加勢する。


クロちゃんがシアンに襲いかかった。


「獣風情がいきがるな!」


――瞬間、クロちゃんの幻体が放たれた破壊魔法によって崩壊する。


「クロちゃん!?」


プリシラが悲鳴をあげた。


が、すぐにアダマンタイトスタッフを構えなおして、彼女はクリスとシアンの間に割って入った。


「クリっちは下がってて」


「まだ……戦えるわ」


よろめきながらもクリスは立ち上がり、計算尺を回転させた。


「死ね……死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねええええ!」


シアンはもはや隠蔽や牽制などせず、破壊魔法をクリスとプリシラめがけて放つ。


俺はクリスたちを守るように防壁魔法を展開しつつ、ひっそりとシアンの背後に回り込んだ少女に指示を出す。


彼女は納刀状態だ。


「フランベル……やれ」


「了解師匠!」


シアンが破壊魔法を放ち、それを俺の防壁魔法が中和する。


同時にフランベルが一気に踏み込み、距離を詰め、シアンに肉薄した。


シアンが察知し振り返った時には、フランベルの殺傷圏内だ。


「一閃ッ!!」


「――ッ!?」



刃が閃き、シアンの胴体は二つに分断された。

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