表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/211

48.開戦

獅子王はずしっと腕を組むと、牙をちらつかせながら威嚇するように宣言した。


「己の力量もわきまえず、我を呼び出した報いはその命によってのみ、あがなえるであろう」


殺気100%の視線をぶつけてくる獅子王に、俺は口元を緩ませる。


「つまり、俺たちを殺すってか? そいつは早計だな。少し話を聞いてくれよ」


「無礼な男だ……問答無用!」


獅子王が乱暴に腕を振るった。


「おっとっと!」


俺はよろけるフリをして二歩下がる。


瞬間――目の前の石床がごっそりと獅子王の一撃で削り取られた。


「待って! あ、あたしが呼んだんだから、レオっちは関係ないし!」


プリシラが前に出ようとするのを、俺は制するように止める。


「待てプリシラ、それにクリスも」


俺が攻撃されるのに呼応して、クリスは俺を守るための斥力場を展開していた。


式の完成と斥力場の展開までのタイムラグはおよそ0.5秒。


間に合いはしなかったが、なかなかの速度だ。


クリスは獅子王に対して、消滅の魔法式を展開しようとしていた。


「それは使うなクリス」


「で、でも……」


「この場は任せてくれ」


召喚獣も王ほどになると、ランクAの理論魔法さえ無効化するような輩はゴロゴロいる。


おそらくクリスの理論魔法は、獅子王に通じなかっただろう。


即死系は格上に通りにくい。


俺に攻撃をかわされたことに首を傾げながら、獅子王が嗤った。


「運が良かったな小僧」


俺は不敵に嗤い返した。


「いきなり殴ってくるなよ。危なっかしい奴だ。それにお前が何者であれ、プリシラに呼び出された事実は変わらないだろ。立場と口の利き方に気をつけろよ」


獅子王の青い瞳がプリシラに敵意をもって注がれた。


「この娘の力ではあるまい。この場の力だ。ますます腹立たしい」


「まあな。半分は祭祀場の力だ。けど、召喚は召喚だろうに。こちらの世界に来たんだから、ルールには従ってもらう」


プリシラがブンブンと頭を左右に振った。


「止めようレオっち! もう二度と呼んだりしないから帰って!」


獅子王が吠えた。


「ふざけるな小娘が! 覚悟も無く我を呼んだというならば、ますます許すわけにはいかぬぞ」


クリスがすかさず身構える。すでに斥力場の魔法式を九割がた構築していた。


あとは座標入力をするだけの状態だ。


さらにもう一つ、クリスは獅子王に向けて魔法式を完成させていた。


「理由はあるわ。プリシラに力を貸してちょうだい!」


「ではその忌々しい拘束の力はなんだ? それがものを頼む態度か?」


クリスが展開していた重力の足かせをつける魔法式は、あっさり獅子王に看破されていた。


そもそも隠蔽の魔法式の組み込みは、対象とする魔法が高度になるほど難易度も上がる。


それに経験がモノを言う分野だ。


魔法式を看破されて、クリスは苦々しくうめいた。


「うっ……そ、それは……」


今まで、高度な魔法式を理解できた同世代がいなかったのだから、わざわざ魔法式の隠蔽なんてしたことなかったんだよな。


理論魔法使いが格上と戦うということは、こういうことなのだ。


言いよどむクリスに獅子王が再び吠えかかる。


「やはり人間など信用できぬ。皆殺しだ。この檻もやぶり、この地の人間という人間すべて殺し尽くしてくれる。蹂躙だ」


学園の生徒を皆殺しにしそうな勢いで、獅子王は言い放った。


「では始めよう。まずは貴様から引き裂いてくれるぞ」


獅子王がプリシラめがけて跳びかかろうとする。


その瞬間を狙って、俺は獅子王の地面を蹴る足に、突くような蹴りを入れた。


絶妙なタイミングでガスッ! と、俺の蹴りが獅子王の膝を打ち抜く。


「俺の可愛い生徒に何しようってんだ畜生が」


「――!?」


人間ごときに動きを止められて、獅子王は大いに驚いているようだった。


「ぐ、き、貴様……いったい……」


本能で戦う獣の王は知らないだろう。


人間には研鑽し、師匠から弟子へと伝承されてきた格闘の技術がある。


より最小限の力をもって、最大の効果を得る攻撃方法だ。


「どうした獅子王」


「偶然は三度は続かぬぞ」


さすがに軽く蹴っただけなので、膝を砕くまでには至らなかったか。


ランクA+……頑丈だ。


憎らしげに俺を睨みつける獅子王に、俺は告げた。


「殺すのなんのの前に、ルールを守れっつってんだよ」


獅子王は憎らしげに言う。


「なぜ我が貴様らに合わせてやらねばならぬ?」


「なあ獅子王。お前の存在座標を開示する条件はなんだ?」


存在座標というのは、住所みたいなものだ。これを知ることができれば、次からは祭祀場の補助なしにも、こいつを呼び出せるようになる。


「ぬう……」


獅子王は唸るだけで返答しない。


「言えないとは言わせねぇ。あるんだろ? 俺はお前に、情報の開示を請求する」


相手が人語を解するのを良いことに、俺は感情魔法を言葉に織り交ぜて交渉を続けた。


「無いでもない。我らの力を得たいのであれば、我に一撃を食らわせてみせよ」


「なるほどな。シンプルな条件で助かったぜ」


例えば美味しいケーキを食べさせろだの、ギルカを億単位でよこせだのと、召喚獣の性格によって条件はまちまちなのだが、獅子王には単純に力を示せば良いらしい。


俺は振り返ると二人に言った。


「じゃあ、さっそく三人でこいつに一撃くらわせるとしようぜ」


クリスが不安げに聞いてくる。


「だ、大丈夫なのレオ?」


プリシラは半分泣いていた。


「もうやめよう! ね! 殺されちゃうよぉ!」


俺は笑って返す。


「なーに。今日までの特訓の良い力試し……」


言い切る前に俺の身体は横に吹き飛ばされた。祭祀場の柱に叩き付けられる。


獅子王が嗤った。


「まず一人」


俺を小突いて吹き飛ばしただけで、勝ったつもりでいるようだ。


あんまり油断してると俺の生徒たちに足を掬われるぜ?


立ち上がろうかと思ったが、俺はしばらく倒れたままの姿勢を維持した。



なぜなら、今まで泣きっ面だったプリシラが、俺を背に庇うようにしてクォータースタッフを構え、獅子王に立ちはだかったからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ