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33.師弟関係

さてと、瓦礫の片付けの続きを始めようか……と、思った矢先、背後から声を掛けられた。


「師匠……じゃない、レオ。こんなところにいたんだ?」


振り返ると校舎の建物の陰から少女が姿を現した。


フランベルだ。


遠くからでも、そのアイスブルーの瞳がどこか寂しげに見えた。


「その様子だと、こってりお説教を喰らったんだな?」


「違うよ。むしろ心配されたっていうか……ぼくの今後を考えたら、別の道に進むのもありかも……って」


声はすっかり消沈気味で、苦しげな口振りでフランベルは言う。


なんだか歯切れが悪いな。


フランベルは俺のそばまで歩み寄ってきた。


その顔は……今にも降り出しそうな雨曇りの表情だ。


お説教であれ、心配されたであれ、フランベルがつらそうなのには変わりない。


「どうした? 大丈夫か?」


「もう……ぼくは……ぼくなんて……だめかもしれない」


うつむきながらフランベルは声を震えさせた。


「弱音を吐く時も素直なんだな。そんなに悲しいなら、俺が胸を貸してやるから飛び込んでこ……うわっ!」


本当に、飛び込んでこられた。


俺の胸に顔を埋めるようにしてフランベルは泣きじゃくる。


「うえええええええええええええええええええええええええッ……うッ……うッ……うわああああああああああああああああああああああん!」


まるで子供みたい……いや、フランベルはまだ十五歳くらいか。


子供らしさがあったって、なんら不思議じゃない。


こんなときは……抱きしめてあげた方がいいのか?


いや、それはどうなんだ? まだ昼休みだし……いやいや、昼とか夜とか関係なくてだな、ともかくこの場は立ち入り禁止にしたんで、人の気配がないとはいえ、それででもこんなところを万が一にも、誰かに見られたら……。


ええい、見られて結構だ!


俺はそっと……フランベルの頭を撫でた。


抱きしめるのはさすがにやりすぎだ。


「あう……レオ……こ、子供扱いしないでよ」


鼻に掛かった声でフランベルは顔をあげると、俺を睨みつけた。


「別にそういうつもりはないぞ。なあ……俺の事、もう師匠って呼ばないのか?」


「ぼくは弟子失格だよ」


ずっと思い詰めた顔で、彼女の声にはいつもの張りが微塵もない。


相当まいってるみたいだな。


「俺は破門にした覚えはないからな。お前が何を言おうと、俺の門下生だ」


「師匠って呼ばれるの、嫌がってたじゃないか?」


「は、恥ずかしかっただけだ!」


不意を突かれて、俺は噛み気味に言った。


すると……。


「ふふ、あははは! レオっておもしろいね」


フランベルには焦る俺がツボみたいだ。恥ずかしい……けど、よかった。


やっと少しだけ明るい声を出して、フランベルはそっと俺から離れた。


「それで、どうして弟子失格なんて思ったんだ?」


困ったように眉尻を下げてフランベルは頷いた。


「ぼくのせいで、クラスのみんなに迷惑をかけちゃったし……それに、ぼくはこれ以上強くはなれないから、いくら師匠が教えてくれても……もったいなくて」


そんなことを考えていたのか。


年頃の女の子らしい繊細さだな。いつも明るく振る舞う裏で、思い悩んでいたのか。


らしくない。らしくないぞフランベル。


俺はすうっと息を腹にためると、一気にはき出した。


「この……バカ弟子があああああああああああああああああああああああ!」


まさか、こんなセリフを人生で口にすることがあろうとは。


驚いたのか、フランベルは目をまん丸くさせていた。


あっけにとられた彼女に俺は勢いそのまま続ける。


「お前は強さの限界を自分で決められるほど、強いのか!? その剣を極めたと言えるのか!? たった一つの事さえ満足に修めていない人間が、自分の限界を語るなど笑止千万!」


「け、けど……ぼくじゃ無理だよ! 代表で出ても、二人の足を引っ張っちゃうよ」


「出ないことの方が余計に迷惑だ!」


「他に誰か適任がいるよ。ぼくよりも出来る生徒が……」


「他の奴なんて関係ない。だいたい、立候補した時点で俺はフランベルしかいないと思ってる。俺がクリスと戦った甲斐があったって思えたのも、お前がステージに躍り出てきてくれたからなんだ」


クリスとの模擬戦で一番の収穫はフランベル。お前だ!


「あ、あれは……あの時は……平民なのにレオがすごいって思って」


「思ったなら最後まで、すごい俺様についてこい!」


フランベルがその場でブルッと身震いした。


力無く開かれていた彼女の手が、何かを掴もうとするように、ゆっくりと握り込まれる。


「そもそも、お前はどうなんだ? 戦ってみたいと思わないのか? ギリアムクラスに一泡吹かせてみたくないのか!?」


「し、したいよ! 悔しいよ! ぼくだけなら構わない! けど、エミリア先生にまであんなにぐちぐち言って……あいつにお見舞いしてやりたい!」


俺が実験室の片付けをしている間、フランベルはエミリアに付き添われて事情説明に出ていたようだが……そこにも現れたか妖怪蛇人間ギリアムめ。


「ギリアムに何か言われたんだな?」


「ぼくみたいな出来損ないは、学園を辞めた方がいいって……。その方がみんな迷惑しないって……剣技だけなら学園の外でも学べるって……」


俺にいくら突っかかってきてもかまわないが……俺の弟子にそんなことを言いやがったのかギリアム。


この報いは交流戦で受けてもらうぜ。


俺はフランベルを見つめた。


「そうか。我が愛弟子に自主退学を迫るとは許せんな。あいつの言ったことなんか気にするな」


「う、うん……」


まだフランベルは怯えているようだ。


「なあフランベル……俺にすべてをゆだねてくれるか?」


真剣にフランベルに問う。


少しおどおどしてから、フランベルはゆっくりうなずいた。


「レオのこと……信じるよ」


「おいおい、そこは師匠だろ?」


軽口っぽく言うと、フランベルはほっしたような笑みを浮かべた。


「う、うん! 師匠! どうか、こんなにも弱いぼくだけど、教えてください!」


フランベルはスッと頭を下げた。


彼女から覚悟を感じる。


その時、予鈴が鳴った。


「今日は特訓のあとも、たっぷり個人練習をしてやるからな」


「ほ、本当かい師匠!?」


やっといつものフランベルに戻ってくれた。一安心だ。


「ああ。お前がほしがってたものを、全部与える。俺ができるのはそこまでだ。そこから先、受け取ったものをどうするかは、お前のがんばりにかかってるからな」


再び、アイスブルーの瞳にじわっと涙が浮かんだ。


「ぼく次第か……がんばるよ師匠! 弟子として師匠に恥じない努力をするよ!」


よし。その意気だフランベル。



お前のすべてを解ったなんて言うつもりはサラサラ無いけど、お前らしさを活かす方法で、交流戦は勝負と行こうぜ!

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