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22.王都でデート

プリシラのお気に入りの服屋に入ってから、かれこれ一時間ほど彼女のファッションショーの寸評をさせられた。


「これ似合う? このワンピ超良くない?」


「ピンクはちょっと派手すぎないか? もう少し淡い色もあるぞ」


「あたしはこれが気に入ってるの! こういうときは素直に褒めるんだよ? だからレオっちは童貞臭が抜けないんだよねー」


「う、うるせぇ! その話はするな! か、買うならとっとと買ってくれ!」


「もうちょっと付き合ってくれてもいいじゃんケチー! あっ! こっちのキャミソール超かわいい!」


次々ととっかえひっかえ飽きないもんだな。


けどまあ、プリシラが元気で楽しそうでなによりだ。


プリシラが選ぶ服は、ビビッドなピンクやヒョウ柄で、デザインも肌の露出度が気持ち高めなものが多い。


つうか、おへそとか普通に出してる服もあるんだが……。

腰のラインもメリハリがあって、プリシラは少しお尻が大きめだ。


俺の視線にめざとく気付いて、プリシラがにんまり笑った。


「あー。ちょっとお尻ばっかり見ないでよ。大きいの気にしてるんだから」


「別に意識して見てたわけじゃないぞ!」


「まったまたぁ。しょうがないなぁ。けど、下着だけじゃなくて中身にも興味をもった方が、生物としては健全だから許してあ・げ・る」


ピンクのキャミソールにデニムのホットパンツ姿でプリシラは小悪魔っぽく笑った。


このコーディネイト一つとっても、真面目なクリスが着たら笑えるくらい似合わないと想像がつく。

が、プリシラはそんな個性的な服を着こなした。


彼女は自分に似合うものが何か、ちゃんと解っているんだな。


自分の事をきちんと把握できている……か。


クリスは天才で、フランベルには一芸がある。

プリシラにはそういった「強み」がない。


だから「負けてもいい」って、諦め気味なんだ。


いやいや、俺がまだプリシラの良い部分を見られてないだけに違い無い!


必ず何かあるはずだ。


教える俺が弱気になってどうするんだよまったく。


「はい、じゃあこれ全部よろしくねー!」


俺が自省しているうちに、プリシラは試着した中から気に入ったものを見繕って、抱えるほどの服を購入し、俺を荷物持ち係に任命した。



町の目抜き通りを歩きながら、鼻歌交じりのプリシラはすっかり上機嫌だ。


「やっぱりレオっちに来てもらってよかった。マジ助かるし」


「最初から俺に荷物持ちをさせるつもりだったんだな」


「それもあるけどぉ……あ! そうだ、レオっち。どこか疲れてるところとか、凝りまくって、かたぁくなってるとこない? あたしマッサージが得意だから、ほぐしてあげよっかな」


「なんだやぶからぼうに」


「結構評判いいんだよ? みんなスッキリして満足してお金払ってくれるし」


「金取るのかよ!?」


小悪魔っぽくプリシラは笑った。


「あったりまえじゃん。回復魔法を使いながらのマッサージだし。ねえねえレオっちどう? 三十分、8000ギルカでいいよ? 普通は10000ギルカのところを、特別にコーチ価格でオマケしてあげる♪」


「高いから!」


そこそこの大きさのパンが一つ100ギルカほどで買えるので、パンにして80個分だ。


ちなみに、10000ギルカ紙幣の肖像が、二年前に国王から勇者に変わったんだけど、正直改悪だと思う。


プリシラはほっぺたを膨らませた。


「しょーがないなー。うーん、ランチにはまだちょっと早いし……そーだ! カラオケにしよっか! お店はこっちが近道だし」


プリシラに手を引かれて、目抜き通りから一つ入った裏路地に俺たちは足を踏み入れた。


明るい大通りの雰囲気が、がらりと変わる。


人通りも無く薄暗い。


「こんな所を通るのか?」


「だーいじょぶじょぶ! エステリオの制服着てるんだから、ガラの悪い連中なんて絡んでこないって。それともレオっちビビってんの?」


「ビビってるわけないだろ。大人を舐めるな」


俺の事はおいておいて、確かにプリシラの言う通りだった。


たとえ入試成績最下位のプリシラでも、よっぽど不意を突かれない限り、平民を圧倒するくらい簡単だ。


裏路地を進むと、突然、甲高い鳴き声が路地の奥から響いてきた。


「キャウンキャウンキャウン!」


犬の鳴き声だ。


苦しそうで息が詰まるような、悲痛な叫びに思えた。


プリシラの表情が険しくなる。


「レオっちは待ってて」


いきなり彼女は駆け出した。待てと言われて待つわけにもいかない。


細い路地を分け入るように、プリシラは裏通りのさらに奥へと進む。

行く先は犬の鳴き声のする方だ。



路地を進んだ先――ガラの悪そうな男たちが、一匹の犬を囲んでいた。

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