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18.春の祭り 後の祭り

クリスもプリシラもフランベルも、三人ともブラをしておらず、パンツ姿だ。

どうやらすでに、犯行があった後らしい。


クリスはピンクのフリル付き。

プリシラはヒョウ柄のTバック。

フランベルは黒。


三者三様だけど、プリシラとフランベルのそれはどうなんだ!?


「レオの……変態……う、訴えてやる」


「ちょっとガチでやばいって、マジありえないから」


「ぼ、ぼくも一応女の子なんだけど!」


三人の視線が痛い。慌てて背を向けたが、手遅れだ。

がっつり見てしまった。


別室から断続的に、助けを求める少女たちの悲鳴が続いていた。

シアンが俺の手首を握る。


「行くぞ平民」


「お、おい! 引っ張るなって」


引きずられるように廊下を走る。すごく元気な大型犬の散歩をしている気分だ。


俺の背後から三人の少女の抗議が飛んでくる。


「なんで貴方がギリアムクラスの生徒と一緒にいるのよ!?」


「マジなんなの! ちゃんと説明しないと、エミリアせんせーに言いつけるよレオっち!」


「こうなったらレオも脱いで、ぼくらにすべてをさらけ出してよ。それでこそ対等だ!」


あー。後が恐い。

が、今はあえて聞かなかったことにしよう。


これ以上惨劇を広めるわけにはいかない。


次の部屋にシアンが飛び込む。


そこは女性教員用の更衣室だった。

中には……エミリアの姿があった。


どうしてこうも知り合いとばかり遭遇するんだ!

なんて日だよ!


「あ、あの……レオさんがどうして?」


声を震えさせ、眼鏡の奥の瞳を潤ませるエミリア。今まさに、彼女はブラを外したところだった。


ダブリンの狙いは、学内屈指の大きさを誇るエミリアの、ライムグリーンのシンプルなデザインのそれだろう。


俺たちが乱入しても、やつは逃げなかった。気配を感じる。


「あの……あのぅ……」


状況が飲み込めず、エミリアは胸を隠すことも忘れて棒立ちだ。


シアンが息を呑む。彼女も「やつ」の気配には気付いているらしい。


「なんだというのだ。いることはわかるが、動きが見えぬッ!?」


「言い忘れてたんだが、ダブリンの中でもこいつはメタルタイプだ」


「それを早く言え!」


メタルタイプ。それは突然変異で生まれる個体である。


生命力こそ低いのだが、その表皮は金属のように硬く、スピードは目にもとまらぬほど速い。


さらに理論魔法さえも無効化する、やっかいなレアモンスターなのである。


ダブリンはブラをいくつもその身体に重ね着して、壁と壁の間を反射するように跳び回った。


エミリアはその存在に気付いてもおらず、シアンも気配を探るのがやっとで、やつの動きに反応できていない。


「くっ……捉えきれぬとは不覚だ」


俺は箒を構えながら、エミリアに言う。


「エミリア! そのブラを俺にくれ!」


ようやく正気に戻って、彼女は自分の胸を腕で隠す。


「え、えええええ!? ど、どうして……ですか?」


「いいから早く! 事情はあとで説明するから!」


覚悟を決めて俺は更衣室に踏み込むと、エミリアの手からブラを半ば強奪した。


「やめてください! 恥ずかしいです! わたしのって大きいから……」


かぶれるサイズだな。

そうか……これが欲しかったのかダブリンよ!


俺はエミリアのブラを空中に投げ放った。


「さあ! これが欲しいんだろう! 取って見ろ!」


瞬間、ダブリンが矢のようにエミリアのブラに飛び込んできた。

それを俺は箒で――一閃する。


手応えあり!!


飛び込んでくる勢いにカウンター気味で打ち込んだ箒の一撃で、メタルダブリンは弾けるように消滅した。


モンスターも様々だが、プリン族はもともと魔法生物だ。

倒せば蒸発して欠片も残らない。


そして、メタルダブリンが倒されたことで、虚空に突然、女性用下着が大量に舞った。


はらはらと落ちる桜の花吹雪……ならぬ、カラフルなブラ吹雪の中心に、俺は立ち続ける。


ある意味絶景だ。壮観だ。


偶然、落ちてきたエミリアのブラが帽子のようにすっぽりと俺の頭を覆い、全身にブラが巻き付いた状態になった。


そこに着替えたばかりでノーブラ状態とおぼしき、三人の少女がやってくる。


「レオ! 申し開きがあるなら、裁判所で聞くわ!」


「うわぁ……体中ブラまみれで、かぶってるとかマジ引くんだけどぉ」


「ぼくは失望したよレオ。女性じゃなくて、女性の下着にしか興奮できないなんて、そんなのは不健全だ!」


「待ってくれ! これには訳があるんだ!」


エミリアがぽつりと呟いた。


「レオさん……信じてたのに……」


「いやいやいや。なあシアン。お前から説明してくれ!」


事情を知るシアンはといえば、俺の顔をのぞき込むようにした。


「なんだ今の技は……貴様、何者だ?」


どうやらダブリンを倒した一閃のことが気になるらしい。


「え? ええと、技って言われてもなんのことやら」


「恐るべき動きの切れ。初動の速さ。そして威力ではないか」


「ま、まぐれだって。ダブリンをエミリアのブラで釣って、向こうが突っ込んでくる状況を作ってから、箒でぶっ叩いたんだ。偶然、それがうまく行った」


メタル系に有効なのは、いわゆる「必殺の一撃」という奴だ。


たとえ平民だったとしても、希に偶然、それが出ることはある。


「にわかには信じられぬが……まあ良い。これは返してもらう」


シアンは白いブラを俺の肩のあたりからそっと回収すると、難しい顔をしたまま更衣室から出て行った。



取り残された俺が、最大の被害者であるエミリアと、三人の女子生徒たちの誤解を解くのに土下座ったのは、このすぐあとの事である。

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