表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/211

14.魔法武器入門

翌日、交流戦の日程と対戦クラスが発表された。


予想通りエミリアクラスは、ギリアムクラスとのマッチングだ。


あれだけ煽ってきたギリアムが、みすみす俺たちを見過ごすわけがない。


対戦クラスの決定について、なんらかの調整が入ったのだろうが、確たる証拠もなく学園に抗議をしたところでどうにもならない。


今さら悪い方に考えるよりも、前向きになろう。


春の交流戦はトーナメント形式や総当たり戦ではなく、一戦限り。


連戦を考慮しなくて良いのは、選手層が薄い俺たちにはありがたい。


そんな交流戦は四月末から五月初頭にかけて行われる。

訓練期間は二十日間ほどか。時間はそう多くない。


特訓にはエミリアにも付き添ってもらうことにした。

というかエミリアが特訓をして、俺が補佐するという“てい”にしないと、何かとまずいのだ。


発表のあった日の放課後から、さっそく俺はエミリアクラスのコーチについた。


まず、最初にすることは得物選びだ。

授業でやるよりも早く決めてしまおう。


俺はエミリアと代表三名を引き連れて、エステリオが誇る武器用具室に向かった。


武器の管理は魔法工学の教員がしているのだが、時々、頼まれて用具室の整理や清掃をするので、用具室の勝手は心得ている。


用具室に入ると、手入れをされた武器がずらっと並んで俺たちを出迎えた。


剣や槍、斧に弓、銃なんてものまで用意されている。

剣一つとっても、片手剣や両手剣。曲刀や短刀など種類は様々だった。


これらの武器は、平民が扱う武器とは根本的に違うものである。


すべて魔法の杖なのだ。


たとえば剣の場合「剣の心得のある生徒が剣技を生かすために、魔法の杖を剣の形に模したもの」といった感じになるだろう。


クリスの計算尺も魔法の杖の一種だが、魔法式の演算機能の拡張に特化した「形」が計算尺だった。


剣にせよ槍にせよ、その形状によって魔法力に指向性を与えることができる「形」。


それが魔法武器である。


道具としての形状を明確に与えることで、汎用性を失う代わりにその特性を伸ばし、より強力であったり、少ない魔法力の消費で魔法的な力を行使できるのだ。


例えば、剣であれば理論魔法で切断の式を構築しなくても、魔法力を込めて振るえば対象を「斬る」ことができる。


当然、平民が振るっても鈍器にしかならない。

魔法使いが手にして初めて、これらの武器はその性能を発揮できるのである。


さらに付け加えると、武器を手にして魔法力を込めるだけで身体能力が向上し、ダメージを軽減する「目に見えない鎧」のような魔法的効果が得られた。


戦闘実技Fクラスの魔法使いでも、魔法武器を装備していれば、良く訓練された平民の戦士を圧倒するのは簡単だ。


「あ、あたし……武器なんて使ったことないし。つうか危ないじゃん」


用具室に入った途端、プリシラの顔が青ざめた。うーん、女の子にはわからないのかなぁ。


このずらっと並んだ武器に興奮を覚えないなんて。

もったいない!


「私に武器は必要ないわ。使えないこともないけど、特技を生かすべきでしょ?」


クリスの言い分には一理ある。

彼女の長所を生かすなら余計なことはしない方がいい。


と、誰もが考えるだろう。


「そうは言うけど、扱いやすいショートソードくらいは持っておいてもいいんじゃないか?」


俺は軽くて取り回しの良さそうなショートソードを見繕った。


実は用具室にある武器には、品質にばらつきがある。


大半は学園が要求する性能を満たしているのだが、時々「当たり」が紛れ込んでいるのだ。


「ほら。これなんてぴったりだ。持ってみろって」


「か、勝手に決めないでよ!」


俺は鞘から抜いて刀身を確認する。


一見すると普通のショートソードだが、刃が付けられていないのも魔法武器の特徴だった。

刀身は鏡のように磨き上げられ、曇り一つ無い。


「気に入らないのか? 鞘も落ち着いた雰囲気の色だし、装飾だってシンプルでお前に似合うと思ったんだけどな」


クリスの頬が少しだけ赤らむ。


「え、ええと……レオがそういうなら、考えてあげないこともないわ」


鞘に納めたショートソードを手渡すと、クリスは抜き払って刀身をまじまじと見つめた。


「武器らしい武器って、野蛮で好きじゃないんだけど……この子の刀身は綺麗ね。いいわ。使ってあげる」


気に入ったようでなによりだ。


「ちょっとー! あたしにも選んでよ! クリスばっかりずるいし」


俺の右腕に抱きつくようにして、プリシラが密着してきた。

ちょっとくっつきすぎだろ。


その……俺の二の腕に当たってるんだが……胸が。


エミリアが慌てて声をあげる。


「ぷ、プリシラさん! レオさんが困ってますから」


「えー。困らせるようなことなんてしてないけどー?」


白々しく棒読みな口振りで、プリシラは小悪魔のように笑う。


「っていうかー。女の子の胸を触っておいて、これくらいで恥ずかしがるとか、レオってドーテーなんじゃない?」


瞬間――エミリアの顔が真っ赤になった。おいおい先生しっかりしてくれ。

クリスがショートソードを制服の腰のベルトに固定してから、首を傾げさせる。


「ドーテーというのはなにかしら?」



よりにもよってそこに食いつくのかよクリス!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ