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魔法と魔人と王女様  作者: 月立淳水
第三部 魔法と魔人と原子の鉄槌
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第七章 眠り姫と銃口

■第七章 眠り姫と銃口


 間もなく地球だ。

 懐かしい地球。

 何度も飛び出しては、必ず帰ってきた地球。


 一人も欠けることなく帰ってきた。

 ……だけど、一人として、出る前と同じままでいられた人はいなかった。


 僕は、セレーナに対する疑いを晴らせなかった。

 あの後、せめて一度でも、面と向かって話ができていたら。

 その前に、彼女は神経銃の一撃で深い眠りに落ちてしまった。


 新連合、つまり母さんに対する疑いも、晴らせなかった。

 それこそが目的だったのに。


 結局僕は、当初の目的を何一つ果たすことができないまま、あきらめた。旅の途中で二人に深い傷を負わせただけ。


 もちろん、僕自身の心にも。


 セレーナはまだ深い眠りの中にいる。


 夢を見ているだろうか。

 どんな夢を見ているだろうか。


 悪夢でないことを祈りたい。

 悪夢のような陰謀と暴力を現実で味わったのだから、せめて夢の中では幸せで。


 何度考えても後悔しかない。

 僕が馬鹿なことを言いださなければ。

 有耶無耶の陰謀は有耶無耶のまま、宇宙の彼方の知らない国同士のいがみ合いのままで済んだんだ。


 僕はたまたまその一つの国の王女様の知り合いになれた、それだけの関係だったのに。

 僕が余計なことをしてしまったばかりに。

 その大切な王女様を傷つけてしまった。


 帰ったら、いくつかのことを確認しよう。

 もう、陰謀ごっこは終わり。

 僕が確認すべきことを確認する。


 僕の母さんが、新連合が、つまらない陰謀に加担していないこと。

 エミリア王家の勝手な暴走にすぎないこと。

 それで、新連合市民としての僕が知ることはすべてだ。


 それで納得できたら。

 ……僕は、もう、手を引こう。


 僕の浅知恵による行動はセレーナを傷つけるだけだと分かったから。

 セレーナのことを大切な友達だと思うからこそ、僕はこの辺で手を引かなくちゃならない。


 ああ、これはすべて、ラウリの言ったことだった。

 ラウリの言うことはすべて正しかった。

 そのラウリさえ、僕は深く傷つけてしまった。


 だから、陰謀ごっこは終わり。

 僕はもう誰も傷つけない、普通の高校生に戻る。

 この物語はそれでおしまい。


 船内にアラームが鳴る。

 地球に到達する最後のジャンプの知らせ。


 セレーナを見守れる位置にある簡易座席に着く。ベルトを確認する。

 それから間もなく、船は大砲の加速で放り出された。

 船内に無重力が戻る。


 モニターに、青い故郷が映る。地球だ。

 僕の旅の本当の終着点だ。


 そう言えば、地球のこめかみに銃口を突き付けている真の究極兵器なんてものもあったな。

 だけど、そんなことに関わるのも、おしまい。

 このことは永久に僕の心の中から出ることはなく。僕がいつかこの世を去る時に、ひとかけらのエントロピーとなって宇宙に散逸していくだろう。


 地球に残った最後の仕事。

 それだけを、やり遂げよう。

 それはもう目の前だ。


 ドルフィン号はそのメイン操縦席の主を失ったまま、地球へと進む。


 まだ、セレーナは目覚めない。


●●● 魔法と魔人と王女様 第三部 魔法と魔人と原子の鉄槌 完 ●●●

★第三部あとがき★


 とうとう陰謀の本体が見えてきました。


 エミリアの狡猾な陰謀は真実なのか?


 地球新連合はどこまで関わっているのか?


 ロックウェルはどう出るのか?


 宇宙を覆う陰謀と謎。


 そして、主人公ジュンイチの悪魔のような力も。


 その自らの力に押しつぶされてしまったジュンイチ、そして、眠りつづけるセレーナ。


 第四部は、そんな主人公不在の状況から始まります。


 彼らを救うのは、一体誰なのか? きっと、あの人なのです。


 第三部はこれまで。お付き合いいただきありがとうございました。

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