第三章 スプリングフェスティバル(4)
お祭りの終了を告げる五発の花火が鳴り響き、あちらこちらの屋台や企画もののテントから、歓声や口笛が上がった。
僕らのクラスの屋台では、同時に三品を扱うという離れ業にもかかわらずすべてが順調で、何も問題を起こさず閉店を迎えていた。
そして、それと同時に、信じられないようなことが起こっていた。
まず、プリン。
なんと、用意した百個が、売り切れていた。
最初の客足から言えば信じられないことだが、特に、終盤に二種十個ずつ注文した客が一人いたことがその売り上げに大きく貢献していた。
もちろんその帳簿に誰が買って行ったかなんてことは書かれていないけれど、浦野が両手に大きなビニール袋を提げていることは事実だ。
結局プリン屋は浦野の私物として始まり浦野の私物として終わったということなのだろうけれど、そこはあまり深く詮索しないでおく。
クレープはかなり早い時間に材料が切れ、追加の買出しをしても終了時刻までを補うことは出来なかった。売り上げ個数は三百何十個というとんでもない記録をたたき出していた。
そんなわけで、トップはクレープで決まりだろうと思っていたから、もうひとつの事実に僕らはびっくり仰天する。
毛利たちのハンドパスタは、個数で四百を超えていた。
と言うのが、どうも彼らは一計を案じたらしく、まずハンドパスタを六分の一くらいに小さく作り、品名を『ミニハンドパスタ』に。看板にはそれが六個乗った皿の絵を。大きく『六個でフェスタチケット五枚』、小さく『一個一チケット』と書き添えた。
そう、一食分売れると六個の売り上げになるようにしていたのだ。
汚いぞ、という抗議にも、最初からこの看板を掲げて出していたのだから最初に文句を言わないのなら認めたってことだ、と譲らない毛利。その他の非難にもひるむことなく応じるところを見ると、おそらく看板の件も含めて入れ知恵しているのはマービンなのだろう。彼の知恵がバックについているとなると、これは論破するのはなかなか骨が折れそうだ。
ひとまず、勝利を認めるのと引き換えに毛利を祝福の袋叩きにするということで収まった。




