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魔法と魔人と王女様  作者: 月立淳水
幕間1
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おまけ:科学技術

幕間のおまけコンテンツ、話中世界の科学技術についてです。多少のネタバレを含みます。興味ない方は次話に進んでください。

■カノン


 作品舞台を作った基礎的発明。超光速航行技術。大砲カノンのように、宇宙船を数光年先に撃ち出す装置。


 カノンスペースクロニクルの基礎技術です。この技術が開発されたことにより宇宙に拡がって行った人類社会をテーマにしています。


 カノン砲身の「向き」に一定距離をゼロ時間で飛ばす技術。


 砲身内で加速された宇宙船の持つ速度の方位に向けて超光速で一定距離を飛ぶ、と言うものです。原理的には、一定速度を得た宇宙船を虚数時間に反転させ、虚数時間内を等速直線運動させることで実時間を経過させずに遠距離まで到達できるというもの。宇宙船内の実時間も経過しませんので、乗っている人にとっても一瞬に感じます。


 制御としては、加速終了時の宇宙船の速度が非常に重要になってきます。速度が大きければ大きいほど、相対的に方位の精度は高くなるからです。そのために、非常に長大な砲身を持ち、宇宙船を非常に速い速度まで加速するとともに砲身内を走る間に方位の微調整をする必要があります。


 同じ出力の加速器でも小型船の方がより大きな加速度を出せ、微調整もしやすいため、最終速度を上げ、精度よく『着弾』させることができます。


 それでも精度には限界があるため、遠くの星系に行くにはいくつものカノンを中継地として使わなければなりません。そのとき、次のカノン基地に通常のロケット噴射でたどり着く時間が実質上の『旅行時間』になるため、精度よく着弾できる方が次の中継地への到着が早くなり、結果として、全体の航行速度は上がることになります。


 これ以上は重要なネタバレを含むため書けませんが、千年の宇宙時代の基礎を、いろいろな意味で築いた重要な技術です。


 カノンスペースクロニクルの第一作でも重要な役割を果たすカノン。


 この第一作を読んだあとに本作に手を付けた人は、おそらく、本作第一部を読み終えたときに大きな違和感を抱えるはずです。


 その違和感こそが、このお話の結末に向けて、重要な橋渡し役となっていきます。


 あまり書きすぎるとネタバレするので、この辺で。



■マジック


 巨視的反重力慣性帆走(Macro-Anti-Gravity Inertial Career)の略。


 ある方法でパワーを入れることで反重力の泡を発生させる不思議な鉱石(のちにマジック鉱と命名される)、これを使った反重力航行技術です。


 作中冒頭でも説明されますが、対象を取り囲むように複数の反重力デバイス(マジックデバイス)を並べ、個々の鉱石が発生させる反重力の泡の位相がうまくずれるようにデバイスのON/OFFを繰り返すことで、巨視的に重力感受性に対する傾きを作ります。すると、重力ポテンシャルに対する応答が変わり、重力ポテンシャルにまっすぐではない方向の加速度を得ることができます。


 イメージ的には、スマートアレイアンテナ技術です。あれと同じことを重力でやっちゃいます。


 感受性の傾きは自在に変えられるので、帆船が風に対する帆の角度を調整して自由に航行するように、重力の風の中を航行できます。


 ON/OFFの制御タイミングを変えれば地表近くのような重力の強い場所でもホバリングできます。


 さて、この推進システムを生むための重要な鉱石「マジック鉱」こそ、惑星エミリアでしか産出されないがために宇宙国際政治に問題を引き起こしている真犯人です。


 本作タイトルの「魔法」はまさにこれを指しています。


 最終的には、ただ原料資源が国際関係を難しくているというだけの存在ではなく、この技術そのものが持つ可能性をも追い求めることになるわけですが、これも重大なネタバレになるので秘密。


 それが、タイトルの「魔法」が持つもう一つの意味だったりします。


 カノンスペースクロニクルの第六作「魔法と魔人と王女様:Seventh」(公開未定@2015年6月)ではこの反応鉱石を巡る陰謀戦が展開されますが、第五作「マリアナの女神と補給兵」を第六作の前にお読みになることをお勧めします。



■ジーニー


 幾何ニューロン式知能機械(GEometrically Neuronized Intelligence Equipment)、いわゆる人工知能です。


 人間の脳を模して、ニューロンの幾何学的配置そのものが機能を実現している人工知能。


 加えて、ジーニー同士が高度に暗号化されたネットワークでお互いにつながり、論理記憶を共有しています。


 この論理記憶に支えられた論理推論と、あらゆる入力に対するパターンマッチングをすることで行われる直感推論の二つの機能を持ちます。


 大変高価なシステムで、それこそエミリア貴族クラスのお金持ちでないと個人で持つということはほぼありえません。


 タイトルに含まれる「魔人」は、このジーニーのことを指します。願いをかなえてくれるランプの魔人。


 ジーニーには、ある秘密があるのですが、ネタバレなのでここには書けません。


 シリーズ第三作「ポリティクス」で結構ネタバレしていますが、そちらは先に読まないほうが良いと思います。


 また、真のネタバレになるカノンスペースクロニクルの第五作「マリアナの女神と補給兵」も存在しますが、そちらも先に読まないほうがいいかも。


 ジーニーの真の姿を知る旅が、主人公たちの目的地を知る旅にもなっていきます。



■兵器


●宇宙艦隊


 宇宙戦艦を中心とした宇宙舟艇による艦隊。


 決戦兵器である宇宙戦艦を運用するための運用単位です。通常は、一つの艦隊(行動単位)は、宇宙戦艦6、護衛艦18、補給艦等の補助舟艇が36で構成されます。


 本来一惑星を制圧するのに十分な戦力として一行動単位が作られましたが、いろいろな国がお互いに宇宙艦隊を配備して防衛するようになると、艦隊決戦には複数の行動単位が参加するようになります。


 一行動単位の維持にも莫大な費用が掛かるため、単一惑星国家で完全な行動単位で配備できている例はほぼありません。しかし、半行動単位があれば、一行動単位程度による侵略には十分対処できます。カノン基地制圧が宇宙戦争の解決には必須ですが、通常、一つの惑星には二基以上のカノン基地があるため、いずれかを徹底防衛すると決めれば、戦艦が三隻もあれば十分です。


 作中、艦隊決戦はほとんど起こりませんが、千年紀の初期から中期には艦隊を用いた宇宙戦争が多発する時代がありました。


●宇宙戦艦


 宇宙艦隊の中心となる宇宙舟艇。


 後述『アタック・カノン』を主兵装とし、一撃でいかなる宇宙艦であろうと葬れる火力を持っています。


 一方、アタック・カノンが相手ではいかに防御力を上げても一撃で沈んでしまうことには変わりがないため、装甲は小火砲やミサイルの破片を防御できる程度の最低限のもの、それよりも、ステルス性能を極端に高めてあります。


 レーダーの反射を最低限に抑えるための吸収素材と、反射を起こしにくいつるりとした外殻を持つことはもちろん、重要な探知源となる排熱についても、前方への熱放射が無いよう徹底的に隠されています。


 推進は化学燃焼による化学推進。通常行動時はサイドスラスターを使った方向転換と尾部のメインスラスターによる加速を行います。一方、戦闘行動中は前方に排熱してしまうサイドスラスターは使えません。戦闘行動中の方向転換用にモーメンタムホイールも装備していて、戦闘行動中はホイールと尾部メインスラスターだけで機動します。


 前方への熱放射低減に注力しているため、逆に後方には熱放射源が集中し、側面や背面はステルス性の弱点となっています。艦隊決戦で相手の裏をかいて側面・背面奇襲ができれば、熱放射により相手の位置を特定してあっという間にアタック・カノンで撃ち崩せます。つまり、奇襲成功でほぼ勝利です。


 宇宙戦艦になぜマジック推進を使わないのか?については、作中で語られるため割愛。


●護衛艦


 戦艦の護衛を目的とした宇宙舟艇。


 アタック・カノンを搭載しない戦闘艦です。


 主な兵装は防空レーザーとほんの少しの対艦ミサイルのみ。


 ひたすら相手のミサイルやプローブを焼くのが目的の艦です。


●アタック・カノン


 カノン技術を応用した攻撃兵器。


 超光速で飛んで行った弾丸はいかなる装甲もすりぬけ、着弾点のものを内部から粉々に粉砕します。


 クリーンヒットすればどのような防御も無効となるため、これを搭載した戦艦を決戦兵器たらしめています。


 ただ、お互いに強力なステルスを効かせた中で命中させるのは極めて困難であるため、実際の戦争では命中することはまれなようです。


 命中させた場合は相手の戦力を削るだけでなく、「そちら方のステルスはここまで丸裸にしてやったぞ」という強力なメッセージにもなるため、小規模の艦隊戦では命中一発で戦闘終了となることもあります。


 アタック・カノンを装備した舟艇を『宇宙戦艦』と定義します。


 超光速飛行中は外殻の干渉を受けないため、戦艦前方には開口部は不要。砲身は宇宙戦艦の本体内に埋め込まれた状態です。宇宙戦艦は長軸三百メートルほどですが、その内部の二百メートルほどをアタック・カノンが貫いています。


 命中精度向上のためにアタック・カノンの長大化が試みられたこともありますが、宇宙戦艦が大型化するとそれを発射できる星間カノンが限られてしまうために、このサイズに落ち着きました。宇宙戦艦の全長三百メートルは、一般の大型貨物船の最大サイズよりやや小さい程度を基準にしています。


 星間戦争を支える基礎兵器、この兵器の誕生にもある種の秘密があり、作中でそれが明かされていきます。


●戦闘艇


 最大でも全長三十メートル程度の小型の戦闘用宇宙船。


 宇宙戦艦の大半のスペースはアタック・カノンが占めているため、空きスペースは大きな弾薬庫、格納庫となっています。


 カノン弾やミサイルをそういったスペースに積み込みますが、ある頃から小型の戦闘艇も積むようになりました。


 ミサイル迎撃を目的とした防空レーザーにも耐えられる程々の装甲を持ち、相手艦隊に一気に密接してミサイルを放ち離脱するという戦法をとります。


 あくまで奇襲の一種で、帰投時に背後から攻撃を受けやすく離発着時はステルス性の弱点となるなど、失敗時のリスクの高い攻撃手段です。


 とは言え、陽動や囮などの様々な戦術トリック、小型船の拿捕、停戦交渉時の移動手段などに利用可能であるため、最低数隻は備えるようです。


●プローブ


 戦艦やその他の補助艦とレーザーリンクで結ばれた、索敵、通信用の子機。


 ステルス性を徹底的に突き詰めると、自らが出すレーダー波や通信波も重要な探知元となってしまいます。


 そのため子機=プローブを艦から遠く離れたところに浮かべ、周りに漏れないレーザーリンクで結んで索敵と通信の用に充てます。


 パワーユニットも含むため大きさは一メートル、重さは二百キログラムを超えます。戦艦の格納庫と補給艦に積み込まれて戦場に運ばれ、戦端が開かれる前に展開されます。


 プローブがレーダー波を出すと即座に相手に位置が割れてしまうため、敵防空レーザーで焼かれる運命にあります。よって、大量のプローブを浮かべて次々に索敵波を出していく形になります。


 小規模艦隊戦では、相手のプローブを一つ残らず焼き尽くすことで勝負がつくこともあります。


●防空レーザー


 ミサイルの迎撃を主な目的としたレーザー兵器。


 単体で出力を上げすぎると発射口の発熱でステルス性を損なうため、小出力の複数レーザーを一点に集中照射することで破壊効果を得ます。


 全艦艇の照準システムをリンクし、一つのターゲットに全艦艇からの防空レーザーを集中させることで瞬時にターゲットを破壊します。レーザー一つ一つのパワーは弱いため味方を誤射しても影響が無い、というのも焦点集中照射方式の利点です。


 一行動単位の艦隊の戦艦と護衛艦の防空レーザーがすべて使用可能な場合、相手がミサイルであれば0.1秒で破壊できるため、ミサイル飽和攻撃もほぼ無効となってしまいます。


●対艦ミサイル


 長距離自律誘導ミサイル。


 至近距離まで近づきステルスの壁を破って敵艦に自動誘導されるミサイルは当初は強力な兵器でしたが、それに対抗するために多数の護衛艦による強力な防空レーザーシステムが作られました。よって、ミサイルはあまり有効な直接攻撃手段とはなりません。


 戦端が開かれるよりはるかに早く無誘導でミサイルを放り出しておき、時限式あるいはレーザーリンクで起動して敵艦隊の目の前から発射するという奇襲はよくあるミサイルの利用法です。が、あくまで奇襲。


 また、迎撃されることを前提として、あえて大量に迎撃させデブリを撒き散らし視界を塞ぐというようなことにも使われます。プローブを全部焼かれてしまった後の悪あがきといった微妙な使われ方も。


 別の方法で勝負を決するためのトリックとしていろいろな使い方ができるため、直接の撃破を目的としなくても艦隊には確実に積み込まれる兵器の一つです。



■個人兵装


●神経銃


 ターゲット領域に選択的に神経軸索を揺さぶるパターンの電磁波形を発生させる武器。末端に受けた場合でも強力な波形は脳まで達し、昏倒します。出力を絞った場合は、当たった場所近辺の痛みと麻痺くらいの影響。


 銃口の向きと奥行きを精密に調整しないと命中しないため、本来は結構扱いの難しい武器です。


 オートマチックで銃口先の生体に自動でロックオンするシステムが開発されてからは誰でも扱える武器になりました。一方で、熟練者であれば、マニュアルで奥行きを調整することで、手前の味方を通過(無視)して奥の敵を撃つ、といったこともできます。


●熱針銃


 特殊素材の「針」を超高速回転させ撃ち出す武器。


 着弾と同時に運動エネルギーと熱エネルギーが解放されるのに加え、特殊素材が反応を起こすことで非常に大きな熱量を発します。


 対人武装としては神経銃がほぼすべての用途に利用可能ですが、物理的な破壊には向かないため、特に周囲への影響を最小限に抑えた破壊と貫通の用途に作られました。拠点占拠などの作戦において、頑丈な扉やバリケードを破る目的で使われます。


 のですが、作中では脅しの道具としてしか登場していません。その圧倒的な破壊力は脅しの道具として十分ではありますが、実際に人間を相手に使用する意味はあまりないでしょうね。


●アンチスキャン


 武器ではありませんが、公共施設から個人宅の玄関までいろいろな場所に仕掛けられているIDスキャンを逃れるためのIDケース。


 ID携帯が義務付けられている国では当然違法です。



■その他の技術


●ID


 いわゆる身分証。また、共通通貨クレジットの余力情報もIDで管理されています。


 形状は分厚いカードのイメージ。表示窓に本人情報やクレジット余力を表示することもできます。


 特定の地域を除いて宇宙で広く使われている共通身分証です。


●汎惑星ネットワーク


 インターネットみたいなもの。惑星まるごとをカバーしたネットワーク。


 カノンの登場により衛星打ち上げコストが格安となったため、衛星による低軌道からの無線ネットワークが中心になります。これを地上の有線ネットワークがバックアップし、強固なネットワークを実現します。


 衛星軌道からのカバーなので、宇宙船を低軌道まで下ろせば宇宙船からもアクセスできます。


●星間通信


 異なる星系の間を繋ぐ通信。


 電子クラスターを変調して通信用カノンで撃ち出すことで情報を伝送します。


 古い時代は毎秒数キロビットが限界でしたが、電子クラスター変調技術と検出器の干渉除去技術の発達で通信カノン一基で毎秒数ギガビットが可能になっています。


 また、電子クラスターの凝集技術も発達し、同じ星系間に数百の通信カノンを併設できるようになって、星間通信の容量は飛躍的に向上しました。


 ただそれでも、星間通信の通信料は高額で、庶民が気楽に使うようなものではありません。



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