おまけ:人物紹介(5)(四人の科学者)
幕間のおまけコンテンツ、人物紹介その5、四人の科学者たちです。多少のネタバレを含みます。興味ない方は次話に進んでください。
■アンドリュー・アップルヤード
歴史学者。ジュンイチたちの旅の最初期から彼らをサポートする役割。研究室から一歩も動かずあらゆる謎解きのヒントを主人公たちに与えていきます。
というイメージからは程遠いのが実際の彼。ジュンイチの持ち込む証拠を得るたびに右往左往しながら次の謎解きのヒントを導き出す、実のところ泥臭い学者。現場で穴を掘っているほうがよほど似合っている考古学者です。
落ちこぼれ研究者としての劣等感と戦いながら、それでも、ジュンイチたちに頼りにされていることを心の支えに頑張っています。その一方、相手が本物の王女殿下と知っても物怖じしないところは、大物科学者としての素質十分と言えそうです。
彼の淹れる宇宙一おいしい紅茶の秘密も、最終盤で明らかにされます。
***
「運よく認められた論文一本の力だけで、この研究室を手に入れた。だけど、それ以降はだめさ。研究費はどんどん減っていくし、時々、高校の課外授業の講師をして生活費を稼ぐ生活、もしかすると、僕は研究者ではなく教師なんじゃないかと勘違いするくらいだよ」
「それでもさ、君たちはきっと偉大な歴史研究家になる。セレーナさんも、王女なんてつまらない仕事はやめて、ジュンイチ君の助手になればいいのに」
■ルイス・ルーサー
反重力理論研究の大家。五十五歳。
この分野で百年に一人の天才と言われた彼。
ただその才能ゆえに、陰謀家に目を付けられ、不幸な運命に取り込まれてしまいます。
故郷を捨て、新天地でも不遇の目に遭い、それでも彼はその心の内に隠した大きな翼を失っていません。ジュンイチたちとの出会いでその翼に被った埃を振り払い、飛び立とうとします。その彼を閉じ込める籠の正体こそ、ジュンイチたちが立ち向かうべきものなのです。この物語は、彼を救う物語でもあります。
科学に対する信頼こそが彼の信念。科学はつぎ込んだ努力の分だけ必ず応えてくれる、彼はそう信じています。
だからこそ、彼は救われるべき人の一人なのです。
***
「こんな美味しいエスプレッソを作る第二の故郷か、私を生み育んだ本当の故郷か……」
「科学はそうやって発展してきた。歴史はそうやって動いてきた。若いものが。青くさい信念だの友情だので。あと三十年若ければ私も同行したかったよ」
■ビクトリア・ミッチェル
惑星リュシーの反重力研究所の研究員。ちょっとおちゃめな長身美女。
学生のころから非凡な能力を見せ、ルイス・ルーサーには結構かわいがられていた彼女は、ルイスが去ってから心にちょっとしたしこりを持つようになります。
それでもその非凡な能力で、マジック機関の効率性能の宇宙トップ記録を何度も塗り替えています。
あまり自分のことを語る相手がいなかった彼女。
彼女の心に触れてくるジュンイチの影響で、本当の自分に向き合い始めます。
良い意味で主人公一行に影響を受け変わっていく彼女には、これから自分が主人公の人生を歩んでいってほしいですね。
***
「……呆れた。技術史とかやってないで、本物の技術者にならない?研究所で席空けて待ってるわよ」
「いえ、その、先生、すみません!ちょっと混乱してて……」
■スコット・マーリン
人の良い八十歳のおじいちゃん。
その実は、『空穿つ砲』で宇宙人の独立を勝ち取ったマーリン家の末裔。なおかつ、超高速航行の基礎理論である虚数時間超光速運動理論の独自研究家。宇宙人の都合で理論そのものが葬り去られつつある虚数時間超光速運動理論を、千年の恩給のほとんどをつぎ込みながら孤独に次代につなげ続けた一族の末裔です。
そして千年が過ぎた今、宇宙の隅っこでこっそり消えようと思いながらも、ジュンイチたちに見つけられてとてもうれしくて年甲斐もなく興奮しちゃってる、かわいいおじいちゃんだったりします。
自分についてのちょっとした噂が立っていることもひそかに楽しんでいたりもします。
ちょっといたずら好きのおじいちゃん。
そんな人にとんでもないいたずらを仕掛けたんですから、ジュンイチが将来、とんでもないいたずら返しをされるのは間違いありません。
きっとまだまだ長生きするつもりでしょう。
***
「ゼロと一で残した記録は容易に覗かれるし、改ざんされる。どのような防御手段も役に立たぬ。初代はそのことを知っておったのだろうな。あえて、自筆で秘密を残したのだ」
「ジュンイチ、分をわきまえることも大切だが、時に傲慢になることは、それよりも大切だ。年寄りからの忠告だ、よく覚えておけ」




