おまけ:地理と勢力
幕間のおまけコンテンツ、話中世界の地理・勢力についてです。多少のネタバレを含みます。興味ない方は次話に進んでください。
■地球・新連合国
地球上の最大勢力、宇宙でも最も大きな人口を持つ国。
はるか昔に地球上の大国が合意の上で新しい枠組みの国を設立、旧国際連合の緩やかな枠組みからの決別の意味で「新連合国」とした国です。
新連合の各地には、旧国家の領域を自治域とした地方政府があり、ある程度独立した自治が行われていますが、外交などの基本政策や経済政策などは非常に強い統制下にあります。
主人公・大崎純一の住んでいるのも新連合国、極東の日本地方政府の統治領域です。
その他、米国、欧州やロシア、中国やインドを含むアジア諸国などの大国も一つにまとまった奇跡的な巨大国家ですが、もちろんそんなことになったのには深い理由があり、その理由のごくごく一部も作中で語られることになります。
宇宙国家との国境は地上300kmの球面と厳密に定められていて、実質的に宇宙開発の道は閉ざされています。この定めのため、月面や他の太陽系の惑星はもちろん、地球の上を飛んでいる人工衛星やカノン基地さえ隣国『アンビリア共和国』の領有物となっています。
このような窮屈な状況、しかし、あえて宇宙に飛び出さずとも、十分な資源は輸入で賄え十分な労働力に支えられた製品の生産も盛んであるため、宇宙移民はまだまだ少数派で、地球上の人口は二百億を数え、そのうち95%は新連合国に属しています。
これだけの人口と経済をその内に抱える国であるため、宇宙レベルの大勢力の政治的駆け引きとなる場合、新連合国の存在を無視して話をすることはできないのです。
■地球・自由圏国家連盟
地球で、新連合国と一つにならなかった国々。
お互いにいろいろな確執が無いでもなかったものの、結局は「対新連合国」としてまとまり、自由圏連盟として緩やかに結束しています。
ただ、新連合国のような統一された外交機関を持つわけでもなく、個別の国々がそれぞれに新連合国やその他の宇宙国家との間の関係を持っています。
連盟の本部は、ストックホルム。新連合国となった旧デンマークとエーレ海峡を挟んで東側北欧諸国が自由圏です。また、旧チェコ、オーストリア、ハンガリー地域の統合国家ドナウ共和国より東の欧州の多くも自由圏。オーストラリアも代表的な自由圏国家です。
多くの国があるものの、その総人口は十億を少し超えた程度で、190億の人口を持つ新連合との国力差は圧倒的です。その大きな理由は、新連合も含めた宇宙共通通貨『クレジット』を自由圏では採用しないため。
自らをそこまで追い込んでもがんばり続ける自由圏には、それはそれで深い戦略があったりします。
■エミリア王国
地球から百光年余りの距離にある惑星エミリアを統治する王国。
宇宙国家としては非常に珍しい王制をとりますが、その理由は作中で語られるのでここでは割愛。
隣接する二惑星、グリゼルダとベルナデッダを領有しています。
作中冒頭でも語られますが、エミリア王国の惑星エミリアは、宇宙でもここでしか採掘されない「マジック鉱」を産出します。そのために、様々な思惑が惑星エミリアの上空に渦巻いています。
そしてもちろん、エミリア王国自身さえもさまざまな思惑を巡らせるところになるわけですが、それもまた作中で語られます。
建国後に王家の分家として別れていった親戚たちは多くの荘園の領有を認められ、結果として「貴族」として繁栄を享受することになります。と言っても、貴族領の中は法制も含めて貴族の好きにしてよいというような古代封建国家的な諸侯制度ではなく、あくまで国家の統治のもとで貴族の個人資産として土地と領民を所有しているという形です。
国王を頂点とする王制ではありますが、それでも法がまず優先され、法により人権が保障されています。王侯貴族が法を超越した権利を行使することもできますが、その場合、それに反対するものは誰でも貴族弾劾裁判を起こしてその貴族の行為をとがめることができます。たとえば優越権行使を宣言して人一人を殺してしまった後、弾劾裁判で敗訴した場合、続けて通常の刑事裁判で殺人犯として裁かれることになるわけです。とはいえ、行われてしまう行為をその場で止められないという意味では、王侯貴族はやはり特権階級として君臨することができます。
現在は近縁の公爵家から摂政を置き、摂政政治が行われています。
■ロックウェル連合国
宇宙の商社国家の連合国。首都は惑星エディンバラの連合特別区。
宇宙開拓初期から活躍した資源を商う大商社は、結局惑星の開発も自らの責任で行うことになり、開拓した惑星に自ら統治機構として共和国を置くようになります。
こうした商社国家は宇宙のあちこちに自然発生し、また、それぞれが近隣を開拓して領土を広げていくことになりました。
そんな中で軍事衝突が起きることも少なくありませんでしたが、ある時、最大勢力を誇ったロックウェル商事のロックウェル共和国を中心として、商社同士の共済機構のようなものを作ることが発案されます。
これがのちに国家としての連合となっていきます。
たいていの商社共和国は、民意を反映するための下院と、商社の意志を反映するための上院を持ち、上院議員は株主かその代理者が務めています。
ロックウェル連合国では、さらにその上院議員あるいは株主が代表者を送り込む『連合議会』という法人組織を持ち、その法人組織が各共和国の母体商社の大株主になるという形で結束が形作られています。
こうなるとたまごが先かにわとりが先か、というような力関係になり、意思決定の中心が非常に分かりにくくなっているようで、官僚組織の長などが結果として大きな権力を持っていることが多いようです。
宇宙でも有数の軍事力を結集し、外宇宙への野心も旺盛。最大消費地地球を実質支配するアンビリア共和国もロックウェル連合国の影響下にあり、ロックウェルは通商を通して宇宙を実質的に支配している国です。
そのロックウェルが、どうしても組み敷けないのがエミリア王国。独占資源と、それによる莫大な資金に支えられた、ロックウェルに匹敵する軍事力。どうにか隙を見つけてエミリアの内側に影響力を行使するチャンスをうかがい続けています。
物語の舞台となる以下の場所もロックウェル連合国所属です。
オーツ共和国 惑星オウミ
トライジュエル共和国 惑星ラーヴァ
ドニエ共和国 惑星リュシー
■その他の勢力
★アンビリア共和国
地球の隣国。初めて人類が地球外に植民した惑星アンビリアの共和国です。
アンビリアはエリダヌス座ε星を周回する惑星。
エリダヌス神話でエリダヌス川に落ちた琥珀の一粒をイメージして、琥珀(amber)の国、アンビリア(Amberia)と名付けられました。
なぜアンビリアが地球を支配しているのか?
その謎こそが、主人公の旅の出発点です。
★アルカス共和国
アンビリアが出発点なら、アルカスは重要な折り返し点。
主人公が自らの力の本質を知ることになる惑星です。
★ファレン共和国
そしてファレンは、ゴールとなる国です。
旅の終わり、ファレンの上空で起こる奇跡。
あらゆる人の絆がその奇跡を起こします。




