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第三十六話:決戦の時

大鎌使いのTS美少女がゲーム内で頑張る話『死に戻りで逝くデスゲーム攻略記』がHJ大賞一次審査を突破しました!

幼稚園児でも安心して読める作品になっております!



「――ふっはっはっはっは! どうだ強いだろう、俺の領地の連中は!」


 戦場のはるか後方にて、ベイバロンの民衆たちが邪悪なる敵共をフルボッコする様を見ながら、俺は独り高笑いしていた!

 なんてったって、みんなには毎日いっぱいお肉を食べさせてきたからね! 俺が回復魔法で媚を売り始めるまではみんなヒョロヒョロだったけど、今じゃどいつもこいつもムッキムキのバッキバキだ。怪我も病気も一切あらず。そんなもん、俺の回復パワーで全部消し飛ばしてやったぜ。


 ……そうして俺は、俺とこの領地をみんなに愛してもらえるように今まで頑張ってきたんだ。

 いきなり戦争を挑んできた経済破綻クソ無能領主のジャイコフを倒したり、男爵よりも地位の低い子爵のくせに世界征服を目論んでドラゴンになったスネイルのアホを木材に変えたり、沿岸の領地から海をこころよく分けてもらったり貴族の可哀想な子供たちを教育したりして、ベイバロン領を守り――導いてきた。


 そんな平和を愛する大英雄である俺の背中を見てきたからこそ、民衆たちもあれだけ勇敢に戦えるようになったんだろう。

 ……てかアイツら、容赦なく人を殺しててちょっと怖いんだけど! 誰に似ちゃったのかなぁまったく? 今度からもっと媚びるようにしよっと。


「やれやれ――平民に優しくしてたら、いつの間にか国と戦争になっちまったけど……これも運命なのかもしれないな。なんてったって俺は、『王』の器を持つ存在なんだから……!」


 一つの国に二人の王は存在できないんだから、邪魔者はぶっ殺すしか道はないよねッ!

 今思えば死んだ親父のヤツも、俺のことをいずれ王に至る存在だと気付いてたのかもしれない。『お前はいつかデカいことをやらかすヤツだ』って毎晩震えながら酒飲んでたし。うふふふふふ!


 そうして俺が余裕をぶっこいて戦いを見守っていた時だった。


 ――突如として発生した極光が、戦場全てを包み込んだ。




 ◆ ◇ ◆

 




「――グハハハハハハッ! 素晴らしいッ、素晴らしかったぞ、ベイバロンの使徒たちよ! お前たちの勇ましき戦いぶり、わしの胸にグッと響いたッ!」



 それは、掛け値なしの不意打ちだった。

 ベイバロンの者たちが数百万の大軍勢を撃滅せんとしていた刹那、突如として空中に白き王衣ローブを纏った老人が姿を現したのだ。

 敵の援軍かと思い、大砲を向けようとした瞬間――戦場すべてを飲み込むほどの灼熱の光が、老人の手より放たれた。


 まさしくそれは神の一撃。炎魔法という次元すらも超越した『太陽』の輝き。

 圧倒的な魔力によって超活性した原子からなる、『核融合』の光だった――!


「ギャァァァァァアアアアッ!!?」


「なッ、なんだこれはァァァァァ!?」


 約六千度にも達するその熱光を受けたことで、数百万の王都の者らは一瞬にしてこの世から蒸発。

 最強生物であるドラゴンの群れすら為す術もなく空から焼け堕ち、『竜の因子』によって強化されたベイバロンの者たちもまた、そのほとんどが黒焦げた死体と成り果てるのだった。


「ああ、お前たちはまさに素晴らしかったが――この程度の一撃で倒れるようでは気合が足りんなぁッ! そんな腑抜けた根性で、この最強の魔法使い・ヤルダバートを超えられると思うてかッ!」


 灼熱地獄と化した戦場に降り立ち、ヤルダバートは高らかに笑う。

 草木や死体が燃え盛る中にあっても、王者としての威風は周囲の炎すら寄せ付けない。まさにこの老王こそ、人類を超越した『化物』と呼ぶべき存在であった。


 ゆえに――彼は気合で延命し続け、ずっとずっと待っていたのだ。自分を討ち倒してくれるような、素晴らしき『英雄』の登場を。


「ぐふふふ……儂はずっと渇いておった。弱小だったグノーシア王国に生まれ百三十年。周囲の国々を次々と落とし、富と名声を欲しいままにしてきたが……儂の心は満たされなかった。何故なら儂の欲しい者とは、儂を殺せるほどの『敵』なのだからッ!

 だがしかし、そんなつまらない日々も今日で終わりじゃぁッ! 最初で最後の殺し合いを、いざ盛大に始めようッ! なぁ――ッ!」


 魂の叫びを張り上げるのと同時に、ヤルダバートは飢えた瞳で空を見た。

 はたしてそこには、彼に向かって飛来してくる六億匹・・・の牛の群れがいたのである――!


『モォォォォォオオオオオオッッッ――!』


 雄叫びを上げながら降り注いでくる牛の大群。あまりにも頭のおかしい光景であるが、その破壊力は計り知れない。

 約一トンもの成牛が落下エネルギーを伴いながら六億匹も落ちてくるとなれば、もはやそれは隕石の墜落と変わらないほどの脅威である。


 そんな常識外れでありながら殺意しかない『攻撃』を前に、ヤルダバートの胸はキュンッとたかぶった。

 こんなことをしてくるのは、ずっと探し求めていたあの男しかいないと――!


「グハハハハッ! ならば儂も、カッコいいところを見せなければなァァァアアア!!!」


 天に向かって両手を突き出し、核放射光を放つヤルダバート。六億匹の牛と禁断の熱光が空中でぶつかり合い、大爆発が巻き起こる――!


『モォォォォォォォォオオオッ!!!』


「うぉりゃぁぁぁぁああああああッッッ!!!」


 数秒間に渡る超物量と超熱量の競い合い。果たしてその勝負を制したのは、ヤルダバートの魔法だった。彼の手から放たれた閃光は、見事に六億匹の牛たちを焼き尽くしてみせたのである。

 牛の灰や牛の炭や一部生焼けの牛たちが、ベイバロンの空より雨のように降り注いだ。


「グッハハハハッ! こんな攻撃を喰らったのは百三十年生きてきて初めてじゃわいッ! おっぱじめからおっぴろげな事をしてくれるではないかッ!」


 かくして飢えた老王は、陽炎の彼方から歩む寄ってくる存在に向かい、その者の名を謳い上げる――!


「はじめましてじゃのォ。我が宿敵――リゼ・ベイバロンよッ!!!」


「よくも皆をやってくれたな――ヤルダバート・グノーシアッ!!!」


 ついに迎えた対峙の瞬間、二人の身体から溢れ出した圧倒的な量の魔力が暴風となってぶつかり合った――!



 冷酷な瞳をした若者を前に、ヤルダバートは確信する。この者こそがリゼ・ベイバロン――正義のために反逆を誓った『英雄』だと!


 狂笑を浮かべた老人を前に、リゼは確信する。この者こそがヤルダバート――息子を洗脳調教して元気にしてやったりと今までさんざん恩を売りまくってきたのに何か息子ブン投げて城を壊してきた『魔王』だと!



 ……都合のいい妄想を信じて疑わない老害脳の持ち主と、自分が悪である認識がまったく無いクズ幼児脳の持ち主。

 そんな悪夢のような二人が神のごとき魔力を全開放し、ついに決戦の時を迎えるのだった――……!

 最悪である。


 



最終回まで残り一話!

みなさま最後までよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
[良い点] ( ・ิω・ิ)b [気になる点] ( ・ิω・ิ)p
[一言] どうしてこうなった
2021/05/05 23:29 退会済み
管理
[良い点] 毎度めちゃくちゃ笑ってしまう。最高 [気になる点] おおん [一言] これ最初は両親が糞なら子も同じ、と思ってたけどこの話しみてから両親はまともだったんじゃ……?父は頭のおかしいクソガキ…
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