第二十九話:子供を壊そう!
・これまでのキャラまとめ
主人公:頭がおかしい
ヒロイン:頭がおかしい
仲間たち:頭がおかしい
ラスボス:頭がおかしい
以上です!
『――ふ、ふざけおってぇ……!』
『なんだこれはぁぁぁああ!』
『ぐぬぬぬぬぬぬッ!』
その夜、ホーエンハイムが監督する地方の貴族たちは、それぞれの屋敷で皆一斉に唸り声を上げていた。
彼らを苛つかせているのは、突如として届いた一通の招待状である。そこにはこう書き記されていた。
“これより一か月後、我が自慢の城でパーティーを開く。この国の平和を願う者たちよ、英雄リゼ・ベイバロンの下に集うがいいッ!”――と。
……貴族たちは思った。“コイツ何様のつもりなんだ!?”と。
リゼ・ベイバロンという男がドラゴンを倒してジャンゴ領を救ったらしいという噂は聞いているが、最底辺の男爵風情にこんなパーティーの誘われ方はしたくない。
というかお前、城なんて持ってないだろ嘘吐くなこの野郎というのが貴族たちの総意である。こんなふざけた招待状を出してくるのは最初から挑発目的の奴か、あるいは何も考えてない幼児だけだ。確実に前者だと貴族たちは思っていた。
怒りのままに破り捨てたくもなるが――ホーエンハイム公爵との連名で出されたモノとあっては、そうするわけにもいかない。
貴族たちは思い悩んだ末に、怒りでペンを震わせながらこう返答の手紙を書いた。
“我らが誇らしき英雄様。あいにく私や長男は体調が優れず、そのパーティーには末の子を向かわせることにします。男爵の地位には見合わないその威光で、どうか愚息を教育してやってくださいませ”と。
……たっぷりと皮肉が込められた文章である。示し合わせたわけではないが、招待された全員がほぼ同じような答えを返した。
誘いを断るわけにもいかず、だが顔も合わせたくないとなればこうするまでだ。末の子には自称・英雄様を接待してきてもらおう。
それにパーティーに向かう途中、もしも最悪の領地・ベイバロン領の邪悪な民衆たちに襲われて負傷するようなことがあっても、末の子ならば問題はない。何なら死んでも構わないくらいだ。
なぜならば魔法使いの子供とは――初子に近いほど多くの魔力と才能を受け継ぐ性質があるからだ。
家の後継者を選ぶ際には、生まれた順番以上に魔法の才覚が重要視される。
稀に次男が長男を凌ぐ才能を発揮することもあるが、三男以下の者が長男を上回ることは絶対にありえない。
さらに言えば、長男にもしものことがあった時のスペアとして次男は必要になっても、それ以降の者はむしろ不要な存在なのだ。
万が一、家出をされてその辺の女と子を作り、『魔法が使える平民』などという存在が産まれてしまっては堪ったものではない。魔法の力で民衆を抑えている貴族としての支配体制に影響が出てしまう。
ゆえに三人目以下の子供は、ほぼ軟禁状態で飼い殺しのまま一生を終えるか、今回のような厄介な場面で矢面に立たされることがほとんどだった。
財に溢れた王家の者でもない限り、金食い虫として虐待を受けている者もいるくらいだ。
『フフフ……パーティーに出るのなんて初めてだからな。アレも喜んでくれるだろう』
『念のために腕の立つ騎士を付けなくてはな。道中で逃げられたら面倒だ……その時には始末してもらおう』
『うっかり出来てしまった子だが、たまには役立つものだなぁ』
問題が解決したことに対し、それぞれの屋敷でほくそ笑む貴族の当主たち。
彼らの心には、最悪の領地に向かわされる末の子への申し訳なさなどは皆無だった。
これが、狂った国王が治める国の、一般的な貴族の在り方なのだから。
――かくして一か月後、当主たちはむせび泣く末の子をリゼ・ベイバロンの下に無理やり送り込んでいくのだった。
だがしかし、彼らは知らない……ただの荒れ果てた領地だと思っているベイバロン領が、今や『デミウルゴス教』という頭のおかしい女が治める超過激派危険テロリスト集団の本拠地となっていることなんて……ッ!
そしてリゼという男がそれをまっっったく気にせず、完全に野放しで好き放題にさせていることなんてッ!
そこに冷遇している子供を送り込めばどうなるか――のちに当主たちは、身をもって知ることになるのだった……!
投稿が遅れてしまい申し訳ありません、泣きながら頑張って設定資料を作ってました。
また後日、さらにとんでもない発表が出来るかもしれません……!
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