表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました  作者: 藤原遊人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/57

37

当城初日の朝。私は王宮執務棟の奥、兄上たちの執務室に呼び出されていた。


そこにいたのは王太子である第二王子の兄上と、軍務を統括する第四王子の兄上。2人の視線が、やや呆れたように私へ注がれていた。


兄上たちの前には、記録官から届けられた記録書類が山積みになっている。


「……ユーリ」


王太子兄上が、低くため息をつきながら開口一番に言った。


「あれほど “あんな幼い妹に無体なことはするな” と言っただろ?」


私は苦笑しつつ一礼する。


「忠告は常に胸に刻んでおりますよ、兄上」


第四王子の兄上が無言で書類の束をめくりながら呟く。


「……記録官の記録、第一夜から第四夜まで。四夜連続で “情熱的な夜をお過ごしになられました” ……か」


王太子兄上が思わず頭を抱えた。


「既成事実どころの騒ぎじゃないな。堂々たる新婚生活だぞ、これは」


「だいたい、第二夜以降は完全に惚気全開だ。記録官も途中から盛り気味になっている気がするが……」


「兄上方、記録官の裁量で多少脚色されているだけです」


そう口では言いながら、私は内心で苦笑していた。


(……いや、むしろ意図通りなのだが)


カティアの地位を万全にするためには、この程度の既成事実など序の口。問題はむしろ――


「だがまあ……」


王太子兄上は私をじっと見つめ、にやりと意地の悪い笑みを浮かべた。


「――お前の、あの蕩けきった顔が全てを物語っているがな」


私は僅かに頬を染めた。


「……否定は、しません」


「外交の顔とは思えんぞ。まるで色恋に溺れた新婚夫だ」


第四王子の兄上も、半ば呆れながらも笑っている。


「まあ、それだけ惚れ込んでるなら、余計な心配も不要か……ただなユーリ。あの様子を誰か他国の使節が目撃したら――」


「――また、王子に恋する姫君が増えるぞ?」


私は小さく肩をすくめた。


「それは困りますね。カティア以外に、私の隣に立つ者はいませんから」


途端に兄上たちが揃って盛大にため息をつく。


「幸せなのは、もう十分すぎるほど分かった」


「……惚気はいい。仕事に戻れ」


「かしこまりました」


私は深々と頭を下げ、兄たちの執務室を後にした。


(……さて。これからもカティアと幸せに生きていく。そのための仕事なら、いくらでも引き受けよう)


◆ ◆ ◆


──こうして、当城初日の兄たちの”審査”は無事に(?)終了したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ