第十四話 答え合わせ
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第十四話 答え合わせ
「さすがに雷帝の娘だな」
「恐れ入った。これは間違いなく我々より強いな」
悪魔が滅っしてしばらくすると、フリーズしていた面々が動き始め、王族の護衛の教師二人がクレア達を賞賛した。
「ちっ、不本意だが認めてやらねばならないだろう。貴様らは強い」
吹き飛ばされていた王子も復帰してクレア達をねぎらう。
「あら、ありがとうございます」
たいしたことをしたつもりのないクレアは、褒められたことへの礼を簡単に言う。
『でも、男の戦士や年配の戦士はすぐに欲望に負けて妖魔化するはずだから、出来れば若い女性の仲間がいいのよね』と思いながら、メンバーの中で唯一の若い女性である本来の主人公リフリアに目をやると、リフリアもクレアを見つめていた。
『訳が分からないけど、悪役令嬢クレアがこの世界ではなぜかとても強くて悪役っぽくないことは確かだわ。もしかしてクレアも転生者なの……
そうなら、話をしないといけないわね』
そう考えたリフリアは、状況を把握するために勇気を振り絞ってクレアに声をかけた。
「あの、このたびは危ないところを助けていただきありがとうございました。私、平民特別枠で入学したリフリアと申します」
「あら、あなたが平民枠で入学されたリフリアさんなのね。優秀でいらっしゃるのね。
私、リッチモンド家のクレア・リッチモンドと申します。私のことはクレアと呼んでいただいて結構ですわ。よろしくお願いしますね」
仲間に出来るかもと考えているクレアは、王子たちよりもリフリアに対して丁寧に対応する。
むっとする王子たちだが自分たちが手も足も出なかった大悪魔に完勝した強者には文句を言うことが出来ない。
『それにしても、ここで女戦士初代のナンバー1、リフリアに巡り会えるとは幸運だったのかしら……
最年少にしてナンバー1になった逸材にして、最短で魔物化し、最凶の妖魔の一体となったリフリアさんを仲間にしたいわね。魔物化さえ阻止できれば強い戦力になるはずだもの』とクレアは思う。クレアが愛読し、この世界の元と考えて疑っていないダークファンタジーにリフレアというキャラが出てきており、一文字違うのだがクレアはリフリアとリフレアの違いに気がつくことなく勘違いした。
「あの、それでもしお許しいただけるなら二人だけでちょっとお話していただけませんか?」
クレアが打算を含んだ物思いにふけっていると、リフリアから話をしたいと申し出があった。クレアにとっては渡りに船である。戦士として仲間に勧誘しようと目論むクレアは二つ返事で了承した。
「アナベラ様、私ちょっとリフリア様とお話ししますので、席を外させていただきますわ」
クレアはそう言うとリフリアを伴って集団から少し距離を取る。
他のメンバーから声が聞き取れないくらい離れたと考えたリフリアがクレアに話しかけた。最もこれくらいの距離ならレベルの上がったアナベラ達には筒抜けになる距離なのだがリフリアは知らない。
「クレア様、もしかしてあなた、転生者じゃありませんか」
いきなりリフリアから核心を突く爆弾発言が飛び出した。
予想外の展開に、アナベラ達が聞き耳を立てていることを忘れたクレアは、遮音の結界を張ることも忘れて答えてしまう。
「なっ……
なんで、そのことを……
もしかしてあなたも転生者?」
「やっぱりそうだったのね。
では,この世界が転生前の世界でアニメにもなった創作の世界だと言うことも知っているわよね」
このときリフリアは、乙女ゲーム『愛の学園』、通称「アイガク」のことが脳裏に浮かんでいる。
「ええ、もちろんよ」
一方、リフリアの言葉を肯定したクレアはダークファンタジー『金眼の戦士』、通称「キンセン」をイメージして返答している。
同床異夢……、完全にすれ違いなのだが、転生して以来初めての転生仲間の出現に気持ちがハイになっている二人は、お互いがすれ違っているなど微塵も感じていない。
「タイトルは覚えている?」
「当然よ!」
「それじゃあ、答え合わせよ!せーので一緒にこの世界の元となった作品タイトルを言いましょう」
「分かったわ」
この時、二人の気持ちは完全に一つだった。これまで孤独にストーリーを進めてきた自分に出来た、真に理解し合える仲間……
二人は声をそろえてその題名を叫ぶ。
「「せーの」」
「金眼の戦士」「愛の学園」
「「はぁっ???」」
「「なによ、それ! そんな話知らないわよ!!!」
完璧だった。完璧にハモっていた……
タイトル以外は……
リアルでつらいことがあってギャグの切れが悪い……
悲しい……




