093 助太刀執事
聖人と神代を絶命させようとしているリオンの元に、一人の男が現れた。それは、肩まで伸びた黒髪が特徴のあの男だった。
「おい、そこのお前」
男は冷酷な殺人鬼に向かって喋りかけた。
「ん?」
長い金髪の髪の毛を流して、振り返るリオン。
「子供をいたぶるとは、悪趣味な野郎だぜ」
力の差を見せつけられて項垂れている神代と聖人。二人は目の前の大人達を見て、バンドの打ち合わせかと心の中でツッコミを入れた。
「私は貴様を知っているぞ」
男に指を刺したリオン。
「言ってみろ」
「霧登家の執事。ヴォルフガング・ロドリゲス」
「大正解だ。プレゼントに俺の弾丸をくれてやろう」
ホルスターからハンドガンを取り出したヴォルフガングは、リオンのこめかみに向けて銃を発射。しかし、弾丸はこめかみを打ち抜くことも無く、力が加わった様にへしゃげて、地面に落ちた。
「今何かしたのか?」
平然と答えるリオン。
「成程。少しは出来るようで安心したぞ」
「まさしく、データ通りの闘争本能だな。ロドリゲス」
「破鏡」
そういうと、土煙が舞ってハンドガンがデザードイーグルに変化した。
「ほお」
関心した様子で、リオンは笑った。
「闡帝銃」
これが、破鏡したデザードイーグルの名前だった。
「そんなおもちゃでどうするのかな?」
リオンの問いに、ヴォルフガングは銃口を向けて答えた。
「おもちゃかどうかは、喰らってから判断しろ」
ヴォルフガングはゆっくりと引き金を引いた。そして、銃口からは青色に輝く魔法の弾が発射された。
「おっと」
さしものリオンも今度ばかりは危険を感じて、体をひねって弾丸を躱した。
「何故避けた?」
「避けたい気分だったからだよ」
「ほざけ!」
もう一度、ヴォルフガングは引き金を引いた。今度の弾丸は躱しきれないスピードで、リオンの肩に直撃した。
「っく」
リオンの肩からは血が流れていた。初めて、リオンの体に傷をつけることが出来たのだ。
「こういうことだな」
「それはどういうことかな?」
「お前は危険を感じて避けたということだ」
目線を合したまま問いかけたヴォルフガング。
「まったく、想像以上の破壊力だな」
「魔法界仕込みの武器だ。そんじょそこらのなまくらとは訳が違うのさ」
「魔法界仕込みか」
「そうだ」
「ちなみに名前は何と言うのかね?」
「魔法界の荒くれ鮫、ガルドン・ティブロンの魂だ」
「C級ランクか。なかなかの強さだな」
まだ余裕の表情を浮かべているリオンだった。
「それはどうも」
「いやいや、どういたしまして」
「それじゃあ、そろそろ決着をつけるか」
「そうだな。私も本気を出すとしようか」
「何?」
「蒼穹破損!」
リオンは魔法剣を振りかぶって、ヴォルフガングに突進してきた。
「なんのこれしき」
ヴォルフガングがマクシディオンを発射するものの、リオンは全ての弾丸を真っ二つにしてみせた。
「衝波」
リオンの一振りに対してマクシディオンを盾にして防いだヴォルフガング。
「ぐぐぐ……」
斬撃に歯を食いしばって耐えるヴォルフガング。
そして、マクシディオンに力を入れて、リオンを弾き飛ばした。
「やるな。ロドリゲス」
「死隼という二つ名は伊達じゃないのさ」




