092 蒼穹破損
「くそ」
聖人は自らの無鉄砲さに悲観し頭を下げた。
「そもそも、私には貴様ら人間がこのような世界で生き続けている意味が分からない」
「どういう意味だ?」
「貴様らは林立するマンションや高層ビルを巣にして、世に蔓延る虫ではないか」
「てめえのお仲間も似たようなことを言ってたぜ」
「そうか」
リオンは懐から日本刀を取り出した。切っ先から雷鳴が轟く魔法剣だ。そして、リオンはとどめを刺す気で、聖人に笑いかける。
「…………」
聖人はリオンの笑いには答えず、ただひたすら怯え、震えていた。
「反応は無か」
「…………」
「まあ、いい」
リオンは魔法剣を聖人の首筋に置いた。
「せめて、一撃で屠ってやろう」
「歪呪十字架」
危険を察知した神代が、聖人を救うために魔法を唱えた。黒い十字架がリオンの体を押し出して、リオンの周りに結界が出現。
「ちい」
幻滅したリオンが不機嫌そうに舌打ちをする。
「聖人!」
聖人の身を心配した神代が、聖人の身まで駆け寄った。
「俺は大丈夫だ」
常夜叉鎚矛を杖代わりにして、立ち上がる聖人。
「顔色が悪いわよ」
「奴の魔力を必要以上に浴びすぎたみてえだ」
「あんたは此処で休んでて、私が片づけるから」
「片づけるか」
すると、結界が音を立てて砕けた。リオンが魔法剣を軽く振っただけでだ。
「歪呪十字架を一撃で!?」
「この程度の低級結界で私を捕えたと勘違いするとは。奢り高ぶるのもいい加減にしてくれないか」
「破鏡」
神代がそういうと、注射針が人間の大きさ程に巨大化した。そして、その巨大注射針をリオンに向かって投げつける神代。
「愚かな」
リオンは魔法剣を縦に振って注射針を一刀両断。注射針は真っ二つに割れて、注射針の中の魂ごと破損させた。
「うそでしょ」
目の前で起きた事を現実と受け止められず、両手で口を覆った神代。
「侮るなよ、雀羅を使わずに私を倒せると思うてか」
「…………」
「安心しろ。二人仲良く殺してやる」




