089 束の間の再開
神代が倒したソフィアの骸が消失していき、次第にカードへ変化していった。
「ふう」
安堵の溜め息を吐きながら、落ちているカードを拾った神代。すると、神代は目を見開いて驚愕した。
「……ランクG?」
そう、神代が雀羅を使って漸く倒した恢飢は最も下級であるランクG。本来ならば魔法を覚えたての小学生ですら倒せる程度だが、合成恢飢のランクGでは、一般エクソシストが本気を出してなんとか倒せるレベルだ。
「………………」
しばらくカードを見つめて考え込んでいた神代。
「おーい、神代!」
自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、顔を上げる神代。すると、聖人が手を振りながら走って来ていた。
「聖人!」
勝ったのだと確信した神代は、聖人を抱きしめて出迎えた。
「お、おい」
いきなりハグされて戸惑う聖人。脳裏に伝わる女の子の感触が、聖人の顔を赤く染めていた。
「良かった。本当に良かった」
泣いてはいなかったが、神代の声は泣き声に近い。それだけ、聖人の事を心配していたという証拠に繋がる。
「あんな木偶の坊に負けはしないさ」
それを聞いた神代は、安心した様子で聖人の身体から離れた。
「あんた、もしかして!」
聖人が右手に持っている常夜叉鎚矛を指を刺した神代。聖人は「これか」と言って、常夜叉鎚矛を神代に見せた。
「俺のモーニングスターも雀羅化に成功したんだぜ。名前は常夜叉鎚矛って言うんだ」
まるで子供の如く無邪気な顔で説明する聖人。
「常夜叉鎚矛?」
「そうだ。精神世界で恢飢の魂と戦ってさ、その名を勝ち取ったよ」
「へー。やるじゃない」
そう言って、素直に称賛した神代だった。
「それでさ」
急に表情を真剣にさせた聖人。
「どうしたの?」
「時を止める魔法ってあるのか」
「……はあ?」
神代は開いた口が塞がらないのはこの事かとばかりに聞き返した。
「だから、時を止める魔法だってば」
「時を管理しているのは神だし、私達が扱える代物じゃないわ」
ハッキリと答えた神代。
「でもさ、恢飢が攻撃してきた瞬間に変な人が現れてよ……時間を止めたんだ」
「夢でも見たんじゃない?」
「そうかな、確かに時間が止まった気がするんだけど」
聖人は妙に納得がいかない様子だった。
「それよりも、香久弥ちゃんよ!」
「どうかしたのか?」
「私も戦闘に巻き込まれて、その時に香久弥ちゃんを一人で逃がしたのよ。後を追わなくちゃ」
神代は香久弥が逃げた方向に走り、それを追うように聖人も後に続いた。




