086 見えない部屋
「やるじゃーん。てっきり、雀羅も使えない凡人エクソシストだと思ってたし」
「これでも王覇師団のエクソシストよ。雀羅ぐらい使えて当然」
「へー。アンタ王覇師団のメンバーなの」
「そうよ」
「ドコタイ?」
今時のギャル風に略して言ったソフィアだったが、肝心の神代は意味が分からないといった様子で首を傾げた。
「その前にドコタイって、どういう意味よ」
「何処の隊に所属していますかー。の略でドコタイ」
「ああ、そういう事ね」
最近の女子高校生の間では略語が流行っていたのを思い出して、妙に納得した神代。
「雷霆隊? 螺旋隊? それとも、焔星隊とかだったりして!」
何故かテンションを上げて話し始めたソフィア。
「……修祓隊よ」
「なーんだ。雑魚じゃん」
修祓隊は下から数えた方が早いのだ。
「これを見ても、そう言えるかしら?」
神代の左隣に体重計が出現した。
「ん!」
ガクンとした衝撃がソフィアを襲った。右腕に持っている大剣が急激に重くなったのだ。
「うっそ」
あまりの重さに大剣が地面に埋まり、ソフィアは引っこ抜こうと両手で柄を掴むも、大剣は一切動こうとしない。
「対象の重量を上下げさせる体重計」
次に神代の右隣に視力検査表が現れた。
「もしかして」
ソフィアが予感した通り、まもなくソフィアは視力を失ったのだ。
「……何も見えない」
「安心していいわよ。全部一時的だから」
それでも、勝利を確定させるためには十分だった。体重計で大剣の重量を軽くした神代は、ソフィアから大剣を奪い取った。
「ちょっと!」
暗闇の中で必死に手を動かしたが、何も掴む事が出来ないソフィア。
「勝負ありね」
神代はこの瞬間に勝利を確信した。
「アンタに人を殺す覚悟はあるの?」
ソフィアの発言は命乞いと何ら違わない発言だった。
「あら、さっき自分の事を恢飢だって言ったばかりじゃない」
「ッチ」
怪訝が悪そうにソフィアは舌打ちをした。
「じゃあね」
不適な笑みを浮かべた神代は、目の前にいる恢飢の首に大剣を振り降ろした。




