079 鳴らない電話
「此処は……?」
聖人が目を覚めると、火山や溶岩などが周りに広がっていた。しかし、聖人は全く熱さを感じていなかった。
「やっと来やがったか」
聖人は声がする方向に目を向けると、マグマから赤鬼が出てきたのだ。
「な、な、な、何だ!?」
「焦るなよ兄弟。俺だ俺」
親指を自らの顔に指差した赤鬼。ところが、聖人はこの赤鬼が誰だかさっぱり思い出せなかった。
「もっさん?」
何とか捻り出して答えたのは、もっさんという人物だった。
「誰だ! もっさんって誰だ!」
激しいツッコミのジャブを浴びせた赤鬼。
「碩大区のご当地キャラクターだよ」
「知らねぇ知らねぇ。全然知らねぇよ」
首を勢い余って横に振った赤鬼。
「それで、てめぇは結局何者だ?」
「鈍腕暴狂熊。建設途中の工事現場で暴れていた俺様を封印しただろうが」
「ああ……あの時の恢飢か。てか、随分と容姿が変わったな」
「精神世界ではよ。自分の思い通りの姿形に変化出来るのさ」
鈍腕暴狂熊は胸を張って、そう言った。
「精神世界? 何で俺が精神世界に居るんだ」
「俺様が呼んだからさ。ずっとずっと声を掛け続けてよ……やっと答えてくれたか」
「一体全体、何の為に俺を呼んだ?」
「決まってるだろ。お前と殺し合いをするためだ!」
「!?」
鈍腕暴狂熊が腕を振り下ろした。まるで、さっきのガルシア・ボレゲーロと同じ様に。聖人は攻撃を寸前で避けた。
「俺様と同じ系統の恢飢にやられるとは……俺様を一撃でノックアウトした時のお前は何処に消えたんだ?」
「てめぇ、なんでキレてんだよ!」
「忘れたのか。俺様は獰猛な恢飢だぜ」
次に鈍腕暴狂熊は右腕に棍棒を両手に持ち、ハンマー投げの様に振り回した。
「うわっ」
為す術もなく、逃げ回る聖人。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ。その程度かよ、玖雅ァ!」
鈍腕暴狂熊から放たれた棍棒が、聖人の目の前を通過。棍棒は岩に当たって、その岩を粉々に砕いた。
「汚いぞ。俺は武器を持っていないのに」
「精神世界での戦いは、想像力で決定すると……奴に教わらなかったのか?」
「!」
聖人は目を見開いた。すると、聖人の目から魔法が飛び出した。
「何」
鈍腕暴狂熊は不意を突かれた。魔法が胸に直撃して、小さな穴を作ったのだ。
「目からビームとは……お前はいつも予想の上を往く」
「ヒーローは目からビームを出すのがお決まりだろう?」
「そんな定義は知らん」
「生まれてこの方、努力の二文字をしてこなかった俺がドSな美少女にシバかれながらエクソシストの修行をするようですってアニメの主人公も目からビームを出すんだぜ」
「成程。アニメの主人公から着眼点を得たのか」
聖人の事を始めて称賛した鈍腕暴狂熊だった。




