063 放課後エクソシスト
「うわ……デカイな」
放課後、神代と聖人は零界堂家の屋敷に来ていた。屋敷は江戸時代後期の和風的建築物にも見え、とても面積が広く、門の中には城下町が広がっているのではないかと錯覚させられる程だ。
「取り合えずノックしてみたら」
神代は腕を組みながら聖人に命令した。
「すんませーん」
古風な木製の門を割れんばかりに叩く聖人。しかし、中からは返事が無い。
「変ね。留守かしら」
「あいつ学校サボって何やってんだろうな」
「御兄様なら恢飢退治に行ってますよ」
二人は振り返ると、和服姿の小さな女の子が居た。そして、二人の目には、その子が小学生ぐらいの年頃に見えた。
「威吹の妹か?」
聖人は屈んで、女の子と同じ背丈で話しかけた。
「はい。妹の香久弥です」
「香久弥ちゃん。お兄ちゃんが何処で恢飢退治してるか教えてくれない?」
「ごめんなさい。知らない人と話してはいけないと御兄様から言い聞かされているのです」
香久弥は二人の間を通って門の扉を開けた。
その時だ。
屋敷の中に入る途中で「そうだ」と呟いて、二人の顔を見たのだ。
「私からは何も言えませんが、卍堕羅質屋に行けば御兄様の行方が分かるかもしれませんね」
笑顔で二人に語りかけて、門の扉を閉めた香久弥。聖人と神代は、お互いに何かを決意した表情で顔を見合わせた。
「決まりね。行くわよ」
「りょーかい」
二人は卍堕羅質屋に向けて歩を進めた。
「威吹君?」
卍堕羅滑子は、いつもの艶かしい表情で聞き返してきた。
「ここに来たんだろ?」
「そうね。朝早くに恢飢の賞金額まとめ表を見せてくれと言われたけど」
「他に何か言ってなかったか?」
「何も言ってないけど……あ、そうだ。威吹君はいつも最大賞金額の恢飢を退治しに行ってるわよ」
「今日の最大賞金額って、どんな恢飢ですか?」
神代が興味津々な様子で滑子に聞いた。
「ちょっと待っててね」
そう言った滑子は棚から一枚の紙を取り出した。
「この紙を見る限りだと、今日はランクEの分身大海月が最高賞金額みたいね」
滑子が二人に紙を渡す。
分身大海月。紙のタイトルにはそう書かれていた。賞金額二十五万円で空を飛ぶ海月だと。
「ええと……目撃情報は」
「山彦寺ね」
赤い手書きの文字で山彦寺付近で目撃したと紙には書かれていたのだ。
「Thank You」
聖人は滑子に軽いお礼を言った後、山彦寺方面に向かって走った。
「あの馬鹿……すみません。滑子さん」
神代は無礼な態度を取った聖人の変わりに謝り、聖人の後を追いかけた。




