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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
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047  廃校恢飢事変


獅子浪太は気がつくと、秘密基地まで走り続けていた。秘密基地というのは、去年から廃校になった中学校を内緒で使っているのだ。


「何処にいる」


何かを探すかの様に教室の扉を開けていく浪太。


「よお、浪太」


1年C組のクラスに浪太が探していた者がいた。

辺土名惣太郎(へんとなそうたろう)。眼鏡が似合うナイスガイだ。彼は浪太の中学時代の親友だった。クラスは違うが、惣太郎も足若丸高校に通っている。


「今日は来ないと思ってた」


惣太郎はガムで風船を作った。


「ちょっと暇してたから」


「へー」


惣太郎が座っている席の上には大量の御菓子が置かれていた。どれもこれも大昔に流行った駄菓子の復刻版である。


「そこのブドウジュースくれ」


「いいよ」


ブドウジュースを受け取った浪太は、キャップを開けてゴクゴクと音を立てながら飲んだ。


「プハッー!」


疲れた身体に栄養満点のブドウジュース。


「超絶に上手い」


思わず声が漏れた。それは、身体中の血液がブドウジュースになっていく気分に近い。浪太はそう感じていたのだ。


「漫画も読む?」


惣太郎は机の中から月刊誌の漫画を取り出した。電子書籍が当たり前になった世の中で、月刊誌を買う者は極希である。


「ワイは週刊誌派やからええわ」


「強がりしちゃって」


「ホンマや。ワイは月刊誌読まへん」


「分かったよ。じゃあ僕が読むから」


惣太郎はペラペラと月刊誌をめくった。本当に読めているのか分からないスピードで。


「なあ、惣太郎」


「なーーーーに?」


「この校舎って結構古いよな」


「そうだね。僕達が見つけていないと、もっと昔に潰れてただろうね」


建物というのは使う人間がいないとボロボロになってしまう。そういう事を惣太郎は言っているのだろう。


「ワイらが高校を卒業して、大学に進学した頃はこの校舎も取り壊されてるんやろうか?」


無意識の内に大学に進学すると言っていた。浪太は父親の跡を継ぐ気は毛頭無い様だ。


「それは無いと思うよ。この中学校って、第三次世界大戦の時からあったらしいし」


「半世紀近く前の学校なのか」


「うん」


惣太郎は飴玉を口の中に入れた。オレンジ味である。


「それにしては綺麗やな」


「確かに。誰かが掃除してるみたいだね」


この校舎には蜘蛛の巣一つ無く、埃すら見当たらない。浪太はてっきり惣太郎が掃除している物だと思っていたのだ。


「お前が掃除してるのかと思ってたわ」


「奇遇だね。僕も浪太が掃除してるのだと、てっきり」


すると、ミシミシと言う音が天井から聞こえた。


「おい」


二人は顔を見合わせた。


「二階からだね」


惣太郎は席から立ち上がって教室の扉を開けた。


「ど、ど、どこに行くんや!」


「決まってるでしょ。音の正体を確かめに行く」


「あかんあかんあかんあかんあかんあかん!」


浪太は惣太郎の腕を掴んで必死に制止した。


「どうしたの?」


「お前、今朝のニュース見たか。警察二人が恢飢に殺されたんやぞ」


「だから?」


「恢飢がおるかも知れん!」


「もし恢飢なら、僕達はとっくに殺されてるよ」


それは最もだと浪太が思っていたら、惣太郎はどんどん前に進んでいた。


「ほら行くよ」


浪太は連れられる様にして階段を登って行った。


「恐いねん」


衝撃のカミングアウトをした浪太。


「誰でも恐いよ。僕だって恐いし」


「じゃあ、何で前に進むねん」


「僕の場合は恐怖より好奇心の方が強いから」


惣太郎は背が小さい割に度胸がある。そんじょそこらの大人より頼もしいと思う浪太であった。


二階に着いた浪太と惣太郎は、一つづつ教室を見て回った。すると、二年C組の電気が光っていた。さっきまで二人が居たクラスの丁度真上である。


「あそこかな」


「やっぱりやめへんか?」


「何言ってるんだよ。此処まで来たのに」


惣太郎はそう言って、扉を少しだけ開けた。隙間から見てやろうと思ったのだろう。


「ワッ!」


惣太郎が尻餅をついた。


「どうしたんや」


「犬が二足歩行で鼻歌しながら掃除してる」

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