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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
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038  魔法界の歴史


恢飢(かいき)は至る場所に存在する。二足歩行の動物、四足歩行の昆虫、海底の深海魚ですら、恢飢になりえるのだ。


世界中に潜んでいる恢飢は、数え切れない程の膨大な数だ。祓魔師が世界中を飛び回っているのだが、爆発的に増える恢飢を完全に止める事が出来ない。


その答えは祓魔師の希少価値だ。


ただでさえ死亡率の高い祓魔師なのに、魔法界で起きた戦争により、数多くの有能な戦士達がこの世を去った。


戦争の影響は凄まじかったのだ。本来は専門外であったはずの警察が、恢飢現象の現場に駆り出されている。


そうした中、祓魔師の総本山である『王覇師団』は対策を打った。


魔法界を問わず世界中の少年・少女達に「祓魔師にならないか」とスカウトしているのだ。


玖雅聖人もその対象だ。王覇師団の師団長『玖雅明』は、聖人の父親でもある。


本来、息子をこんな危険な仕事に巻き込みたく無いと思っていた。しかし、人手不足の現状と祓魔師の血筋を見込んだのであった。


玖雅明は、せめてものお詫びとして同年代の神代月波を派遣し、同棲生活を許可させているのだ。





◇◇◇◇◇◇





「あ、そうだった」


神代はそう言って、リュックサックから熊ちゃんのキーホルダーを取り出した。


「なんだこれ?」


疑問を思いながらも、そのキーホルダーを手に取った聖人。


「昨日恢飢を倒したでしょ? あんたがグースカ寝てる間に、キーホルダーと融合しておいたわ」


この可愛らしい熊ちゃんキーホルダーに、昨日倒した恢飢の魂が入ってると思うと、少しゲンナリしてしまう聖人であった。


「ありがたいけどさ。今日はMASATO☆ヅラッカーを使いたい」


「何言ってるの、先生は私なのよ」


軽く、頭を小突かれる聖人。


「そうでした……」


「分かればよろしい。今日はキーホルダーを使って、恢飢を倒してごらんなさい」


「これか」


熊ちゃんのキーホルダーがどういう武器になるのだろうと、不思議に思った聖人。


「またレア武器になったらいいわね」


「ドロップ率とか無いのか?」


「ドロップ率って……相当なゲーム脳ね」


「依存症と言ってもいいぜ」


聖人は、全く自慢にならない事を自慢気に言った。


「正直に言うと、運次第ね」


「運か」


「最強クラスの恢飢と融合させて、最強の武器が出来るとは限らないわ。逆もしかりね」


「最弱でも最強になれるのか」


「そういう事よ。確率は相当低いけど」


すると、アッシュが眠たそうに大欠伸をした。


「ちょっといいかの」


アッシュが神代に話しかけた。


「何よ」


「吾輩、エリザベスちゃんと約束があるのじゃが……」


「エリザベスって誰?」


「公園で知り合ったガールフレンドである」


この場合の公園とは、神代月波とアッシュが最初に戦った場所だ。


「好きにしたら」


素っ気なく答える神代。


「では、そうするかの」


重い身体を動かして、リビングの窓から飛び出したアッシュであった。


「私達も行きましょうか」


「猫の分際で、デートとか羨ましい」


「あら、私達も似たような物じゃない」


「全然違う!」


「冗談だってば。もう……早く行くわよ」


「あ! 待てって」


聖人は嫌々言いながらも、神代について行くのだった。











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