037 世間話
卍堕羅質屋に寄っていた玖雅聖人と神代月波は、家に帰る途中だった。
「大変だったよな」
「そうね」
目の前で人が倒れたのだ。二人の意見も無理はないだろう。
「生徒会長の執事に会うなんて、思いもしなかったぜ」
「結構カッコいい人だったわね」
「雰囲気だけじゃないか?」
「あんたには見る目が無いから分かんないわよ」
神代はそう言った。聖人には見る目が無いというのだ。
「それよりさ」
「ん?」
「雀羅って何なんだ?」
「これまた唐突な話ね」
「ラストラッシュが言ってたんだよ。こいつにはまだ可能性があるって」
ポケットの中からアフロのヅラを取り出した聖人。
「あのね。恢飢の魂が入った武器には強さのレベルがあるの」
「そうなのか」
「そうなのよ」
そういう事だったのだ。
「破鏡より上のレベルが雀羅か」
「破鏡というのは文字通り、魂が繋がっていない状態を意味するわ」
「魂を繋ぐ必要があるのか?」
「そういう事よ。武器の持ち主と恢飢の魂が繋がって、始めて力を発揮する事が出来るの」
「魂を繋ぐにはどうすればいい」
「それは経験を積まないと駄目よ。少なくとも、素人同然のあんたには無理ね」
神代の言葉に肩を落とす聖人。
「そうか。手っ取り早く雀羅を覚えたかったんだけどな」
「心配しなくても、碩大区の恢飢には破鏡レベルで十分よ」
「ここらの恢飢ってザコのか?」
「規模で言うと日本全般はね。弱い恢飢ばかり」
「へー」
「日本の国王が、強力な恢飢が入ってこない様に結界を張ってるの」
国王は働き者だなと聖人は思った。
「国王って何してるのか分からないよな」
「そんな物よ。魔法界だって同じ」
「そういえば、魔法界って連合王国だっけか?」
「うん」
「王様って何人いるのだ?」
「7人よ」
「多いな」
日本は国王1人だけで、結界を張っているのであるが、魔法界では国王7人で、結界を張っているというのだ。
「という事は魔法界に恢飢っていないのか?」
「逆よ。日本以上に強い恢飢がたくさんいるわ」
「大勢の国王が結界張ってるのに?」
「そうよ。だから、王覇師団が創られたの」
「ああ……親父の組織か」
「あなたのお父さんの物では無いけどね」
話をしている間に、聖人のアパートへたどり着いた。二人は階段を上って、部屋の中に入る。
「遅いの」
「アッシュ、お前どこから入ってきた?」
「ベランダのドアが開いておったぞ。無用心じゃな」
「何をー!」
「まぁまぁ、落ち着いて2人共」
神代は、二人をなだめた。
「休憩したら行くわよ」
「行くって何処に?」
「決まってるでしょ。修業よ修業」
またかと思った聖人は溜め息をついた。
「明日でいいじゃん」
「ダ・メよ。今日も恢飢退治に勤しみましょう」




