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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
31/647

030  霧登家の執事


「恢飢の封印カードよ」


「ちょっと待っててね。先客さんがいるの」


「あれ、凄い量だな」


聖人が、テーブル上に置かれた無数のカードを指差した。神代月波も驚きを隠せない様子だ。


「全部あのおじさんが倒したのかしら?」


神代月波はヴォルフガングを見て、そう言った。

彼の事を「おじさん」だと明言したのは、手入れしていないロン毛が、ヴォルフガングを老けてみせたのだろう。


「聞こえているぞ小娘」


ヴォルフガングは、ガンを飛ばした。


「す、すみません」


「この際だ、正直に聞こう」


「はい」


「俺は何歳に見える?」


「45!」


隣の聖人が、空気を読めない回答をした。


「馬鹿者! 俺はまだ28だぞ」


「エーッ」


真っ先に驚きの声を上げたのは、滑子だった。滑子は口をだらしなく開けて、とっさに口を両手で隠した。


「滑子さん?」


ヴォルフガングは目を見開いた。


「ごめんなさい。私より年上だと思ってた」


「年下の男は嫌いなのか?」


「嫌いでは無いけど……私は年上の方が好きだから」


ヴォルフガングの何かが崩れ落ちた。


「嘘だ」


とたんに目眩がして、そのまま卒倒したヴォルフガング。


「おい、おっさん!」


「大丈夫?」


聖人と神代は心配そうに、頬を叩くものの、ヴォルフガングは一向に目を覚まさない。完全に気を失っている様だ。


「騒々しい、何事であるか」


店の前で待っていたアッシュが、脂肪を揺らしながら、店内に入ってきたのだ。


「店の前で待ってろって言っただろ」


「私はいいのよ。猫ちゃん大好き」


滑子はアッシュの頭を撫でた。アッシュは鼻を膨らませて、満足そうな顔をした。


「それよりこの人どうするのよ」


神代は、ヴォルフガングの額をデコピンしたり、鼻をつまんだりしていた。相手が気を失っているからといって、やっていい事では無い。


「そうね……家に送りましょう」


「滑子さん、この人のお家ご存知なのですか?」


「ええ、知ってる。ヴォルフガングさんは霧登家に住んでるわ」


「霧登って、霧登風華の?」


聖人が身を乗り出して質問した。


「そうよ。この人こう見えて、執事やってるの。想像つかないでしょ」


全くその通りであると、店内にいる全員が思った。執事をやっている割には、身形が汚すぎるのだ。


「とりあえず、運びましょうか」


「でも、どうやって運ぶんすか?」


「魔法があるじゃない」


神代はウインクした。「つくづく魔法ってのは、便利な物だ」と、聖人は思った。



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