表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
30/647

029  卍堕羅質屋


質屋は稼げないという考え方は、創造神が降臨して以来、大きく変わった。特に、恢飢物取扱免許を取得している質屋は、王覇師団と繋がりを持ち、国家専属のエクソシストと、ほぼ同格の立場にあるのだ。


ここ碩大区には、第一級免許を持ちながら、エクソシストの仕事も兼任している質屋が一つだけある。


卍堕羅質屋(まんだらしちや)。足若丸高校から500m地点に構えているお店だ。

その店の近くで、ブツブツと一人言を呟いている青年がいた。彼は一時間近くもの間、店に入らずに、考え事をしている。


「俺と付き合ってくれ!」


誰も居ない場所で、愛の告白をしたヴォルフガング。


「何か違うな」


ヴォルフガングは、違和感を覚えた。


「二人で卍堕羅軍団を作ろう」


これも違う。


「合体しよう」


これは願望だ。


「大艦巨砲主義」


もはや訳が解らない。ヴォルフガングは頭の中が混乱している様子だ。


「ええい、なるようにならあ!」


ヴォルフガングは意を決して、卍堕羅質屋の扉を開いた。


「うわっ」


丁度、卍堕羅質屋のオーナーも扉を開けようとしていたのだ。好きな人が目の前に居て、思わず心臓が高まるヴォルフガング。


「いらっしゃい」


優しい口調と笑顔で出迎えてくれた彼女。


卍堕羅滑子(まんだらなめこ)というのが、彼女の名前だ。

艶かしい唇に、化粧いらずの綺麗な肌が特徴。

男ならば彼女を見て、こう言わずにいれない。


「美しい」と。


そして、滑子は未亡人である。夫に先立たれて、女手一つでこの質屋を守り続けてきたのだ。


「滑子さん……」


「今日はどうしたの?」


まるで海の様に、全てを包み込む笑顔。ヴォルフガングは、この笑顔を一目見た時から、滑子の事を好きでいるのだ。


「あの」


そこから先は、言葉が詰まって言えなかった。フラれたらどうしよう。彼氏がいると言われたらどうしよう。興味が無いと言われたらどうしよう。


そういうネガティブな発想が、ヴォルフガングの動きを止めてしまった。


「ん?」


可愛らしく首を傾げる滑子。自然と男が惚れる仕草を挟むのが、滑子の武器であった。


「たまたま、山の中で恢飢を倒したんだ。で、金に変えてもらおうと思ってだな」


風呂敷いっぱいに入ったカードをカウンターの上に置いたヴォルフガング。ざっと四、五十枚はあるだろう。


「まぁ、凄い!」


「これぐらいは朝飯前さ」


褒められて、鼻がむず痒くなったヴォルフガング。


「さっそく勘定しましょう」


「おう。ちょっと多めに頼むぞ」


「ダメですよー」


「ハハッ、そうだよな」


こんな事を言いながら、「お金なんぞどうでもいいと」と内心思っているヴォルフガング。

彼はとにかく、滑子と喋る口実が欲しいだけであった。


「お邪魔しまーす」


「あら、いらっしゃい」


すると、足若丸高校の制服を着た男女が店に入ってきた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ