019 魔法界のルール
「トリプルディー・ラストラッシュ……」
「私を知っているのですか?」
「当たり前よ。賞金額ランキング100位圏内は目に通しているわ」
神代は躍動した口調で喋っている。神代の目には、ラストラッシュがお金の札束に見えているのだろうか。
「残念ですがお嬢さん」
「ん?」
「私が興味有るのは、あなたではありません」
そう言うと、ラストラッシュは神代を掴んで、地面に放り投げた。
「痛っ」
「常闇の牢獄」
ラストラッシュが呪文を唱えた。上空から唸りを上げた檻が降ってきて、神代を閉じ込めてしまった。
「そこで大人しくしていなさい」
「クッ……」
神代は屈辱的な目で、ラストラッシュを睨みつけている。サディストな彼女にとって、檻の中に閉じ込められる事は許せないのだろう。
「さて」
「なんだ?」
「改めて自己紹介をしましょうか。私の名前はDDD・ラストラッシュ」
「さっき聞いたぜ」
「二つ名は優長な暴力です」
「二つ名?」
何故、自分で二つ名を言ったのか疑問に思った。
「強者同士で名乗り合う時は、お互いに自分の二つ名を言わなければなりません」
「そんなルール聞いた事ないぞ」
「でしょうねぇ……何せ魔法界のルールですから」
俺を常識しらずの男だと言いたいのか、お説教っぽく喋っている。
「それに俺は二つ名なんて持ち合わせていない」
「これはこれは、失礼致しました。てっきり実力者の方だと思いまして」
「残念だったな。今朝エクソシストになったばかりだよ」
「そうですか」
すると、ラストラッシュが俺の右腕を掴んで、力強く持ち上げた。
「アフロの被り物は私の美的感覚に合いませんが……」
さらに強く、俺の右腕を握った。
「白い炎は欲しいですね」
俺はラストラッシュに腹を蹴り上げられ、そのまま建築物にぶつかった。
「ぐはっ」
激痛が全身を走り、痛みで立ち上がる事すら出来ない。
「ハハハハハ、どうですか!」
さらに、飛び蹴りが腹に直撃し、その衝撃で武器が手元から離れてしまう。
「まずは私のペットと同じ痛みを味わせました」
俺は左手で腹を抱えながら、右手を前に出し、匍匐前進で移動した。
「破鏡」
戦闘状態になったヅラを右手で掴み、最後の力を振り絞って、投げつける。
「いっけぇえええ!」
「届きません」
ラストラッシュに当たるであろう距離の一歩手前で叩き落とされてしまった。
「畜生……」
俺は悔しくて、地面を殴りつけた。
「破鏡程度で私を倒す事は不可能」
ラストラッシュは右手に武器を構えている。
「破鏡を越えた力、雀羅をお見せ致しましょう」
「待てい」




