018 狙われた白い炎
碩大区のみならず、最近の日本には建設現場が多数見受けられる。日本では魔法技術が発展した一方、一部の魔力を持たない者達が企業からリストラされてしまい、事の重大さに気付いた政府が、彼らに対する救済措置として意図的に建設現場を増やしているからだ。
そして、俺達は今、碩大区のとある建設現場にいる。武器の性能を試そうとしている最中、恢飢現象に巻き込まれたのだ。
「グオオオオオオオオ」
この恢飢は全長3m近くはあろう図体だ。ショベルカーや、トラックなどを軽々と持ち上げては、それらを破壊している。
現場の作業員達は悲鳴を上げながら、散り散りに逃げていた。彼らは魔法を使えない故に、恢飢と遭遇しても打つ手が無い。
ふと、逃げている作業員の一人が話しかけてきた。
「君達も早く避難しなさい!」
作業員は不安と恐怖が入り交じった顔をしている。俺は「心配するな」と言って、作業員の肩を叩いた。
「俺達はエクソシストだ」
「エクソ……シスト?」
「そうだ。ここは俺達に任せな」
作業員の表情が明るく変わり、俺と作業員は右手を握り締めて握手を交わした。
「お前達を信じているぞ」
「ああ!」
作業員は駆け出して、ひたすら遠くへと逃げていった。
「友情ごっこはおしまいかしら?」
相変わらず場の雰囲気をブチ壊す女だ。
「今のセリフだと、お前悪人っぽいぞ」
「冗談言ってる場合? 早くあいつを止めないと」
恢飢は辺り一面の物という物を破壊し続けている。
「神代、お前は下がってろ。こいつは俺が倒す」
「いいけど、ちゃんと封印しなさいよ」
「了解だ」
俺は恢飢の前に立った。下手をすると、殺されかねないが、何故だか恐怖は感じない。
「やいやいやい。人間様の土地で暴れやがって!」
「グオオオオオオオオ」
恢飢が雄叫びを上げた。それと同時に、俺は恢飢の腹に目掛けてアフロを投げつけた。
「一撃必殺ゥゥウウ! MASATOヅラッカー!」
ピッチャーの投球フォームから放たれたアフロは、白い炎を帯びながら回転して、恢飢の腹へとダイレクトに当たった。
「グヘァ」
アフロのヅラに吹き飛ばされた恢飢。奴は建築途中の建物に叩きつけられて、完全にノックアウト状態となった。
「よっしゃ」
俺は恢飢をカードの中に封印した。自分でも恐ろしい程の早業だ。
「やるじゃない」
神代は腕を組んで、満足そうに頷いている。
「ふっ、俺は強くなりすぎた」
「過信は自己を滅ぼしますよ」
「!?」
突如、俺達の目の前に一人の男が現れた。奴は顔を黒頭巾で覆っているが、NINJAというよりも、どちらかといえばアサシンの格好をしている。
「誰だお前」
俺がそう言うと、奴は頭巾の結び目をほどき、まもなくして素顔を見せた。
「盗賊ギルドのDDD・ラストラッシュです。以後、お見知りおきを」
ラストラッシュは軽くお辞儀をした。
「盗賊……ギルド?」
疑問に思った。ギルドという事は、盗みを生業とした盗賊が集まった組織なはず、そんな組織が成り立っているのは不思議で仕方ない。




