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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
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017  禅問答


リリーヤは二人を連れて、何処か知らない場所に飛び去って行った。


「行ったか」


吾輩の耳元で、ラファエルが呟いた。


「らしいであるな」


「若者達の背中を見ていると、いつだって活力が生まれる」


老人の濁った目が、輝きを取り戻した様に見えた。


「さて、本題に入るが」


ラファエルは両手を放して、吾輩をアスファルトの上にゆっくりと置いた。


そして、吾輩は首を上に向けた。身長差からか、遥か上空にラファエルの顔が見える。


「いつからだ?」


と、ラファエルの髭と口が同時に動く。


「いつからとは?」


「とぼけるなよ。来日したのはいつからだと聞いておるのだ」


「吾輩は……」


「答えられぬというのか?」


言葉を選んでいる間は、ひたすら黙った。ラファエルに見当違いな答えを言おうものならば、百倍返しにされるのだ。


「日本に来たのは昨日であるよ」


「来日した理由は?」


「吾輩の個人的な理由を聞いて、何の意味があるというのだ」


「君だから意味があるのだよ」


呑まれそうだ。いくら話をはぐらかそうと、ラファエルの言葉から逃れられない。まるで、大蛇の尾が常に絡みついている感覚だ。


「返答次第では、本国にいる儂の友人が黙ってはおらんぞ」


数人の怒りに燃えた顔が脳内に浮かび上がった。確かに返答次第では、死が待っているだろう。


「旅だ」


と、正直に答えた。


「旅?」


ラファエルが眉間にシワを寄せた。


「旅の合間に寄ったのだ」


「それで、たまたま奴の息子と使い魔契約したというのか」


「そういう事になるの」


「ここまで偶然が重なると、嘘にしか聞こえないぞ」


「全て事実であるよ」


吾輩は本当の事を言っている。なぜなら、ラファエルには嘘をつけないからだ。


「吾輩から言えば」


「何かね」


「貴公ともあろう者が、こんな高校で教鞭を執っている理由を知りたいですな」


「恢飢の監視だよ」


ラファエルは屋上からの景色を眺めながら、そう言った。


「最近は碩大区に限らず、恢飢の攻撃性が増している様に思える」


「気のせいでは?」


杞人之憂(きじんのうれい)ならば、それでよし。ともかく、用心に越した事はないさ」


ラファエルは手を抜かない。いつだって、全体を見ながら行動しているのだ。


「アッシュ君、話は変わるが」


「はい?」


「神代月波と玖雅聖人に関係性がある様に、儂と君にも関係性があると思うのだが」


「すまんが、何を言いたいかさっぱり解らんでの」


難しい言葉ばかり使うのは、ラファエルの悪い癖だと個人的に思っている。


「つまりだな。もう少し仲良くなってみないか」


「吾輩と貴公が?」


「そうだ」


「これはこれは、どういう風の吹き回しで」


吾輩は笑った。魔法界でこの会話を聞かれると、さぞ大ニュースになるだろうと思ったからだ。





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