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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
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016  新たなる武器


屋上の扉を蹴破ると、目の前に広がっていたのは、アスファルトの床に敷かれた巨大な魔方陣だった。


「すげぇ……」


幻想的な光景に思わず声を漏らす俺。


「ちょっと、いい加減に放しなさいよ」


「ああ、すまん」


強く握り絞めていたせいか、強引に手を振り払われた。


「何を急いでたの?」


神代が不思議そうに首を傾げて訊ねてきた。


「お前との秘密がバレたんだよ」


「秘密って、私との関係性?」


「そうだ」


「別にいいじゃない。ただのビジネスパートナーだし」


理由は不明だが、ビジネスパートナーという言葉に冷ややかな感情を覚えた俺。


「ビジネスパートナーって、どういう意味だよ」


「私があなたにエクソシストの技術を教え、その過程で倒した恢飢の懸賞金を私が頂戴するって事」


「俺には一文もくれないのか?」


「そうよ、授業料だと思えばいいじゃん」


授業料という事は、タダで教える気は毛頭無いようだ。親父は何故、こんなケチンボを家庭教師によこしたのだろうか。


「ドケチめ」


「あら、そういうあんたも人の事は言えないんじゃない」


「何?」


「親父さんからお金は充分貰っているはずよ。それなのに、風呂無しアパートに住んでいる理由は?」


時に神代は確信を突いたかの様な言葉を使ってくる。


「金を貯めてるんだ」


「何のためによ」


「自力で魔法界に行く費用だ」


神代が突然、プッと吹き出した。


「バカね、親父さんに頼めばいいじゃない。あんたの親父さん給料いくらだと思う?」


「親父の給料には興味も無いし、頼りたくもない。自分の力で魔法界に行って、一から魔法の修行をしたいんだ」


「ふぅーん。聖人って以外と真面目なのね」


「そういうお前は、何のために金を集めているんだ?」


「私は……」


神代は口をつぐんだまま何も言わなかった。あれだけお喋りな神代が、一言も発しないという事はそれなりの事情があるのだろう。俺は気をきかせたつもりで、話題を変えた。


「ところで、俺を屋上に連れて来た理由は?」


「そ、そうだったわね」


俺の問い掛けに、ようやく口を開いてくれた。


「あんたの武器に命を吹き込む準備が出来たの」


「あれは、まだ武器ではないと思うが」


ポケットに締まっておいたアフロのヅラを取り出した。どうやらこのヅラは携帯式らしく、スイッチを押すと、縮んだり伸びたりする仕組みになっている。


「アフロとカードを魔方陣の中央に置いて」


俺は言われた通りにした後、魔方陣から一歩下がった所で待機した。


「簡易呪文。――魂融合(アッテリーデ)


魔方陣全体が白い筒に包まれて、魔方陣が目に止まらぬ速さで回転した。


「気持ち悪い」


目が回りそうだった。だから、目を瞑った。俺の耳には自然界の音だけが、優しく囁いている。


「ふぅ……完成よ」


その一言を頼りに目を開けると、魔方陣は消え去っていたが、代わりにアフロのヅラがポツンと置かれている。


「失敗したのか? 何も変わってないぞ」


「大丈夫よ。持ち上げて」


俺はアフロのヅラを拾った。見た目は何一つ変わっておらず、モジャモジャのままである。


「破鏡」


「はい?」


破鏡(はきょう)よ。そう言ってみて」


「破、破鏡……」


すると、アフロのヅラに持ち手が出現したので、その持ち手を握った。


「うわっ!」


その瞬間、アフロに白色の炎が燃え盛った。しかし、この炎は全然熱くない。


「あんた、それ超レアじゃない」


「超レア?」


「この炎はエルレウスっていう名前で、敵と認識した者のみ、燃やし尽くすと言われてるわ」


「そんなに凄いのか?」


「凄いわよ。その状態だと、まだ価値は無いけど、進化すれば相当な高値で売れるかも」


神代は俺に近づいてきて、燃え盛っているアフロに両手を掲げた。


「あったかーい」


神代には暖かく感じる様だ。


「ねぇ、聖人?」


「どうした神代」


「武器の性能を試してみない?」


神代はポケットから恢飢探査機を取り出した。画面を見ると、ドクロマークが点滅している。


「すぐ近くにいるわ」


「そうだな。悪い奴は退治しないと」


「決まりね、リリーヤ」


カードから大きな鳥型の使い魔が召喚され、俺達は使い魔の背中に乗って、大空に羽ばたいた。


「綺麗な景色だ」


ふと、後ろを振り返って学校を見ると、何故かラファエル先生とアッシュが屋上に居た。


「先生、今日は早退します! アッシュの面倒見てて下さい」


俺はそう叫んだ。



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