099 研究能力
威吹は研究室の扉を開けた。
「わお。これは凄い……」
研究室は機械類がさることながら、インテリアも充実していた。髑髏の顔にピエロの帽子が被されていたり、大量の色とりどりの風船や天井を突き抜ける勢いの巨大なぬいぐるみが所狭しと、乱立されていた。とても研究室には見えないが、これらのインテリアがさらに不気味な様子を醸し出していた。
「あれ、イフキーどうしたの?」
ルリが気配を察知して後ろを振り返った。
「その呼び方はやめてよって言ったよね」
「イブキよりイフキーの方が呼びやすいじゃん……呼びやすいじゃん!」
何故か、興奮してその場を跳び回り始めたルリバカス。
「ごめんごめん。悪かったよ」
威吹の謝礼に満面の笑みを見せて、ルリは跳ぶのを止めた。
「それでよーし」
跳んだ影響で帽子が落ちてしまい、帽子を拾って再び被ったルリ。
「誰の家で居候してると思ってるのかな」
眉毛を少し痙攣させる威吹。
「誰の恢飢を使っているのかな」
ルリはそう言い返した。
「そのことだけどさ」
「なーーーーーーに?」
「恢飢三兄弟やられちゃったよ」
威吹の一言に、ルリは一瞬だけ作業の手を止めた。
「知ってるよ。可哀想だった」
少しテンションを抑えて喋り始めたルリ。
「そうだね」
「うん」
「…………」
話が続かずに、焦った威吹は先程まで考えていた提案を提示した。
「新しい合成恢飢は開発できたのかい?」
「うん。何体かね」
ルリはキーボードを左手で打ちながら、右手でビーカーを指差した。ビーカーは人間一人が余裕で入れる大きさで、その中には当然のように合成恢飢が入っていた。
「へー」
全部で6個設置してあるビーカーを見回す威吹。
「この短期間でこの量産力か」
威吹はルリの研究能力に素直に関心していた。
「これぐらいは出来て当たり前だヨーン」
「本当に有能だね。その年で所長を任された意味が分かったよ」
「へへーん。もっと褒めてもっと褒めて!」
言われたままに、威吹はルリの頭を撫でた。
「よかったらさ、この合成恢飢……全部くれない?」
ルリは暫く考えた後、「いいよ」と言って了承した。




