付録:77話までの登場人物 その1
こういうものの投下をあまり好まれない方もおいでかとは思いますが、登場人物がだれがだれかわからなくなるという声はあちこちから聞かれますので、作者の備忘のためにも公開しておきたいと思います。
77話まで読まないうちは参照を控えたほうがいいです。警告しましたので!
ネタバレを含まない簡略版は64部に掲載。
●主人公
■トール(熊倉トオル/ソール・ビョルンハルダ) 30歳。身長180cm前後
二つ名『楽師』
9世紀の北ヨーロッパにタイムトリップした21世紀の日本人。ペイガンメタル~バイキングメタルを演奏するアマチュアバンド『ゴート・カウンター』のギタリストだった。
ボーカルもそれなりにこなすが、自作曲をきちんと仕上げられるほど音楽理論に精通しているわけではなく、怠惰と自己欺瞞のツケが回ってくる人生コースに突入。
キーボード担当の女性メンバーに頼る部分が大きく、彼女が帰省中震災に巻き込まれて連絡が取れなくなったことでバンドは空中分解。不景気でバイト先の会社もなくなり、当ても無く望みの薄い求職を繰り返していた。
彼の本当の才能は詩作にあるのだが自分ではきちんと自覚していない模様。また、幼少時から古今のさまざまな創作物に親しんでおり、その多くをぼんやりとではあるが記憶している。
25話でアラビア渡りのフレッテッド・ウードを入手、『コメット(彗星)』と命名。左手にウード、右手に剣を携えて冒険を繰り広げる。
長らく自らを「ゴミクズ」と卑下していたが、ヴァイキングたちとの冒険、そしてイレーネとの恋を経て自己評価を回復していく。ウェアハムで虐殺を生き延びた修道女とデーン人たちを目の当たりにして、アルノルは彼のことを『英雄』と認めた。
イラストはいもさんから。ありがとうございました!
●ヒロインたち
■イレーネ・アモリア 20歳 身長160cm前後
東ローマ帝国の旧朝・アモリア家の皇帝、テオフィロスの孫娘。テオフィロスは黒海からカスピ海にかけて版図を築く遊牧国家『ハザール可汗国』との関係を強化していた。歴史に名の残っていない皇女の一人がハザールの可汗(王)に嫁いでイレーネを生んだ。
イレーネの叔父に当たる皇帝、ミカエル3世がバシレイオスにより暗殺され、世はマケドニア朝の時代に。アモリア朝の旧臣バルダス将軍の族子バルディネスにより、バシレイオスに対抗する神輿として担ぎ出されそうになったが、養育係フォカスの手で脱出。キエフ・ルーシの支配地を横断、デンマークの交易都市ヘーゼビューへやってきた。(第三章『ミクラガルドの騎士』)
つやのある栗色の髪に緑の瞳。マジャール騎兵風の男装をしばしば身につける。フォカスの教育によりラテン語とギリシャ語を操り、パンクラチオンをベースとした格闘術、馬術、軽業など高度な運動能力を持つ。
母が持参していた書物の影響でロマンチックな自由恋愛に憧れていた。北西ヨーロッパの荒々しい社会に辟易する中で、トールに出会い互いに惹かれあう。
その思いは57話で遂げられ、二人は結ばれた。
※イレーネがトールに贈った短剣は、現在でいうキンドジャールの遠い祖形に当たるもの。
■フリーダ・シグヴァルズドッティル 14歳 身長130cm前後 → ?
西ノルウェーの小さなフィヨルドに作られた村、『アンスヘイム』の長老インゴルフの孫娘で族長ホルガーの従姪。両親をなくし祖父に育てられた。感受性豊かで頭がよく他人を思いやれる性格。三十頭を超える数の羊を連れて山を駆け回る元気な娘。
大叔母から巫女としての初級教育を受けており、古いルーン文字の大フサルク24文字を読み書きできるほか、トールの説明でかろうじてタイムトリップの概念を理解するに至っている。
トールに一冬の間、高度な概念まで網羅したノルド語の手ほどきをしたのも彼女。
金髪碧眼と明るい額、典型的な北欧美人の容姿をもち、ヨルグをはじめ村の若い男達の関心を集めているが、兄と慕うホルガーが結婚するまでは自分の番ではない、と考える。
料理の腕はごく普通の北方人の主婦並。ハラルド王の宴席で出た料理を模倣しようと試みて手ひどい失敗をしたりする。
●アンスヘイムの村人と鎖蛇号の男たち
■ホルガー・シグルザルソン 28歳 身長187cm
二つ名『膝砕き』
アンスヘイムの若き族長で、カーヴ船「鎖蛇号」の船長。航海中は舵を担当。若年ながら、年長者まで含む荒くれたちを統率し目的のために奮闘させるカリスマと貫禄を持つ。
武勇にも優れ、大人の拳ほどもの身幅のある巨剣『スルズモルズ(巨人殺し)』をサーベルのように軽々と振り回す膂力を誇る。その破壊力は戦士五人で支える盾壁を切り崩し、武装したサクソン兵士の首を一撃で刎ねる程。
歳の離れた従姪フリーダを溺愛しており、彼女を誇るに足る持参金つきで嫁に出すまでは自分の婚姻は後回しと考えている。また、母親がデンマークの宮廷貴族の娘で巫女の素養を持つ、絶大な感化力を有する女性であるためか、かなり重度のマザコン。
名前は古ノルド語表記だと本当は『オッドゲイル』かもしれない。
■インゴルフ(父称未詳) 65歳 身長他未詳
アンスヘイムの長老。ホルガーの伯父でフリーダの祖父、かつては族長を務めた。息子夫婦を失ってから孫娘を男手一つで育ててきたが、近年は体に衰えを感じるようになった。ホルガーが拾ってきたトールを家人としての扱いで預かり、内心頼りにしている。
木彫の職人としての腕前は名匠の域に達しており、「鎖蛇号」や「大山羊号」の建造にも設計を含め腕を振るった。フィヨルドの入り口に作った水門の仕掛けも彼の仕上げになるもの。
■アルノル(父称未詳) 28歳 身長166cm
二つ名『鷹の目』
金髪というよりは黄色の、潮風にさらされてつやのない髪をした小柄な痩身の男。眉の奥にくぼんだ感じの灰色の瞳。編んだ顎ひげと左右にとびだした口ひげが、人懐っこそうな印象を与える。
13歳頃から村の年長者たちに連れられてヴァイキング行に参加し、北ヨーロッパ一円を旅してまわった。本人がアラビア語に堪能であることや、彼について周囲で語られる内容からは、アラビア人の活動地域や東ローマのコンスタンチノープルへも訪れていることが窺われる。
主にノルウェー、デンマーク一帯の細かな水路に知悉し、洋上の気象についても広範な知識がある。海域によっては魔術と思わせるほどの天候予測の冴えを見せる。
アンスヘイム一の知恵者で、おそらくはこの時代でも最高クラスのケントマント(水先案内人/『海を知る者』)である。
商才というか商魂たくましく、計数にも明るい。サラセン(イスラム)商人から譲り受けたという精巧な天秤を持ち歩き、砂粒ほどの銀まで正確に計量するが、時に取引相手を容赦なく欺くしたたかさも見せる。ゼロの概念なども早くに理解し、トールとはいいコンビに。
トールが一言で評した言葉を借りるなら『汚いビッケ』。
その場の状況に対して無意識にひげを触る癖がある。
自信がある、おもしろがっているといった場合には顎ひげ、不安や不快、懸念などに対しては口ひげを弄ぶ。トールはそれに気が付いているが、周囲の男たちはそれらしいそぶりを見せていない。
■ヨルグ・トーケッソン 18歳 身長170cm
二つ名『血斧』
鎖蛇号の最年少の乗組員。血気盛んな若者で、柄の長い戦闘用の両手斧を振り回すエリート戦士。
(※『デーンアックス』は後世の用語と思われるため文中には出していません)
初めて参加した875年のヴァイキング行での活躍により、族長ホルガーから剣を一振り与えられ、大いに意気を上げる。
その一方では斧にただならぬこだわりを持ち、トールがインゴルフから借り受けた『青い斧』にあこがれと執着を示していた。
フリースラントの山賊から奪った斧については、どこかで聞いたような怪しげな講釈を垂れる。
年齢の近いフリーダに恋慕し、彼女と一つ屋根の下に住むようになったトールを目の敵にするが、様々な冒険を共にするうちにトールと打ち解け彼を認めていく。
当初粗暴さが目立ったが、フリースラントを旅する間には知略をめぐらすことに目覚め、芸風(?)も広がっていった。7歳年下の少女シグリが自分に寄せる恋心を知らされ、狼狽する若者らしい姿も見せる。
直情径行、短気で手が早い。激怒した時の口癖は「殺すぞ貴様ー!」。
西遊記でいうと孫悟空。
■ロルフ・スヴェンソン 46歳 身長172cm(普段はもっと低く見える)
二つ名『靴屋』 キリスト教に改宗後の洗礼名はトマス。フルネームでトマス・ロルフ・スヴェンソンとなる。
靴をはじめ各種の皮革製品の細工を得意とする職人で、皮だけでなく工芸品全般に目が利く。仕事中はいつも背中を丸めて縫い皮の上にかがみこんでいるため、実際よりも背が低く見られている。やや浅黒い肌色に茶色の髪。鼻の頭が少し充血して赤い。
若いころから長期間ヴァイキング行に参加しており、アルノルに次いで北欧の海に精通、ケントマントを務められる。フリースラント~フランク王国にかけての言語を巧みに操り、フリースラントでの三人道中には通訳としても活躍した。
先年結婚したばかりの若い妻との間に、876年の春に長男が誕生している。
妻の母の実家がある村、スネーフェルヴィクが焼打ちにあい、ただ一人生き残った少女シグリを養女として引き取る。そうした経験から掠奪と殺人に対して疑問を抱き、ブレーメンでキリスト教に改宗した。
だが、それによって仲間の間で疎外感を感じるようになり、フリースラント人の船長、ヤンがデーン人の遺体を打擲するさまを見て激発(キリスト教徒に対して持っていた半ば理想化した観念を裏切られたと感じたため)、衝動的に殺してしまう。
愛用の剣は父の代から受け継いだ古めかしくやや研ぎ減りが目立つものだが、もともとの出来が良いため、使い慣れたロルフの腕とも相まってこの上なく頼もしい武器となる。
腰に手挟んだもう一つの武器であるサクス(大型の片刃ナイフ)はカミソリのような切れ味を誇り、接近戦ではしばしばこちらに持ち替えて戦うことも。
西遊記でいうと沙悟浄。
■ヴァジ・ヘジンソン 26歳 身長184cm
二つ名『無手』(作中では未だ呼ばれず)
伝説に名の残る鍛冶師、ヴェールンド(ウェイランド)の父と同じ名を持つ、村鍛冶の息子である。黒髪に威嚇的な太い眉、骨太な体型の男。
様々な武器の扱いと鉄製品の目利きに優れるが、本人の最も得意な戦闘スタイルは素手の格闘。死角から組み付いて目をえぐるといった残虐ファイトもこなし、短距離ダッシュからの体当たりは危険な威力を秘める。ヴァジ山靠。
トール同様、ハザール騎兵のサーベルを一振り手に入れているが、将来の鍛冶修行のために見本として持っておく意識なのか、あまり実戦で使用している様子はない。エクセター近郊での遭遇戦においては、手製の撒き菱を使ってブリトン人を翻弄していた。
シニカルな物言いが目立つがその実、懐の深いいい男である。
鍛冶場に立つ割に目を傷めている様子はなく、遠目が利き、鳥に詳しい。トールは彼とスノッリ、二人のことを密かに「アンスヘイム野鳥の会」と呼んでいる。
■スノッリ(父称未詳) 27歳 身長163cm
二つ名未詳
村で一番の腕を誇る狩人。小柄なのであまり大きな弓は引けないが、取り回しのよい小型の弓で一度に二本射たと錯覚させるほどの連射を行う。その腕前はへーゼビューからヴェストホルに至る旅でいかんなく発揮された。
結婚していたがフリーダの両親を奪ったのと同じ流行り病で、妻を亡くしている。以来、畑を妹夫婦に任せて村はずれの猟師小屋に半ば隠遁、いまだに後妻を入れない。
動物の扱いにたけ、犬や羊などと心を通わせることが得意。遠目の利くヴァイキングたちの中にあってもその視力は傑出しており、また聴力も遠方から接近する船の索具のきしむ音、オールの音などを聞きわける。876年のヴァイキング行では幾度となく、忍び寄る脅威や闇の中の異変をいち早く察知して仲間を危険から守った。
どことなく少年の心を未だ残したような性格。鳥に詳しく、ヴァジとは鳥の話で長時間盛り上がれる。
■オーラブ(父称未詳) 25歳 身長201cm
二つ名『長い腕』
槍の使い手。投槍も手槍も使いこなす、村で最も身長の高い男。ヴァイキングの間では比較的よくあることだが、左右どちらの腕でも武器を同じ様に扱えるように訓練していて、戦闘中に剣を持ち替えたり一度に二本の投槍を投擲したりできる。
セイウチ狩りの際には巨大なオスに逆襲されたトールを、投槍で救っている。
二つ名の通り腕が長いのが非常に目立ち、立った姿勢で膝まで届く。トールは三国志の劉備を連想していた。弓も得意で、普通の男が使うものの二倍近い射程の大弓を難なく使いこなす。タイプは違うがスノッリと双璧をなす射手である。
やや無口でヌボーっとした印象を与え、長い黒髪と編み込んだり刈りそろえたりしていないまっすぐな口ひげ、顎ひげがそれを助長する。老けて見えるので明らかに年長のはずのクラウスから「おっさん」呼ばわりされていた。
カテガット海峡での海賊との戦いで肩を負傷、経過観察中。傷を案じて酒を禁じられたときは、「宴席で浴びるほど飲んで死にたい」と口走ったほどの酒好き。
■ハーコン・ゴルムソン 32歳 身長177cm
二つ名未詳
長老ゴルム翁の唯一生存中の息子。盾壁の右端をしばしば務めるほどの傑出した戦士なのだが、自分の武勇への自負とは裏腹に短気、短慮が目立ち、それがもとで周囲の状況を台無しにすることがある。一種のトラブルメーカー。
従弟のグンナルとは外見がそっくり。従兄、従弟と互いに呼び交わす姿がしばしばみられる。
ハムワーの夜襲の際にエイリークの投げ斧を顔面に受け、左目を失ったが、その後も以前と変わらず盾壁の右端で重責を担い続ける。
■グンナル(父称未詳) 30歳 身長178cm
二つ名未詳
長老ゴルム翁の甥、ハーコンの従弟。ハーコンよりは穏やかな性格で、彼のフォローに回ることが多い。何かにつけて従兄を立てる姿には一種いじらしいものがある。
■シグルズ(父称未詳) 享年34歳 身長198cm
二つ名『怪力』
ホルガーの遠縁の男。大兵肥満といった風貌の巨漢で、村でも一番の力持ち。普通なら両手斧につけるほどの斧頭を取り付けた片手斧を振るい、大ぶりな盾で防御を固める防御型の戦士。MMORPGならタンク役。作中でも妻帯者であることが明らかになっている数少ない一人。
であったのだが、アッシュダウン号との戦いで、ホルガーを矢の雨から守ろうと奮戦し、喉に矢を受けて死んでしまった。
同じ斧使いということでヨルグの崇敬を受けていた。彼の死は残されたメンバーの上に大きな影を落とすことになり、ホルガーはアルフレッド王に彼のために二人分の報酬上積みを要求した。
■そのほかの名前の出ない男たち 20代多し
名前のあるメンバー以外にも、鎖蛇号にはこれまで名前が明らかになっていない男たちが20人前後乗り組んでいる。彼らなくしては鎖蛇号はオールで進んでいくことができないし、事あるときに盾壁を形成する主戦力はある意味彼らなのだ。
北杜夫の『船乗りクプクプ』に登場するジッパヒトカラゲの7人の男たちのようなものである。しかしこちらは20人、約3倍である。多い。
彼らの名前が出ない理由はただ単に『とりたてて傑出したところが無い』というだけのことである。映像化されてもエキストラで済まされる。だが案外、彼らの中から次にスポットが当たるキャラクターが生まれるかもしれないのである。そのまま死亡フラグを立てて死んでしまうかもしれないが。
黙々と己の役割を果たし、仲間に何かイベントがあった時はともに喜びあるいは嘆く彼らに、ひそやかな拍手をお送りください。
その2に続く。




